テラーノベル
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とある日、すまない先生は廊下を歩いていると、外に1組の男女が。
少女の方は丸い円盤らしきものを手にし、少年の方は弓を構えていた。
(何しているんだ?)
すまない先生は何となく観察していると、
「行くよー」
「ほーい」
少女はその円盤。“的”を少年に投げつけた。すると、少年は弓を構え、的を撃ち抜く。
一矢も外さず、的確に。
すまない先生はその光景にとある友人を思い出した。
『ミスターすまない!』
すまない先生は駆け出し、思わず叫んだ。
「ミスターライトッ!!」
「え?」
すまない先生の叫びに、少年、ミツキはピタリと弓を打つ手を辞めた。
「あ・・・ミツ・・・」
と、ギョクがミツキの名前を呼んだ途端、
ガンッ
「「あっ」」
その的がミツキの額に見事直撃した。
✵✵✵✵✵
「すまないっ!本当にすまないっ!!」
「いいっですって〜」
すまない先生はミツキに頭を下げた。ミツキはおでこを冷やしながらそう答える。
「そうですよ、すまない先生。元々ミツキが動体視力を鍛えたいからって練習をしていただけなので、悪いのは避け無かったミツキです」
「おおう・・・我が妹よ・・・冷たい・・・」
と、ミツキは不貞腐れたような表情をする。
すまない先生はクスッと笑う。
「・・・君たちを見ていると、昔の友人を思い出すよ」
そうすまない先生はポツリと話す。それにギョクとミツキはキョトンとした。
「・・・友人?」
「うん・・・ライバルであって、仲間だったんだ」
そうすまない先生は答えた。
「・・・多分、僕より彼の方が英雄に向いていたと思うよ。弓の腕もミツキくんと同じくらい凄くて・・・」
そこまで言うと、すまない先生は顔を上げた。
「・・・今は、どこにいるか分からないけどね」
そうこぼした。その瞳は少し悲しそうに見えた。
「・・・それにギョクちゃんは、彼女にそっくりだ。」
「・・・彼女?」
「うん・・・その子、“エウリ”って言うんだけど、君に凄く似てて・・・優しい子だった。僕の、初恋だったんだ・・・彼女も、今はどこにいるか分からない。」
そうすまない先生は呟いた。
「・・・僕は、本当は英雄になんて向いてないんだよ。僕はただ、ヤマタノオロチを倒したくて生きているようなものなんだ」
そうすまない先生は答えた。すると、
「すまない先生」
と、ギョクがすまない先生の両頬を掴み、顔を上げさせる。
すまない先生は目を丸くする。すると、ギョクは答えた。
「・・・すまない先生。すまない先生は英雄です。けど、それ以前に1人の人間なんですよ。」
そう、ギョクはすまない先生に話す。それにすまない先生は目を丸くした。
「・・・私の父が言ってました。『人は1人では生きていけない。仲間がいれば、人は強くなれるんだ』って・・・すまない先生はひとりじゃないでしょ?仲間がいます。それだけは忘れては行けません」
そう少女は真っ直ぐ目を見る。その瞳は、彼女のような優しい瞳とは違く、力強い瞳だった。
「・・・そう、だね」
と、すまない先生は少し瞳を和らげた。
「・・・ありがとう、少し楽になった気がするよ」
と、すまない先生は微笑む。
「あ、すまない先生!僕と弓矢対決しませんか?」
「うん、いいよ!」
と、すまない先生はミツキの元へと駆け寄った。
(・・・“昔”はそんなこと考えてたんだな・・・)
と、ギョクはその瞳をすまない先生とミツキに向けていた。
その瞳がどういう意味を持っているか、それはまだ先の話。
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