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#カラフルピーチ
Ayaka0826
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#カラフルピーチ
しぁ@krpt
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第38話 空の先
――公園に着いた頃には、空が茜色に染まっていた。
オレンジ色の光が、ブランコや滑り台を照らしている。
たっつんが一足先に公園の中に入る。
俺は長く伸びるたっつんの影を辿る。
ヒロくんも後ろから入ってくる。
冷たい風が吹いて、木々の葉がさらさらと音を立てた。
💚「うわぁ……!懐かしい!」
思わず、声が弾んだ。
💛「……せやなぁ。」
隣にいるたっつんは、少しだけ目を細めていた。
その横顔が、いつもより大人びて見えて。
いつもよりかっこよく見えて。
🩶「……先輩たちは、ここによく来てたの?」
💚「うん!小さい頃、毎日のように遊んでたんだよ!」
💛「学校終わったら、だいたいここ集合やったな。」
💚「そうそう!たっつんが先に来ててさ、俺が遅れて行くと、いつも怒るんだよ!」
💛「そら、お前が毎回遅刻するからやろ!」
💚「えー!? そんなことないって!」
💛「いや、あったやろ!」
🩶「ふふっ……」
ヒロくんが笑った。
さっきまで少しだけ緊張していた表情が、柔らかくなっている。
……よかった。
今日は、たくさん笑ってくれた。
カフェに行って、ゲームセンターで遊んで、ファミレスで話して。
夢のことは、まだ怖いままかもしれない。
それでも。
今日という一日が、ヒロくんにとって少しでも楽しいものになっていたら。
少しでも『幸せ』を感じていてくれたなら、俺も『幸せ』だな。
💚「……あ。」
ふと、視線が公園の隅に向いた。
小さな砂場。
そのすぐそばにある、少し古びたベンチ。
そして、ブランコ。
どれも、昔とあまり変わっていない。
―――俺は昔ここで、また助けられた。
***
――あれは、まだ小学校に入ったばかりの頃。
夢中で走っていた俺は、足を滑らせて、思いっきり転んだ。
💚『うわぁっ……!』
膝が痛い。
びっくりした。
恥ずかしい。
泣きそうになって、顔を上げると。
💛『じゃぱぱ!大丈夫か!?』
君が、すぐに駆け寄ってきた。
俺の目の前にしゃがみ込んで、心配そうに顔を覗き込む君。
向日葵色のあの瞳。
💚『……立てない。』
君は、少しだけ考えて。
それから、俺に手を差し出した。
💛『ほら、手ぇ貸したるからさ。』
💚『……でも…。』
💛『大丈夫だよ。ほら!』
俺は、その手を握った。
ぎゅっと。
君の手は、何よりも優しく、あったかかった。
💛『せーの!』
引っ張られて、立ち上がる。
膝はまだ痛かったけれど。
さっきまでの怖さは、少しだけ消えていた。
💛『よし!立てたな!』
💚『……うん!』
💛『じゃあ、もう一回走ろ!』
💚『えぇ!?また転ぶかもしれないじゃん!』
💛『そん時は、また起き上がったらええねん!』
そう言って、君は笑った。
……ああ。
そうだった。
俺は、昔から。
何度も、君に手を引いてもらっていたんだ。
***
今日。
俺は、ヒロくんの手を握った。
『大丈夫だよ』って、言いたかった。
怖くてもいい。
迷ってもいい。
立ち止まったっていい。
でも。
もう一度、歩き出すことだってできるんだって。
……昔、俺のヒーローが教えてくれたみたいに。
💚「……ふふっ。」
💛「……なんで笑っとん?」
💚「…んーん!なんでもなーいっ!」
💛「なんやそれ。」
たっつんは不思議そうに首を傾げた。
……きっと、君は覚えていないだろうなぁ。
君にとってはあれも、ただの日常の延長線に過ぎない。
俺にとっては、一生忘れることのない、大切な思い出だけど。
でも。
覚えていなくたっていい。
だって、俺は覚えているから。
君が、俺にしてくれたこと。
君から、教えてもらったこと。
そして。
俺が、これから誰かに渡していきたいもの。
🩶「……じゃぱぱさん?」
💚「ん?あーごめん!」
🩶「何か、思い出してた?」
💚「え?いや…別に…。」
俺は視線を逸らす。
💛「えー。気になるやん。」
💚「でも、多分たっつんは覚えてないよ?」
💛「え?俺に関すること?」
あ、口滑らせちゃった。
💚「…まぁ。」
🩶「え〜、なになに?」
💚「……昔、ここでたっつんに助けてもらったこと」
💛「……へ?」
💚「俺が転んだ時、手を引っ張って起こしてくれたんだよ、たっつんが。」
💛「あー……なんかあったな、そんなこと。」
💚「えっ!?覚えてるの!?」
絶対たっつんは覚えてないと思ったのに。
💛「…そら、ちょっとくらいはな。」
💚「ちょっとって何!?俺、めちゃくちゃ覚えてるんだけど!!」
💛「あれやろ?じゃぱぱがめっちゃ泣きそ…」
💚「うわぁああああ!!!!!」
たっつん!?!?何言おうとした!?!?
