刹那、 空気が変わった。
僕の手が、
先輩の桜色の振袖が、
さっきまで先輩しか見てなかった僕の目が、
そして先輩のうなじが、
右往左往にゆれた。
きっとからっ風のせいだろう。
僕は嘘を嘘で包み隠した。
自分を守るかのように、
先輩は右往左往に揺れている僕の目をまっすぐ見た。
そして、
「ごめんなさい」
ああ、振られたのか。
振られることは目に見えていたことだった。
だけど、
今までの先輩への愛が、
僕の3年間の片思いが、
そして僕の存在が、
否定された気がした。
きっと僕だって、少し希望をもっていたのかもしれない。
いや、少なからず持っていた。
けれど、
振られた僕に追い討ちをかけるかのように。 先輩は小走りでその場をはなれた。
後ろ姿、
うなじが揺れてる先輩
桜色に染った振袖を着た先輩
僕は皮肉でも
綺麗だ。
そうおもってしまった。
その場にはからっ風が吹いている。
そんなのどうでもいい。
もうなにもしたくない。
僕の心は完全に折れた。
コメント
0件