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夏休み前、終業式。
生徒たちは大掃除に取り掛かっていた。
掃除は面倒だが、明日から夏休みということもあり、皆どこか浮き足立っていた。
雪乃も担当となった廊下を箒で掃くが、夏休みというものに実感がなく、何をすればいいんだろうとボーッとしていた。
まぁあの緑の悪魔に遭遇することがなくなるなら、それだけでいいか。
「もー誰も掃除せぇへんからいらんもんだらけや」
「機材も多いし、壊れたやつは処分せんとなぁ」
そんな中、雪乃が掃除する廊下を大荷物で通り掛かる人物が2名。
2人とも顔が隠れるほどの荷物を積み上げ持ち運んでいるが、グラグラ揺れていて今にも倒れそうだ。
大丈夫か、と邪魔にならないよう避けつつ見守っていたが、
「ーーーうおっ!!」
案の定荷物がぐらつき倒れていく。
雪乃は持っていた箒を捨て、一瞬で距離を詰める。
そして落ちてきた荷物たちを、両手、片足、頭で全てキャッチする。
そのおかげで、荷物は落ちることなく無事に済んだ。
「大丈夫ですか?」
雪乃は荷物を持っていた張本人を見た。
…瞬間、戦慄した。
「あぁ、すまん、助かった」
豚だ。
豚が喋っている。
あれ、夢でも見ているのか?
ポケモンじゃないよな?
驚愕する雪乃を、その当の本人も驚愕して見つめていた。
なんちゅーバランス感覚や。
しかも結構重いのに力もある。
そして目にも止まらぬ瞬発力。
こんな超人がおるんか…!
お互い驚いていて言葉を失っていた。
「おいトントン、大丈夫か?」
ひょこっとタワーのように積まれた荷物の影から顔を覗かせたのは、ロボロだった。
「あぁ、大丈夫や。
キミ、ほんまにありがとうな」
そう言いながら我に帰ったトントンは雪乃から荷物を受け取った。
「あれ?お前は…」
ロボロは狭い視野の中、雪乃を発見する。
「どうも」
ロボロの姿を見て、雪乃は軽く会釈した。
そんな事よりも目の前の豚さんが気になって仕方ない雪乃。
「知り合いなんか、ロボロ」
「あぁ。あれや、草凪の妹や」
トントンは改めて雪乃を見る。
この子が噂に聞く草凪の妹か、と。
まじまじと見られ、萎縮する雪乃。
どうやら夢ではないらしい。
「ごめんな、掃除の邪魔して。大事な物やったからほんま助かったわ。ありがとう」
「いえ…」
トントンは再び荷物を積み直し、雪乃にお礼を言って歩き出した。
「じゃあなー」
ロボロも口だけで挨拶し、トントンを追いかけた。
…また落とさないといいけど。
それより今見たものが驚愕すぎて、しばらく現実に戻ってこれなかった。