ミスターバナナは、いつも通りの射撃の訓練場へと出向く。
大切なものを奪われた復讐の為に、大切な人を守る為に。
バナナが射撃の訓練場へと向かう。すると、
バンッバンッ
と、数発の発砲音が、バナナは首を傾げ、訓練場へ向かった。
✵✵✵✵✵
バンッバンッバンッ
数発の弾が、的のど真ん中を撃ち抜く。カランッと薬莢がこぼれ落ちる。
バナナはその訓練場へと足を運ぶ。
そこでは銃を撃っていた数日前突如として現れた少年達のひとり、リンがいた。
リンは瞳をこちらへ向けた。
真っ赤な瞳がこちらを刺すように見つめる。思わずバナナは一瞬怯みかけた。だが、その少年から零れた言葉は、
「・・・あ、バナナくん、どうしたの?」
ぽやんとした話し方に、思わずバナナはガクッとずっこけた。
「・・・それはこっちのセリフだ・・・えーっと、リン、だったか?」
「・・・・・・・・・・・・・うん」
「その間はなんだ。その間は・・・」
バナナは思わずツッコミを入れる。
少し彼が苦手だ。
ぽやんとしていて、すぐ死にそう。だが、銃の腕前は恐ろしいほど凄い。
そして、
あの真っ赤な瞳を見ると思い出す。
幼なじみのあのりんご姫を。
「バナナくん?」
リンに名を呼ばれ、思い出から帰ってきた。
「なんだ?」
「大丈夫?ぽやんとしてたよ?」
「それはお前だろ」
そう言うと、リンはふにゃりと笑顔をこぼした。
その笑顔も、りんご姫そっくりだ。
バナナはくしゃくしゃとリンの頭を撫で、自分も銃の訓練をし始めた。
✵✵✵✵✵
「ところで、その銃は誰に教えて持ったんだ?」
休憩中、水分補給をしていたバナナがそうポツリと呟いた。
リンはぽやんとした表情のまま、答えた。
「・・・僕のお父様だよ」
「・・・お父、様」
「うん、僕のお父様」
と、リンはポヤポヤしながら話す。
「・・・お父様は、厳しいけど、銃の腕前は凄くて、優しいところもある。お母様は優しくて、強くて・・・僕の自慢の両親なんだ」
と、リンは優しく笑う。
「・・・お前は、両親が大好きなんだな」
「・・・うん」
リンはそう答えた。バナナはまた水分補給をしていると、
「・・・僕、実は第1王子なんだよね」
「ブフッ!!」
突然の告白に、バナナは水を吹き出した。変なとこに入ったのか、ゴホゴホッと咳をこぼす。
「大丈夫?」
当の本人はキョトンとし、バナナの背を摩っていた。
「だ、第1王子・・・ゴホッ・・・てことは、君は王子なのか!?」
「そうですよ?」
ケロッと話すリンにバナナはゴンッと頭を打つ。
そんな簡単に話す内容では無いことに、バナナは胃が痛くなった。
「・・・僕、そんな国を守りたいんだ。お父様が仲間たちとお母様や他の人を助けたみたいに」
「?それはどういうことだ?」
「それは・・・」
すると、
「あーっ!!こんなとこにいたぁ!!」
突然場の空気を壊すような声が響く。
そこには、白髪のふわふわした長い髪に、ハチマキを後ろでリボンにした“シロガネ”だ。
「もう!!すまない先生に倉庫の手伝いして欲しいって言われてたのにどこ行ってたの!?」
と、シロガネがリンにつかつか近寄る。すると、リンはポヤポヤとしながら答えた。
「んーっと、蝶追っかけて〜、牛さん見て〜、屋上眺めてて〜、最後に的見つけたから銃の試し打ちを〜?」
「凄い道草食ってたんだね・・・」
シロガネは苦笑しながら、リンの腕を掴み、ずるずると連れていった。
そんな後ろ姿をバナナはぽかんと眺めていた。
「・・・なんだったんだ、あれ?」
そう残されたバナナは呟いた。