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生きてこの家から出られるのだろうかと来てしまったことを後悔するしかなかった。でも誠心誠意対応すれば誤解は解けるはずと気を取り直して、無理に笑顔を作ってみせた。
「今日はお招きいただきありがとうございます」
「よく笑えるな」
これが父親の第一声。
「自殺しようとしてうちの映山紅を道連れにしようとしたり、恋人になってくれるなら自殺しないと映山紅に恋人になるように強制したり、二人きりでいたときいきなり発狂して教室で大暴れしたり。こっちには笑える要素が一つもないんだが」
それ、全部あなたの娘さんがやったことなんですけど!
笑える要素が一つもないのに笑ってみせた僕は意外と大物なのかもしれない。
「死にたいなら勝手に死ねばいい。なぜうちの娘を巻き込むんだ?」
だからそれも娘さんに聞いてください!
「それよりまず確認したいことがある」
「なんでしょう?」
「おまえの親に渡された迷惑料の十万円が消えた。取り返してこいと映山紅に言ったのか?」
え? さっき返してもらった十万円って彼女が無断で持ち出したもの? 想定外の事態に背筋が寒くなった。
「それを見せろ!」
突進してきた弟の菊多にショルダーポーチをひったくられ、中身を乱暴にぶちまけられた。白封筒の中の十万円はすぐに見つけられ、思いきり顔を殴られた。
言い訳を聞いてもらおうと思ったが、姉弟間で言い争いが始まり、それどころではないようだ。