💛「うるさい笑」
🩶「あははっ!」
三人の笑い声が、公園に溶けていく。
空は、少しずつ赤から紫へと変わっていく。
……もう少しだけ。
この時間が続けばいいのに。
そんなことを思っていた。
🩶「……俺。」
ヒロくんが、小さく口を開いた。
💚「……うん?」
🩶「俺、やっぱり……小学校の先生になりたい。」
……。
俺とたっつんは、顔を見合わせた。
ヒロくんは、手に持った羊のぬいぐるみを、ぎゅっと抱きしめている。
🩶「まだ、怖い。勉強も、みんなの前で話すことも。子どもたちに質問されて、答えられなかったらどうしようって思うし……。」
🩶「俺より、先生に向いてる人だって、きっとたくさんいると思う。」
そこで一度、言葉が途切れた。
🩶「……でも。」
ヒロくんは、ゆっくりと顔を上げた。
🩶「今日、すごく楽しかったんだ。」
🩶「カフェに行って、UFOキャッチャーして、ファミレスで話して……。なんだか、久しぶりに何も考えずに笑えた気がして。」
🩶「それで……思ったんだ。」
ヒロくんは、羊のぬいぐるみを見つめた。
🩶「俺、やっぱり、こうやって誰かと一緒に笑える時間が、大好きなんだなぁって。」
🩶「……子どもたちにも、そんな時間を過ごしてほしい。」
🩶「勉強が苦手でも。失敗しても。自分に自信がなくても。」
🩶「学校に来るのが、ちょっと楽しみになるような。そんな場所を作れたらいいなって……。」
胸の奥が、じんわりとあたたかくなった。
…きっと。
ヒロくんは、もうずっと前から。
自分の中にある、答えの欠片に気づいていたんだ。
ただ、それを信じるのが怖かっただけで。
もうすでに、欠片を指先でなぞってたんだ。
💚「……そっか。」
俺は、笑った。
💚「いいじゃん!めっちゃいい夢だと思う!」
🩶「……本当?」
💚「本当だよ!」
💛「せやな。」
たっつんも、頷いた。
💛「子どもに勉強を教えるだけが、先生の仕事やないやろ。」
💛「一緒に笑ったり、悩んだり。失敗した時に、どうしたらええか考えたり。」
💛「そういう時間も、きっと大事なんやと思うで。」
🩶「……!」
💛「まあ、実際に先生になったら、俺らが知らんような大変なことも、いっぱいあるんやろうけどな。」
💚「ちょっと!そこは夢を見させてあげようよ!」
💛「いや、現実も大事やろ!」
💚「それはそうだけどさぁ!」
🩶「ふふっ……!」
また、笑い声がこぼれた。
🩶「まだ…本当になるかは、分かんないけど。」
💛「……。」
🩶「俺には、まだ答えが分かんない。俺はどうしたらいいのか。俺はどうなるか、なんて…。」
ヒロくんが少しだけ目を伏せる。
たっつんは、そんなヒロくんを見て、少しだけ表情を和らげた。
💛「……ヒロくん。」
🩶「うん?」
💛「これは、君の『選択』や。」
ヒロくんが、顔を上げる。
💛「考えるのは、みんなでできる。悩んだら相談してくれたらええし、一緒に考えることもできる。」
🩶「うん…」
💛「でもな、最後の『決定』は君にしかできない。」
💛「やから、自分自身で、ちゃんと選ばなきゃ。」
💛「……君だけの『ストーリー』を。」
🩶「…………。」
ヒロくんは、しばらく黙っていた。
それから、ゆっくりと頷いた。
🩶「……そう、だよね。」
そうだ。
俺たちは、ヒロくんの代わりに答えを出すことはできない。
どんな未来を選ぶのか。
何を大切にして生きていくのか。
それを決められるのは、ヒロくん自身だけだ。
俺たちにできるのは、隣で一緒に考えること。
悩んだ時に、話を聞くこと。
そして。
本人が自分の足で歩き出せるように、そっと背中を押すこと。
💛「……まあ、まだ急ぐ必要はないんやけどな。」
🩶「……え?」
💛「まだ中二やろ?」
💚「あっ、確かに!!」
🩶「じゃぱぱさん、忘れてたの!?」
💚「いやぁ、なんかもう将来のこと決めなきゃいけない気がして……!」
💛「お前は受験生やからそろそろ決めなきゃやろ??」
💚「俺の話は今してないじゃん!!」
現実突きつけないでぇ…。
🩶「ふふっ……!あははっ!」
