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第9話:嬉しい報告
涼架side
夏祭りの誘いが失敗に終わってから、私はずっと落ち着かない日々を過ごしていた。
若井くんの「なんで?」という言葉が、まるで呪文のように頭の中で繰り返される。
綾華が「私に任せて」と言ってくれたけど、本当に若井くんが来てくれるのか不安で仕方なかった。
そんな私のスマホに、綾華から立て続けにメッセージが来た。「今すぐ会えない?」「超緊急!!!」私は慌てて、学校の近くの公園へと向かった。
公園に着くと、綾華は息を切らしながら走ってきた。
その顔は、まるで太陽のように明るい笑顔で満たされている。
「涼架!聞いたよ!全部」
綾華はいきなり私の腕を掴んだ。その熱量に、私は圧倒される。
「え、何を…?何が全部なの?」
「だなら、夏祭りのことだよ!作戦、大成功だよ!」
綾華の言葉に、私の心臓が激しく脈打つのを感じた。成功…?まさか。
「嘘…若井くんが、来てくれるって…?」
「そう!元貴くんが若井くんをカフェに呼び出して、もう徹底的に説教してくれたんだって!」
綾華は興奮した様子で、身振り手振りを交えながら話す。
「元貴くんがさ、『お前いつまでそんな不器用な態度取るつもりだ』って言ったら、若井くん、もう何も言い返せなかったらしいの!それで、『俺と綾華、お前と涼架の四人で行くぞ』って誘ったら、『行く』って言ってくれたんだって」
私は、綾華の話を聞いて、あまりの出来事に言葉を失った。若井くんが、あの不器用な殻を破ろうとしてくれた。
「そっか、そうなんだ…綾華、私、本当に若井くんと夏祭り行けるの…どうしよう、嬉しすぎて泣きそう」
私の目頭が熱くなって、頬も赤く染まった。
「ありがとう、綾華…本当に、綾華のおかげだよ」
私がそう呟くと、綾華は私の頭を優しく撫でてくれた。
「いいの!いいの!涼架が、あの『狼』くんの隣で、鮮やかな『花』を咲かせてくれるなら、私はなんでもするよ!」
綾華は、そう言って私の手を力強く握った。
嬉しい報告から数日後、私は綾華と二人でデパートに来ていた。
四人での夏祭りが決定し、あとは当日を待つだけ。今日の目的は、勝負服、つまり浴衣を選ぶことだ。
「ねぇ、涼架!これ見てよ、これ!金魚柄!可愛くない?」
綾華は、鮮やかな赤と白が描かれた浴衣を体に当てて、鏡の前でくるくる回っている。
綾華の明るい雰囲気には、原色がよく似合う。
「うん、綾華にすごく似合ってる。元気いっぱいよ綾華らしいね」
私がそう言うと、綾華は満足げに笑った。
「で、涼架はどれにするの?涼架ってさ、いつも涼しげな色が多いけど、今日はちょっと挑戦してみたら?」
綾華は、私の普段の服装を「白熊みたい」と表現する。たしかに、青や白、薄い緑など、落ち着いた色を選びがちだ。
でも、今日は少し違う。若井くんに、私の中の「熱」を届けたい。
私はラックの中から、淡いクリーム色を基調とした、大胆な赤い花柄が描かれた浴衣を取り出した。
その花は、まるで自分の殻を破って咲き誇ろうとしているようだ。
「私は、これにしようかな」
私が浴衣を体に当てて鏡を見ると、綾華が目を丸くした。
「うわ!涼架!めっちゃいいじゃん、それ!今まで見たことない柄だよ!」
「そうかな…?ちょっと派手すぎるかな」
「全然!そのね、ベースの淡い色が涼架の優しい雰囲気によく合ってる。でも、その赤い花が、涼架の秘めてる熱意を表してるみたいで、すごく素敵だよ!」
綾華の言葉に、私は鏡の中の自分を改めて見つめた。そうだ、この赤い花は、若井くんへの私の想いの色だ。
「うん。私、この浴衣にする」
レジに向かう途中、綾華がふと真面目な顔になって尋ねてきた。
「ねえ、涼架。若井くんのこと、本当に好きなんだね」
「…うん」
私は、ためらいもなく頷いた。彼の不器用さも彼の奏でる音楽も全て私にとってかけがえのないものになっていた。
私は、手に持った花柄の浴衣を見つめた。この浴衣は、私の勇気の象徴だ。
次回予告
[祭りの夜に、花が咲く]
next→❤︎500
遅くなってしまいました……😢
なぜか保存がされてなくて時間かかりました、
今日はクリスマスイブですね、素敵なイブを🎄🎁❄️
コメント
4件
夏祭り楽しみです!素敵なクリスマスイヴをお過ごしください!
続き楽しみです!