目が覚めるとそこはいつもの研究室だった。「あれ?私……」私が呟くと空烙さんが心配そうに駆け寄って来た。「大丈夫ですか?葵可さん」彼女は私の身体に触れる。その瞬間、私は恐怖を感じた。「嫌ぁっ!」私は思わず叫んでしまう。すると空烙さんは驚いた表情を見せた。そして少し悲しそうな顔をして言った。「ごめんなさい……でも……心配で……」
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その後、私は落ち着きを取り戻す為に深呼吸をする事にした。数回繰り返すうちに段々と落ち着いてきた様だ。「すいません……もう大丈夫ですから……」私が謝ると空烙さんは「気にしないで下さい」と言って微笑んだ。
その後私はいつも通り研究室で作業をした。今日は特に予定が無かったので一日研究に費やす事にしたのだ。作業が終わり外を見ると既に暗くなっていた。時計を見ると午後7時になっていた。「そろそろ帰ろうかな?」私は呟くと白衣を脱ぎ帰り支度を始める。そして部屋を出る前にふと窓の外を見る、するとそこには『先生』が立っていた……
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一方その頃、真紀は廃都を一人進んでいた。「一体何処にいるの……?」真紀は呟くと再び歩き出す。暫く歩くと廃ビルがある事に気付く。「ここは……確か葵可さんが連れて行かれた場所よね……」真紀はそう呟きながら中に入る。一階、二階と順に見回るが誰もいない様だ。「おかしいわね……」真紀は首を傾げる。するとその時、背後から声をかけられた。「おや?君は?」振り返るとそこには一人の女性が立っていた。彼女は白衣を着ていて眼鏡を掛けている為か知的な雰囲気を感じさせる人物だった。
「えっと……貴方は?」
真紀が問うと彼女は微笑んで言った。「私の名前は森谷 奏音と言います」彼女が名乗ると真紀は続けて言う。「私は警視庁捜査特別科の真紀といいます」すると今度は彼女の方から質問してきた。「それで、貴女は何故ここへ?」
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一方その頃……葵可は『先生』と共に歩いていた。彼は私の肩を抱くようにして歩いている為とても歩きづらい状態だ。暫く歩くと小さな公園に出たのでそこで休む事にしたようだ。ベンチに腰掛けると『先生』はポケットから注射器を取り出した。
「さぁ、葵可くんこれを飲みたまえ」彼はそう言うと私にそれを差し出してくる。私は躊躇ったが意を決してそれを受け取った。そして恐る恐る口に含むと一気に飲み干す。するとすぐに身体に変化が現れた。身体が熱くなり心臓がバクバクと脈打っているのが分かる。まるで全身が心臓になったかの様な感覚だ……やがてそれは収まり始めた頃、今度は急に眠気に襲われた。瞼を開けていられずそのまま目を閉じてしまう……
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一方その頃、真紀は奏音から話を聞いていた。彼女はこの廃都で医者をしているらしく、最近この辺りでは行方不明者が続出している為調査しているそうだ。「それで……貴女はその『先生』という人を疑っていると?」私が聞くと彼女は答える。
「はい、そうです」
「でも、どうしてその人が犯人だと分かったんですか?」私は疑問に思った事を聞いてみた。すると彼女は少し困った様な顔をして言った。「実は……私の知り合いが行方不明になっているんです……」
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そして真紀は奏音と共に行動することにした。理由は二つある。一つは彼女を一人にしない為だ、もし彼女が犯人だとしたら一人で行動するのは危険だと考えたからだ。二つ目は彼女の話が気になったからである。彼女は以前、行方不明になった知り合いを探そうとこの廃都に来たらしいのだが結局見つからず途方に暮れていたそうだ。そこで真紀と出会い今に至るという訳だ。
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そして真紀達は廃都を歩き回る。暫く歩くと大きなビルの前に出た。「ここは?」私が問うと奏音は答える。「ここは以前、製薬会社があった場所です」彼女はそう言うと中に入って行く。その後に続き私も入る事にした……