ヒロくんが、声を上げて笑った。
今度は、さっきよりもずっと自然に。
楽しそうに。
💛「せやから、焦らんでええよ。」
💛「そのうち、ちゃんと考えていけばええ。…そのうち……ね。」
🩶「……うん。」
ヒロくんは、羊のぬいぐるみを抱き直した。
その顔には、まだ少しだけ不安が残っていた。
でも。
もう、さっきみたいな暗い色ばかりじゃなかった。
ほんの少し。
自分の未来を、自分で考えてみよう。
そんな気持ちが、見えた気がした。
🩶「……今日は、ありがとう!」
💚「えっ、もう帰るの?」
🩶「うん!暗くなってきたし。」
💛「そやな。送っていこか?」
🩶「大丈夫!家、すぐそこだから!」
💚「そっか!…じゃあ、また明日ね!」
🩶「はい!また明日!」
ヒロくんは、何度も振り返りながら、公園を出ていった。
笑みを溢しながら。
きっと、今日のことを思い出すたびに、少しだけ笑ってくれるんじゃないかな。
……そうだったら、いいな。
ヒロくんの姿が見えなくなるまで見送ってから。
俺は、隣に立つたっつんを見た。
💚「……行っちゃったね。」
💛「せやなー…。」
💚「……楽しかったねー。」
💛「うん。」
たっつんは、ゆっくりと公園を見回した。
💛「……ここ、ほんまに変わらへんな。」
💚「……うん。」
この公園は、俺たちが小さい頃から、ずっとある。
ブランコも。
滑り台も。
少し古びたベンチも。
あの頃と、変わらない。
大好きな場所。
でも。
俺たちは、変わった。
背が伸びた。
できることが増えた。
知らないことを、たくさん知った。
悩むことも増えたし、昔よりずっと難しいことを考えるようにもなった。
それでも。
ここに来ると、あの頃のことを思い出す。
俺が転んだ時、手を差し伸べてくれた君。
一緒に走って。
一緒に笑って。
夕暮れまで、ずっと遊んでいた。
――そして。
大事な思い出が沢山ある。
でも、一番思い出に残ってるのはあれかも。
***
それは、まだ俺たちが小さかった頃。
この公園のブランコに、二人で並んで座っていた時のこと。
💚『ねえ、たっつん!』
💛『んー?』
💚『たっつんって、大きくなったら何になりたい?』
💛『なんやねん、急に。』
💚『いいじゃん!俺はねー……!』
あの頃の俺は、まだ何も分かっていなかった。
将来のことも。
夢を叶えることが、どれだけ大変なのかも。
ただ、君と一緒にいる未来が、当たり前に続くと思っていた。
そう、信じていた。
💚『俺、大きくなってもたっつんと一緒にいたい!』
💛『……え?』
💚『だって、たっつんといると楽しいもん!』
💛『……なんやそれ。』
君は、呆れたように笑った。
でも、すぐに。
💛『……まあ、ええんちゃう?』
💛『ほな、約束な!』
そう言って、小指を差し出した。
💛『…ずっと一緒やで。』
💚『……うん!!』
その『合言葉』と共に、俺たちは小指を絡めた。
夕焼けの下で。
何の疑いもなく。
ただ純粋に。
ずっと一緒にいられると、信じていた。
――けれど。
時間は、止まらない。
俺たちは大きくなった。
できることが増えて。
できないことも、分かるようになって。
いつか、別々の道を歩く日だって来る。
高校も。
その先の未来も。
何もかもが、今のままではいられない。
……それでも。
***
💚「……ねえ、たっつん。」
💛「ん?」
💚「俺たちも、昔と変わったよね。」
💛「そら、何年経ったと思っとんねん。」
💚「背も伸びたし、できることも増えたし。」
💛「勉強も……まあ、ちょっとはできるようになったしな。」
💚「ちょっとは余計だよ!!」
💛「事実やろ!」
💚「ひどい!!」
いつものように言い返す。
たっつんが笑う。
俺も笑う。
……でもね、変わらないものだって、ちゃんとあるんだ。
💚「……でもさ。」
💛「ん?」
俺は、少しだけ空を見上げた。
夕焼けの向こうには、もう夜の色が広がり始めている。
一等星の明かりが見える。
💚「俺、たっつんと……ずっと一緒にいたいな。」
たっつんが、こちらを向いた。
