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アニバーサリーイベントのライブを1年後に控えた初夏のある日。元貴に任された野外ライブを終えた数日後、あまりに体調が悪く病院に行った。
ずっと悩んでいた体調不良についに明確な診断がついてしまった。
名前は難しかったが、精神疲労が身体に多大なる影響を与える病気。
完治というものは中々難しく長く付き合っていくもの。明確な薬はない。
精神的負荷をさげたり、コントロールできれば平和に生活できるものではあった。
ただ、悪化したら日常に戻るのにとても時間がかかるもの。
優しそうな男性医師が静かに説明してくれたせいか、冷静に受け止められた。
「……僕はどうしたらいいでしょう?」
やはり動揺してるかも。
あほみたいな質問しちゃった。
ありがたくも先生は変わらずフラットだった。
「基本的にストレスを減らして自分に向き合う対処療法ですね。その時々の症状で薬は出せますが、一時的なものになります。」
「……ライブとか。してるんですが、大丈夫ですかね?」
「ご認識のとおり、呼吸に影響が出てる点は心配です。様子をみながらですね。」
「セリフをかんじゃうのも関係あります?」
間が空いた。あ、いけない。軽口に思われたかな?僕は真剣でもズレてるとか言われるからな。
「あるでしょうね。呼吸が落ち着いてないから、頭が追いつかないとか。」
考えてくれただけだった。優しい先生で安心した。
「……まだ初期症状ですが早く治すためにもお休みされてはいかがですか?血液をみても栄養不足気味だしおそらく睡眠不足です。」
「やっと山場終わったので、ちょっとメンバーと相談します。」
ありがとうごさいました、と診察室を出る。
元貴はこれから映画撮影だし、若井はテレビ番組があってそもそも忙しい。
僕は裏方の制作は忙しいけど、2人はもっと忙しい。1人休んでるわけだから話すのはやめよう。
「……潮時かな……。」
ぽつりと呟いたら、肩の荷が下りた気がした。
野外ライブを主体的にやらせてもらえた。
めちゃくちゃありがたかったし楽しかった。
自信になったはずだった、のに。
打ち上げも楽しくできたけど。
来年アニバーサリーだから元貴主導に戻ると聞いた。スタッフの気遣った言い方に、 あー、だめだったんだとわかった。
主演映画にピリついてる元貴を僕が無駄に怒らせないように、スタッフが先回りして言っただけ。元貴はみんなの宝物。
もちろん俺にとっても宝物だ。
「……宝物なんだけどな。」
ずっとずっと大事にしてきた。
でも逆にこんなスターなら足を引っ張る僕はいらないのではないか。
「アニバーサリーで。終わりにするか。」
そう思ったら少し呼吸が楽になった。
そうか。
僕はもうキャパオーバーだったんだ。
起こした奇跡を数えてきた。数え切れない奇跡に感謝してきたしおびえても来た。後1年がんばろう。たくさんたくさんがんばって。
せめて綺麗に飛び立とう。
※妄想だから!こんなことないから!←当たり前