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第4話:思わぬ協力者
涼架side
夏祭りに誘う。
その言葉が、私の頭の中をぐるぐると回っていた。
勇気を出したい、でも、もし素っ気なく断られたら…若井くんのクールな表情を思い浮かべると、私の足は一歩も前にでなかった。
「もう、無理だよ、綾華。やっぱり私にはできない。いきなり夏祭りに誘うなんて、図々しいよね?」
私がそう言うと、綾華は呆れたようにため息をついた。
「涼架ってば、本当に。大丈夫だって!それに、私には秘密兵器があるんだから」
「秘密兵器?」
「実はね、私、若井くんの唯一のお友達と知り合いなのよ」
綾華の言葉に、私は驚愕した。
「え……?若井くんのお友達って…あの、軽音部のボーカルの?」
「そう!大森元貴くん!私、クラスが一緒で結構話すんだよ。元貴くんって、見た目はちょっと不思議だけど、話すとすごく面白くて、面倒見がいいんだ」
若井くんの隣にいつもいる、あの華やかなオーラを放つ人。彼が若井くんの唯一の友人?
「この前たまたま、元貴くんに若井くんの話してみたんだ。『若井くんって、なんかクールだよね』って。そしたらさ、『あいつは一見クールに見えるけど、めちゃくちゃ不器用なだけだから!友達、俺しかいないんだぜ、かわいそうだろ!」って、心配してたの」
綾華の言葉に、私は胸が締め付けられるような気がした。
若井くんは、私と同じように不器用で、それをクールさで隠しているだけかもしれない。
「それでね、元貴くんに、若井くんが今どこに居るか、聞いてみたんだ」
「えっ、どうしてそんなこと…!」
「決まってるじゃん!涼架に夏祭りに誘わせるためだよ!会わなきゃ始まらないでしょ?」
私が慌てて止めようとする間もなく、綾華は続けた。
「元貴くんが教えてくれたんだけど、若井くん、今、駅前の楽器店でバイトしてるんだって!やっぱりね、楽器店!」
私は、綾華の行動力に、ただただ圧倒されるばかりだった。
「だからさ、涼架!今から行こうよ、その楽器店に!」
「え、今から⁉︎無理だよ、無理!バイト先なんて、プライベートな時間に押し掛けるみたいで…」
「迷惑なわけないって!元貴くんがさ『若井を助けてやってくれ!』って言ってたんだよ!涼架のこと話してないけど、私の友達が若井くんのこと気にかけてるって言ったら、めちゃくちゃ喜んでたから!」
綾華は、私の手を強く握った。
その手から伝わる温かさと、まっすぐな気持ちに、私の心に少しずつ勇気が湧いてくる。
「…分かった。行く。頑張る…」
綾華は、満面の笑みを浮かべて私を立ち上がらせた。
「よし!行くよ、涼架!『狼』に『白熊』から会いに行くって、なんかかっこよくない?」
私は、綾華の言葉に少しだけ微笑んだ。
この夏、自分は、あの「狼」のような彼に、勇気を出して近づき、そして「花」を咲かせるだろうか。
ドキドキ高鳴る鼓動を、そっと胸に押し込めながら、私は綾華と一緒に、駅前の楽器店へ向かった。
次回予告
[不器用な「狼」]
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コメント
3件
お互い不器用なの可愛すぎるw
やばい!?最高… 綾華ちゃんナイスすぎるよ〜!