特に何も思わずに生きていた。
ただ、本能的に自分は食べた物に擬態出来る事を知っていた。
でも、特に気にする事はなかった。
それからは暇だったからキラキラしたものが好きだから集めてた。
二足歩行の布を纏う生物によく襲われた。
そいつ等はキラキラを沢山持ってるから殺さずにキラキラだけとるようにした。
ある日、二足歩行の生物の死体を見つけた。
なんとなく食べてみた。
歩くのに苦労した。
喋るのに苦労した。
言葉を学ぶのに苦労した。
でも、頑張った。
そしたら二足歩行の生物は人間ということも知った。
そしたらキラキラの正体も知れた。
キラキラは鉄の剣や金貨、銀貨、宝石だったらしい。
これはとっちゃいけないモノだと知ったから落し物だと言ってぎるどとやらに引き渡した。
それからは人間に紛れて生きた。
ひとつの身体を使っているとバケモノとして殺される事を学んでいろんな人間を食べて化けた。
暫くして自分がミミッキュという魔物だと知った。
ミミッキュは食べた物に化ける能力なんて持ってないので困惑したが、冒険者とやらに聞いたら恐らくミュータントモンスター(突然変異型魔物)という、本来の種を基盤として一部、又は全体的に力が強くなっていたり、特殊なスキルを所有している、又はその両方を持ち合わせたモンスターの事……らしい。
そんな事を知ってから100年ほどは旅をした。
一種の暇つぶしだった。
そんな時、ある人間と出会った。
その人間は不老不死らしい。
もう生きるのに飽きたと言っていた。
だから『自分を食べてくれ』とそいつは頼んで来た。
そんな事を言われたのは初めてだったのでその人間に興味が湧いた。
人間の名前はヴァルト・グリスというらしい。
そのままその人間、ヴァルトは自分の名前を聞いてきた。
「名前なんてない」
と答えるとヴァルトは
「なら自分が名前を付けてあげよう、その代わりと言ってはなんだが私を食べてはくれないか?」
と言ってきた。
名前があるのは便利なので頷くと嬉しそうに彼は名前を考え始めた。
そして、自分の名前が告げられた。
そしてこの時に自分、ノウラトクース・グリスは生まれた。
ノウラトクースとはある花の1輪の変異種に付けられた名前らしくその花は周りの景色に同化する、希少な植物の一種らしい。
同化するという点が自分の真似と似ているから、とこれを名前にしたらしい。
そして約束どうり自分は、彼を食べた。
何故か苦しいような、辛いような、胸の何かを残して。
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