テラーノベル
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いつもよりも早くスタジオに到着してしまったぼくは、(誰かもう来てるかな…)と思いながら、ドアの透明な小窓から中を覗き込んだ。
すると、ソファーに腰掛けていた涼ちゃんの口がパクパクと動いているのが目に入った。
涼ちゃんの他にも誰か居るのかと、キョロキョロ目を凝らすけれど、涼ちゃん以外の姿はないーー
そこでぼくは、最近酷くなり始めている涼ちゃんの“ひとりごと”だとピンときた。
スタジオの中は防音になっていて、外からでは何を言っているのか分からない。
ずっとパクパクと動いているその口が、一体何を言っているのか気になったぼくは、音を立てないようにして、そっとスタジオのドアを少しだけ開け、その隙間に耳を寄せた。
「ねぇ、どう思う?」
「う~ん、分かんないよ。」
「元貴…好きな人とか居るのかな…?」
「居ないと…いいよね。」
「…うん。」
「でもさ、居ないとしても意味ないよ…どうせぼくなんて…。」
涼ちゃんの思わぬひとりごとに、胸がどくんと高鳴った。
ぼくは少し悩んだ末、ズボンのポケットからスマホを取り出した。
そして、震える指をゆっくりと動かして文字を打ち込んでいく。
スマホをタップする度に、ぼくの心臓の鼓動はバクバクと早くなる。
14文字。
やっとの思いで打ち終えると、すぅっと深く息を吸い、送信ボタンを押した。
ピロンッ♪
すぐに中から受信音が響く。
ぼくはドアを開けたまま、その横で小さくしゃがみ込んだ。
涼ちゃんがすぐに見るかは分からない。
胸の奥をぎゅっと抑え、目をきつくつぶる。
……数秒後、中でガタガタッと音がした。
パタパタと足音が近づいてくる。
バンッ!
勢いよくドアが開き、涼ちゃんが飛び出してきた。
「…へぁ?!も、元貴?!」
まさかぼくがしゃがんでると思ってなかったようで、キョロキョロと左右を見回した後に、足元で小さくなっているぼくを見つけて、涼ちゃんは目を丸くした。
「…涼ちゃん。」
涼ちゃんの手に握られていたスマホ画面が視界に入る。
スマホの画面には、ぼくの送ったメッセージが表示されていた。
「…あの、メッセージ…これって…本当…?」
涼ちゃんの問いかけに、ぼくは無言で首を縦に振った。
「え、え…あ…..どうしよぉっ…」
頷くぼくを見て、涼ちゃんは慌てた様子を見せ、握っていたスマホの画面をタップし始めた。
指の動きが止まったあと直ぐ、今度はぼくのスマホがピロンッと鳴った。
画面の上に小さく表示されたメッセージをぼくは思わずスクショした。
「目の前に居るんだから、口で言えばいいのに。」
ぼくがそう言って、ふふっと笑うと、涼ちゃんは『あっ、そうだよね』と焦った顔で返した。
「…ぼくが好きなのは涼ちゃんだよ?」
ぼくが小さい声でそう呟くと、涼ちゃんもぼくの前にしゃがみ込み、恥ずかしいのか顔を赤くし、膝の上に置いた腕で少し顔を隠すようにして、小さい声で呟いた。
「僕も、元貴の事が好き。」
-fin-
コメント
3件
かわいぃ 溶けます🫠
(⸝⸝⸝ᵒ̴̶̷ - ᵒ̴̶̷⸝⸝⸝)キュン