テラーノベル
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市役所内、北野がデスクに座って書類仕事をしている。林田がやって来て声をかける。
林田「北野さん、今お時間ありますか?」
北野「はい、大丈夫ですよ。先日の件ですか?」
林田「はい。あまり有名ではないですけど、前川漬物店の店主さんでした。お引き受けいただけました。ただ……」
北野「ただ? 何か厄介な事でも?」
林田「ううん、厄介というか。その時の子どもたちの親を一緒に連れて、お店の漬物工場に来い、と言われまして」
北野「それは変わった条件ですね。でも、才能や適性を育てる方法を実地で見せてくれるという話では?」
林田「あ、そうかもしれませんね。参加してもいいという方が5組いらっしゃいます。小さな子供たちが工場に押しかける形になるので、チバラキVにまた付き添いをお願いしたいんです」
北野「分かりました。そういう事なら喜んで手配します」
場面転換。
小さな川の側に建つ漬物工場。木造の古い感じの平屋。
その前に、チバラキVの移動用軽トラックと参加する親子を乗せたマイクロバスが停まる。バスから降りて来る5組の中には拓と父親の姿がある。
チバラキVのメンバーが工場敷地の入り口で親子連れを誘導する。
玲奈/レッド「はーい、ここから入るんですよ。並んで、走らないでね」
工場から作業着の孝太郎が出て来る。
孝太郎「おお、来たねチビちゃんたち。ええと、あんたが市役所の人かい?」
林田「はい、子どもスクール係の林田です。本日はよろしくお願いします」
孝太郎が敷地の隅の、川に面している石畳の場所を指差す。
孝太郎「チビちゃんたちをあそこへ集めといてくれ。道具を持って来る」
全員が川の側に移動したところへ、孝太郎が手作りらしい木の竿を5本手に持ってやって来る。川の水面のすぐ横にしゃがみ、子どもたちを手招きする。
ポカンとした様子で集まった子どもたちに、竿の一本にスルメのかけらを餌として付けて見せ、タコ糸を水面に放り込む。
やがてタコ糸がピンと伸び、小刻みに震える。孝太郎が勢いよく竿を立てると、先にザリガニがかかっている。
孝太郎「どうだ? これやった事あるか?」
子どもたちが一斉に首を横に振る。
孝太郎「よし、じゃあ、やってみろ。一人一本ずつあるからな。そうそう、エサはそういう風につけるんだ」
子どもたちが思い思いにザリガニ釣りの竿を水面に放る。
子どもA「あ、なんか動いてる」
女の子「わあ! ザリガニさんだ!」
孝太郎「おおい、そこのナントカ戦隊の人たち。子どもが川にはまらないように、見張っといてくれや」
玲奈「は、はい。じゃあ、二手に分かれて」
林田「あの、今日は子どもの才能や適性を育てるコツを教えていただけるという話だったはずですが」
孝太郎「だからこれだよ。これがそのコツだ」
母親A「ザリガニ釣りが才能を育てるコツ? 聞いた事あります?」
母親B「いえ。あたし、子育て情報のサイトや本をほとんど見てますけど、こんなやり方見た事も聞いた事もないです」
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