少しだけ潤んだ、向日葵色の瞳。
俺は、目を逸らさなかった。
💚「昔、ここで約束したじゃん。」
💛「…………うん。」
💚「『ずっと一緒』って。」
💛「………覚えとったんや。」
💚「当たり前じゃん!」
俺は笑った。
💚「俺はあの約束、今でも覚えてるよ。」
💛「…………。」
たっつんは、少しだけ目を伏せた。
それから。
静かな声だった。
💛「ずっと一緒やで。」
胸の奥が、ドキッとなった。
俺たちを繋ぐ『合言葉』
あの頃と同じ言葉。
あの頃と同じ場所。
あの頃と同じ約束。
なのに。
今は、あの頃とは少し違う。
昔は、ずっと一緒にいられることが当たり前だと思っていた。
でも、今は知っている。
人は変わる。
環境も変わる。
いつか、今までと同じようにはいかなくなる日だって来る。
それでも。
変わった先の未来でも、もう一度、隣にいることを選べるのなら。
それはきっと。
昔の約束を、ただ覚えていることよりも。
ずっと、強いことなんじゃないだろうか。
だから俺は、選びたい。
💚「……ずっと一緒だよ。」
💛「……おう。」
俺たちは、もう一度、約束した。
小さい頃と同じ場所で。
小さい頃とは違う俺たちで。
これから、どんな未来が待っているのかは分からない。
別々の友達ができるかもしれない。
違うことに夢中になるかもしれない。
離れ離れになってしまうかもしれない。
今まで知らなかった世界を、たくさん見ることになるかもしれない。
それでも。
俺は、君と一緒に歩いていきたい。
……いや。
きっと、大丈夫。
だって、俺たちは。
何度だって、約束できるから。
💚「……ねえ、たっつん!」
💛「なんや?」
💚「明日も、一緒に学校行こうね!」
💛「……はぁ?」
たっつんはそう言いつつも、どこか嬉しそうな顔をしている。
💚「えっ、なんで!?いいじゃん!!」
💛「いや、毎日一緒に行っとるやろ!!」
💚「だからだよ!」
💛「意味分からんわ!!」
💚「えへへ!」
たっつんは、呆れたように笑った。
でも。
💛「……まあ、ええけど。」
💚「やった!」
俺は、たっつんの手を取った。
今度は、俺から。
たっつんは一瞬だけ目を見開いて。
それから、いつものようにぎゅっと握り返してくれた。
――昔からずっと、俺は君に手を引いてもらった。
でも今度は、俺が誰かの手を引いてみた。
今。
俺たちは、並んで歩いている。
ひとりでも、歩ける。
でもやっぱり。
君と一緒なら、もっと遠くまで行ける気がする。
まだ見たことのない景色へ。
まだ知らない未来へ。
空の先だって、越えていける気がするんだ。
無駄に見えた悩みさえも羽にして。
だから。
これからも、何度だって。
何度でも。
―― 一緒に、踏み出そう。
俺たちは、夕焼けに滲む公園を後にした。
繋いだ手は、離さないまま。
その先に待つ、新しい色鮮やかな未来へ向かって。
俺たちは踏み出す。
【12月上旬】
ここまで読んでくださりありがとうございます!
今回の曲はDa-Choでした!
一応「砂漠の王子様」の内容も入れてみました!
あなたはちゃんとあなた自身で『あなただけのストーリー』を『選択』できていますか?
次回からはついに冬休みです!このお話もそろそろ終盤に近づいてますね。
次回 第39話 ?? ♡100↑
コメント
3件
最高でした!ダチョウまた聴きたくなった、、、見よう!今日はコメント短いけどまたコメントします!面白かったので次も頑張ってください!一生ついていきます( ̄ー ̄)bグッ!
第38話、読み終わりました…。 ヒロくんが「小学校の先生になりたい」って口に出せたの、本当に大きな一歩だと思いました。たっつんが言った「最後の決定は君にしかできない」っていう言葉、心に刺さりました。 そして最後のじゃぱぱとたっつんの「ずっと一緒」の約束…子供の頃と同じ場所で、でも違う自分たちで交わすからこそ、すごく重くて深くて。胸がぎゅっとなりました。 繋いだ手を離さないで歩いていくその先が、どうか幸せでありますようにって祈りたくなる回でした🌙