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「ずるいよ・・」
すると、なぜか透子が急に不安そうな顔をしながら呟く。
「何が?」
えっ?何?急にどしたの?
いきなりそんな不安そうにしている透子を見て、なぜだかわからなくて戸惑う。
「樹はなんでも秘密にしたがる。だから、私はそんな樹の気持ちがわからなくて不安になる・・・」
えっ?
何言い出してんの?透子。
「オレの気持ち?」
オレの気持ちはすでに透子に伝えてるつもりだけど?
ここまでやってて何が不安?
「そうだよ。いつの間にか私の前に現れて、どんどん気持ちに入り込んで。だけど樹がどこまで本気なのかも全然わかんない・・。なのに、私だけこんな好きになって・・樹はずるいよ・・」
いや・・ちょっと待って。
なんだよ・・それ・・。
「それ・・本気で言ってる?」
まだオレの気持ちが伝わってなかったことが情けなくて、つい冷静に言葉を返してしまう。
オレは透子のこと本気だって、ちゃんと伝えられてると思ってたのに。
ずっとずっと想い続けて、どれほどオレが透子が欲しくて欲しくてたまらなかったか。
当然、透子はそれまでのそんなオレの想いなんて知るはずもない。
・・・てか、最後の言葉・・・。
オレのこと、好き・・って言ったよな?
ホントに・・?
ようやくオレのことちゃんと好きになってくれたってこと・・?
なら、なんで・・?
なんで透子がそんな不安になってんの?
「だったら、何・・?」
透子が返してくるその言葉に、オレはどうしていいかわからなくて。
明らかに透子は不安がってて、そして強がってて。
だけど、確かに透子はオレが好きだと言った。
だから・・?
もしかして、透子はオレが本気だって思ってなくて、自分だけが好きだってそう思って不安になってるってこと?
「はぁ・・・」
思わずそのもどかしさに溜息が出る。
なんでオレ透子こんな不安にさせてんだよ。
なんでもっとオレの気持ち信じてもらえないんだよ。
情けねぇ。
やっと透子が好きになってくれたと思ったら、今度はこんなに不安にさせて。
いつから?
透子はいつからそんなに不安になってたの?
いつからオレを好きになったの?
どうしたらそんなに不安にさせずに済んだ?
何が間違ってた?
オレ的には、押しすぎて透子が引かないように、それなりの距離を保って伝えているつもりだった。
なのに。
それがこんな透子を不安にさせてたってこと・・?
「ごめん・・」
すると、なぜか透子が悲しそうに謝って来る。
「何がごめん?」
オレ、何透子に謝らせてんの?
なんでそんなツラそうな顔してんの?
「今の、忘れて! 大丈夫! もう好きだとか言わないから安心して」
すると、まさかの透子からの言葉。
「は?なんでそうなんの?」
なかったことにするとか何?
透子、何一人で全部抱え込んでんの?
ようやく言ってくれた言葉なのに、すぐに訂正しようとする透子にイラッとして思わず詰め寄ってしまう。
「ごめん・・」
「だから~なんで謝んの?」
なんでそんなに謝るのかがわからない。
透子を困らせたくないのに。
だけど、全然意味がわからなくて、納得いかなくて、ついどんどん口調がキツくなる。
「もう困らせないから安心して・・?」
だから、違うのに・・・。
透子、なんか絶対勘違いしてる。
なんで一方的な想いみたいになってんの。
「そうだね・・。なんで透子はオレをそんなに困らせるの?」
オレの気持ちもちゃんと聞いてよ。
てか、今までのオレ見て来て、なんでそんな風になってるのかわからなくて。
「透子は全然オレの気持ちわかってない」
そんなツラそうな顔するほど、そんな不安な顔するほど、オレのことが好きなんでしょ?
ならオレの気持ち、ちゃんと伝えてあげる。
もうこれ以上不安にならないように。
「オレがどれだけ透子のこと好きか全然わかってない」
オレがどれだけ透子が好きなのか、ちゃんと教えてあげる。
「・・・え?」
「オレはずっと透子のこと本気だった。最初に出会った時から。そしてもちろん今も」
これがホントのオレの気持ち。
ホントのオレの言葉。
「えっ?ちょっと待って。言ってる意味がわかんない・・」
だけど、やっぱりオレのその言葉が信じられない様子で、戸惑っている透子。
「透子。ちゃんとオレを見て」
落ち着かない様子の透子の両肩をしっかり掴み、透子の顔を覗き込んでじっと見つめる。
「オレは。透子のことが、ずっとずっと好きだった」
透子が気付いてない頃からずっと。
何年も前から、ずっと透子だけを見てきた。
「だって・・樹、ずっと報われない相手がいるって・・」
「そうだよ」
「じゃあ、なんで・・」
「まだわかんない?」
「どういうこと・・?」
「透子とあの日出会う前から、オレはずっと透子が好きだった」
「・・え?」
「報われない相手は・・透子」
「・・・え!?」
そっか。
そういうことか。
透子は存在しない報われない相手が引っかかってたってことか。
オレが他の誰かが好きで、それで透子の気持ちにブレーキかけてたってこと?
なんだよ・・オレのせいかよ・・・。
透子の気を引くために、透子の重荷にならないように伝えた言葉が。
まさか透子の気持ちにブレーキをかけて、オレとの関係をこじれさせてしまってただなんて。
そんなことになるなんて思いもしなかったから。
そんなに透子がそれを気にするなんて思ってもみなかった。
透子に好きになってもらいたい、好きにさせると思ってたのは本当だけど。
でも、あまりにもオレだけが透子を想ってる時間が長すぎて、実際はどこかで少し自信がなかった。
少しずつオレを気にかけてくれればいいなって、そんなくらいで思ってたのに。
でも・・・多分、きっと。
透子はオレが思っているより、オレのことを好きでいてくれてるような気がして。
多分それはきっと、勘違いでもなく、自惚れでもなくて。
目の前で泣きそうになってる透子のこの表情が、その言葉が、その目が。
今の透子のすべてでオレを好きだと伝えて来る。
知らない間に、こんなに透子を好きにさせてたなんて。