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神楽「っ、、」
僕はどうしていいかわからない。だって、謝るのだってもう遅いし、馴れ馴れしくできないし、でもよそよそしかったら父はどう思うんだろうか。
父「おう、元気だったかー?」
玄関からそういう父の声が聞こえる。
それに元気よく答える兄たち。けど、兄たちと僕は違う。
母は笑顔で僕へ手招きするが、僕は行けそうにない。
その様子を伺ったのは和楽兄さんだ。
和楽「おーい父さん、神楽、背伸びたんだよ!ほら。」
そう言って父をこっちに呼んだ。
父が現れた。約3年前と何ら変わらない。ただ、いつも怒ったような顔をする父の姿はなかった。
その代わり、僕を無の目で見つめている。
父「(咳払い)神楽、食事の後、私の部屋へ来なさい。話したいことがある。」
神楽「は、はい。わかりました。」
先ほどのお祭りどんちゃん騒ぎとは一変して静けさが取り残された。
僕は言われた通り食事の後、兄たちのお祭り騒ぎを抜けて父の部屋へ行った。
緊張と恐怖でドアのノックが震えている。
神楽「お父さんはぁっ、いらっしゃいますか。」
父「入りなさい。」
父の部屋は書斎のようになっていて、本や辞典が置いてある。
そこに背もたれのない丸椅子があり、そこに腰掛けた。
父「びくびくさせてしまったね、今日は神楽と話したかったんだ。」
神楽「はい、僕もです。」
父「ごめんなさい、神楽。辛い思いをさせてしまったね。」
父の目には光るものがあった。父の慈愛がこもった声と言葉に僕は思想が止まったようだった。
怒られるなら謝って許してもらおうと思ってたし、説教されたら反省を見せようとか、そう思っていたのに。僕へかけていたのは優しげな言葉だった。
父「神楽は空気が読めてしまうから、いい子だから、私が海外へ行ったときに自分のせいでと思わせてしまったと思うんだ。でも、本当は私自身の仕事の都合だった。私は神楽を思わない行動をしてしまった。それが一番の心残りだった。」
神楽「でも、僕は悪いことをしましたし、」
父「悪い部分なんて神楽にはなかった。けど、私とお母さんは何かのせいにしたくてたまらなかったんだ。一番は頑張った神楽を褒めてあげるべきなのに。どこか正直になれなかった。」
父は僕のことで後悔してくれていたようだ。どこか自分が報われた気がする。
父は涙と流した。父が泣いている姿は見たことがなかった。
父「そんな親がいながら、神楽はまっすぐに伸びていった。それはものすごいことだ。 」
父の言葉に思わず
神楽「ありがとう。」
父へ感謝を言ったのは久しぶりだった。嫌な人だと思ったやつに感謝を伝えることができる日が来るとは。けど、父がいなければ今の僕はいない。感謝だってしていなかったといえば嘘になる。
父「許してなんて言わない。だけど、私は神楽の父親であってもいいか?」
と恐れ多いように聞いてきた。
神楽「うん、もちろん。でも約束して、これからはもう僕に嘘をつかないで。 」
嘘というのは悪いこともそうだが、いいことも嘘とよばれることがある。そんな変な気遣いいらない。そう吹っ切れたのである。それに、父は僕に暖かさと優しさと、礼儀を教えてくれた大切な人だ。
僕は疑問に思った。転勤はともかくなぜ転職したのか。父にせっかくの機会なので聞いてみることにした。
神楽「ねえ、なんでいきなり海外へ行ったの?仕事も技術の教師から科学者なんて。」
父は戸惑うことはなく
父「それは、前から科学者に興味はあったんだ。だけど、学生時代バイトでやった大工の補佐が楽しかったから、公務員という形の大工を選んだんだ。けど、人生において職業を一つに絞るのは勿体無いと思って、思い切って海外で科学者をしてみることにしたっていうだけだ。」
父はもともと技術に教師は気に入っているイメージだったので
神楽「じゃあ、また中学の技術担当やるの?」
この際僕の中学校にきてくれるのではないかと
父「いや、もう教師にはしばらく戻れないんだ。」
神楽「、、そうなんだ。」
そう言って自分の部屋に戻った。
そこでふと疑問が浮かんだ。戻れない。戻らないじゃなくて。
夏休み前日。僕は五十嵐と一緒に帰っていた。
美術部は基本的に夏休みに部活はない。なぜなら、成田先生が結構忙しいためである。
なので、しばらく五十嵐とは会わない。
藤原「明日から少し会えないよね、夏休み長いし。」
五十嵐「」
美術部は9月にある文化祭が本丸である。なので美術部といえど、緩めな雑談兼勉強部だった。特に五十嵐は成田先生の入れ知恵で英語の成績が急激に伸びた。
成田先生も絶賛するほどやればできる子とはこのことだと分かったこの頃だった。
藤原「ていうか、宿題早くおわ」
五十嵐「うっ、」
五十嵐が突然うずくまった。それから地面へ倒れ込んでしまった。
藤原「え、ちょっと、五十嵐?!」
僕はパニックになって思わず携帯で救急車を呼ぼうとした。
だが、五十嵐は僕の携帯を奪い、片手で文字を打ち始めた。
「くすりみぎぽけっと」
僕に見せてきたので僕は薬を探し出し、五十嵐に渡した。
帰り道の公園の東屋に五十嵐に肩を貸し座らせてみた。
少しすると五十嵐が動き出したので
藤原「大丈夫?、いや大丈夫なわけないか。」
五十嵐「あー、死ぬかとおもったわ。あはは、午後の薬飲んでなかったっけか。」
藤原「笑い事じゃないよ、」
五十嵐「あ、ちょっと、心配て伺えすぎる顔すんなよ。大したことないから。」
藤原「大したって、倒れ込むくらいなんだから。何の薬なの?」
五十嵐「うーん、まあ、あんまいえないんだけど、これないと俺使いもんにならなくなんだよね。さっきみたいに倒れちゃって、体が動かなくなるっていうか。」
藤原「そっか、、。」
その後は僕がフラフラの五十嵐を連れてわかれの交差点まで送った。
すると、お父さんが散歩していたので父に話しかけた
藤原「あ、ねえ!」
気づいた父がこちらへ向かってくる。だが、五十嵐が
五十嵐「え、」
僕の肩から手を外して
五十嵐「ねえ、あれ誰?」
藤原「あ、あれはね、僕の父、海外から帰ってきたんd」
父「おい、君大丈夫か?神楽の友達なのか?フラフラしているな。」
五十嵐「藤原さん、俺が誰だか、わかりますか?」
父の言葉に被さるように言った。どこか息が切れているような真剣な顔で父を見つめた。
父「どこかで会ったことがあるかな?ええと、、」
しばらく待たずに父の顔は青ざめていった。
五十嵐「そうか、覚えていらっしゃるんですか。へぇ。」
それと同時に、五十嵐は五十嵐の家とは反対方向に走っていってしまった。
第九話へ続く、、