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つい舌打ちをしてしまい何を思ったのか、また素振りや走り込みを始めた。
強くなりたい
そんな思いから毎日欠かさずに続けた。
続けて気づけば14歳だったというのに15際になっていた。
前の記憶があるからなのか、沖田はそれからメキメキと成長して前とほぼ変わらない、なんなら今の方が強いとも言えるようになった。
「もっと…強くならなきゃダメなんでィ…」
沖田がそこまで強さに貪欲ではなかった。
近藤、ミツバを守るために強くなっただけだった。
今沖田が強くなろうと必死になっているのは、知っているからだ。
沖田では敵わない相手と戦ったことがあるからだ。
オレンジ色のような髪の毛を三つ編みで結んだ男
亜麻色で桂のような長い髪をした男
銀髪で木刀をいつも腰に指している男
オレンジ色のような髪で酢昆布好きな女
いや、酢昆布好きな女に関しては同程度の強さだったか。
他にも敵わないやつなんて沢山いる。
沖田は近藤を守るために前勝てなかった奴らに勝てるほどの強さが必要という訳だ。
そんなことを考えている間にも時間は流れ辺りはすっかり暗くなっていた。
だが沖田は生憎ここがどこだか分からない。
宛もなくただただずっと森の中を歩くだけになっていた。
「森から出れねぇ…」
どうしたものか、参ってしまった沖田の耳に近藤の声が入ってきた。
「総悟ー!どこだー!!」
ミツバが帰ってきてないと行ったのだろうか。
必死に探しているようだ。
近藤の声のお陰で沖田はスラスラと進んで行った。
この時の沖田は近藤とここに居る気にはなれなかった
「すいやせん、近藤さん」
「少し道に迷ってしまったんでさぁ」
「総悟!心配したんだぞ、怪我はないか!?」
「ないです。じゃあ近藤さん、また明日道場で」
「…ああ、また明日」
そんな言葉を交わして沖田はミツバの待つ家へと歩みを進めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「うおおおおお!!!!」
誰かの雄叫びに合わせてまたどこからか刀を交える音がする。
夢か?夢じゃない、否、夢だ。
これは沖田がタイムスリップする直前の夢だ。
それがわかった沖田は暗闇に身を任せ、夢を見ることにした。
銃声が鳴り響く。隊士達が倒れていく。
沖田はそんなこと気にしている暇はない。
誰よりも早く攘夷志士に近づき、誰よりも早く切る。
そんな繰り返しをしているうちに攘夷志士の1人が銃を構えた。
気にせず切ってしまおう、と思ったがその目線の先にいたのは
近藤だった。
こちらに気づいていない近藤は攘夷志士との戦闘中で苦戦を強いられている。
そんな近藤が銃に気づく訳もなく、そのまま攘夷志士は無慈悲にも引き金を引いた。
「近藤さん!!」
それに気づいていた沖田は近藤を庇う形で思い切り近藤を押した。
それにより沖田は右の脇腹に穴が空いてしまった。
やっとの思いで近藤は攘夷志士を片付け、すぐに沖田へ駆け寄る。
「総悟!!」
「大丈夫か?今救急隊を…」
「いいでさぁ、もう俺は助からねぇ」
「俺じゃなくて、そこらに転がってる隊士達助けてやれィ」
「でも!」
「近藤さん、わかってくだせェ」
「俺みたいな、もう助からねぇ様なやつより、これから未来ある、助かるやつらを生かす、これが、一番の最適解って、わかっ、て、ますよね、」
「だが…」
「いい加減、腹、括ってくだせぇ、俺を、見捨てろ」
「っ!」
「すまん、総悟!!」
近藤は泣きながら他の隊士の様子を確認し始めた。
視界の端で隊士達が運ばれていくのが見える、ただ、沖田はそのなかには居なかった。運ばれなかった。否、運べなかったのだ。
沖田の他に生きている隊士達を救急隊に任せたあと、近藤は直ぐに沖田のもとへ走った。だが、間に合わなかった。沖田が見えたその瞬間に目の前で爆発が起こった。近藤が最後に見た沖田の顔は、安らかに眠るように、でも、近藤へ密やかに笑いかけていた。
「近藤さん、俺が居なくても真選組をお願いします」
最期に沖田が発した言葉は、誰にも拾われずに夜の闇へ呑まれていった。