***中に入るとそこは荒れ果てており床や壁に穴が空いていたり天井が崩れていたりと酷い有様だった。「これは……」私は思わず呟く。すると奏音が説明してくれた。「実はこの会社は倒産してしまいその後に不良達の溜まり場になってしまったんです」彼女はそう言うと奥へと進んで行った。私もそれに続く事にした……
***暫く進むと広い空間に出た。そこには沢山の不良達が屯していた、中には女性もいる様だが皆一様に目つきが悪くまるで獣の様な雰囲気を醸し出している。「ここは……」私が呟くと奏音が説明してくれた。「ここは不良達の溜まり場でしてね、ここでたむろっているんですよ」彼女が言うと一人の女性がこちらに近づいてきた。「あら?珍しいお客さんが来たわね?」その女性は背が高くモデルの様な体型をしている。彼女は不良のリーダー的存在らしく、いつもこの場所にいるそうだ。「こんにちは、藤峰さん」奏音が挨拶をすると藤峰さんは笑顔で返す。「ええ、久しぶりね?今日は何の用かしら?」藤峰さんが聞くと奏音は答える。「いえ……少しお話がしたいと思いまして……」
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一方その頃、真紀は奏音と共に行動していた。そしてある場所に来ていた。そこは廃ビルの地下にある一室だった……
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扉を開けるとそこには大きな空間が広がっている。中には机と椅子、そしてベッドがあるだけの簡素な部屋だ。「ここは?」真紀が聞くと奏音が答える。
「ここは私の研究室です」そう言うと彼女は机の上に置いてあるパソコンを操作し始めた。暫くすると画面上に映像が表示される。それはこの廃都の地図だった。そしてそこには赤い点が沢山付いている……
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一方その頃、葵可は目を覚ました。辺りを見回すと見覚えの無い場所である事に気付く。そこは薄暗い部屋で窓一つ無い。そして自分が手足を縛られている事に気付く。「あれ……?私……」私が呟くと部屋のドアが開き誰か入って来た…『先生』だ。
彼は笑顔を浮かべながら言う。「おはよう、葵可くん」私は咄嗟に叫ぼうとしたが口に何かを詰め込まれていて上手く喋れない……「君には邪魔者を消してもらおうと思ってね…」そう言うと彼は拳銃を取り出した。「さ、葵可くん邪魔者を消そうか!」『先生』は不気味な笑みを貼り付けて私の手に拳銃を握らせる。そして首筋に注射器を突き立てる……私はそのまま意識を失った。
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一方その頃、真紀達は地下室に向かっていた。すると突然銃声が鳴り響く。「今の音は!?」奏音が叫ぶと真紀は答える。「分かりません!急ぎましょう!」そして二人は走り出す……
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「良い子だ。葵可くん。優秀だぁ君は」『先生』は私を操って真紀さん達の方へ歩かせる……そして地下室についた時、そこでは拳銃を持った真紀さんが立っていた。「くっ!まさか『先生』が犯人だったなんて……」奏音は悔しそうに呟く。「さぁ、葵可くん。後は任せたよ」そう言って先生は消えた……私はゆっくりと歩き始める。「……え?」奏音が驚いていると私は彼女に向けて発砲した。彼女は慌てて避けるとそのまま逃げ出した。私はその後を追いかける……「ちょっと!?どういう事!?」奏音さんが叫ぶが無視する。今はただ目の前の敵を倒すだけだ……私はひたすら撃つ。弾は次々と当たっていく。それでも奏音さんは逃げ続ける……やがて彼女は壁にぶつかり倒れてしまった。
「……なんで?なんでこんな事に……」私は近づきながら言った。すると奏音さんは「葵可くん、貴方本当は『先生』に洗脳されていたんでしょう?」と言った。「うんっ…!助け…て」私は拳銃の銃口を奏音さんの頭に向けた。「嫌……私まだ死にたくない……」彼女は恐怖で震えている様だ……
***そして真紀は地下室にたどり着いた。そこには血を流し倒れている奏音の姿があった。そしてそれを見下ろすように葵可が立っていた。「先生……?」私が問いかけると彼は振り返る事無く言った。そしてそのまま立ち去っていく……***
「ふぅ……危なかったですね」真紀が言うと奏音は「全くですよ……死んだふりの講習受けといて良かったわ」と疲れた様に言った。そして私は質問する事にした。「あの、さっきの人は誰なんですか?」私が聞くと彼女は答える。
「……彼は私の知り合いです。名前は知りませんけど……」
そう答えた彼女の表情はどこか悲しげだった……
***
その後、私は奏音さんと別れ帰路についた。今日は色々な事があって疲れてしまった様だ……早く家に帰ろうと思い早足で歩くが途中で立ち止まる。「あれ?ここどこだろう……?」私は辺りを見回すとそこは知らない場所だった事に気付く。どうやら迷子になってしまったらしい……どうしようと思っていると突然後ろから声をかけられた。振り返るとそこには一人の男性がいた……
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HEY、暇なら話そ