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皿を下げて台所に立つと、リビングからはまだ兄と悠真の笑い声が聞こえてきた。
楽しそうなその響きに、咲の胸はちくりと痛む。
――どうして、こんなに気になるんだろう。
シンクに水を流しながら、昨日の夕暮れのことを思い出す。
玄関先で見上げた横顔。
変わったようで、変わらない笑顔。
「妹ちゃん」なんて軽い一言なのに、どうしてこんなに心臓が跳ねるのか。
「……バカみたい」
小さくつぶやき、顔を伏せる。
それでも耳は勝手にリビングの声を拾ってしまっていた。
兄と悠真の距離の近さに、置き去りにされたような寂しさを覚えながら。