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2025年6月28日。ゼコウ率いるホニャイヤダとモパンは共同で幸太達を助けるために行動を開始した。しかし彼らが何処に連れ去られたのか全く手掛かりも掴めずに6日間が経過した。


「一体どこに幸太君達は何処にいるんだ!全く居場所すら掴めないとは!」


「ゼコウ、焦るな。焦ったところで何も進展はない」


「ですがアルパさん……」


「そうだよ!彼には僕の作った通信機が付いてるんだ。もしもの時はそれで場所を特定すればいいんだよ」


「今使ったらだめなんですか!?」


「うん……。前にも説明したけど、もし通信機に位置を発信させてフミネ達にばれたら幸太君に何をされるのかわからないんだ。だからあれを使うのは突入前だけだよ。まずは落ち着いて場所を探ろ?」


「そうですよね……。すみません、何度も……」


「気にするなゼコウ。お前の気持ちはよくわかる。だからこそ冷静であれ……」


「イゴエさん……。ありがとうございます」


「相手に繋がる何かさえ見つかれば突破口を開けるのだがな……。フミネは最後に何か話してなかったか?」


「最後に会った時ですか……。笑顔で蟻同然だけどいい仕事をしたわねと罵られましたね……」


「笑顔?」


「はい、笑顔です。それもわざわざフミネの顔にしてですね……。あれはかなりしんどかったですね……」


「なに、ちょっと待てよ……。もしかするとそれはフミネからのメッセージかもしれないな……」


アルパはいきなり腕を組んで考え出す。


「そんな、罵声にどんなメッセージがあるんですか……」


「罵声がと言うより、わざわざフミネの顔に戻して喋ったと言うところだ」


「え?」


「そうか!いや実はね、彼女は僕たちと同じ星の先輩でね昔はごっこ遊びをしてよく遊んでてさ~。その時によくやったのが泥棒が主役の物語でね。彼女はミフジってキャラクターをいつも演じてたんだ~」


「は、はい?」


「彼女の偽名はその物語のキャラクターのミフジから取ってると思うんだけど、そのキャラクターよく主人公たちを騙すんだよ!それで主人公たちが苦労して手に入れたお宝を持って行っちゃうんだ~」


「え~と、それがどういった?」


「その状況、君達が幸太君達を連れ去られた時とよく似てない?ミフジっていう人物がみんなを騙してお宝である幸太君達を連れ去るってさ~」


「た、たしかに……。!?……そうか……、その彼女が最後にフミネとしての顔でメッセージを伝えてきたってことは……」


「そう、それは彼女自身、ミフジっていう嘘つきじゃなくてフミネとしての本心が隠れているかもしれないってことだよね~!」


「その通りだ。ゼコウ、彼女は何と言っていたのだ」


「彼女は蟻同然だけどいい仕事をしたわね。でも今後僕らの居場所は地球上に存在しない。蟻は蟻らしく穴でも掘って震えてろって……」


「う、うわぁ……辛辣だね~。でもその言葉にはフミネとしてのメッセージが隠れているんだよ~!」


「はい!でも、どこに……。恐らく何かひねった意味があるはずですよね……」


「そのままだ……」


「な、なんですか?イゴエさん?」


「そのままじゃないのか?彼女は昔から単純な性格だ……」


「そうですか?」


「そうだよ~。子供の時に即興劇をしたら、ミフジの役の時はわかりやすい嘘しか吐けないし、あと名探偵役の時は簡単なトリックも見破れないんだよ~。だからこのメッセージもそのままだと思うよ!……単純だからこそ今すごく悩んでいるんだろうね……」


ジダイが少し悲しそうにつぶやいた。


「ジダイさん……。なら早く彼女も連れだして話を聞いてあげましょう!」


「そうだな、ゼコウ。……ジダイ、悩むよりも行動だ」


「うん!」


ジダイは少し元気を取り戻し明るく返した。


「……それじゃあ、フミネのメッセージ通りだと、ゼコウ達は蟻と同類で居場所は地球上には存在しないから穴掘って震えろってことだよね~」


「それだと、ただの罵倒ですよ……」


「考えるべきは居場所は地球上に存在しないと言うところだ……」


「あ、そっか~。ごめんゼコウ~」


「まぁ、いいですけど……」


「そのままで考えるとゼコウの居場所は地球上にはないと言う事だな……。それならば宇宙とかだろうか?」


「可能性はありますね……。でもそれだとなんだか引っ掛かります」


「どういうことだ?」


「だって、それならわざわざ蟻に例える必要はないですよね。それに穴掘って震えろって意味も……」


ゼコウはいきなりアルパに問いかける。


「アルパさん、貴方達の基地ってホニャ国のホニャデス山ですか?」


「なんだいきなり……。そうだが?」


「ほかに基地を持ってないですよね?」


「あ、あぁ」


「これは1つ地球で流れている都市伝説、いわゆる噂のような信ぴょう性の低い物なのですが、昔仕事の同僚が言ってたんです。地球の内部は実は空洞でそこに宇宙人の基地があると……そしてその入口は南極にあると言われているそうなんです……」


「え、それ僕らの昔話に似てるね?僕たちの祖先は2つの種族と壁の空の下で生活をしていた。けど、その時に争いが起きてみんなばらばらの場所に別れた。1つはその場所に残り、1つは壁の空の上に。そしてもう1つは壁の空より先の青き空にってね。その故郷の事を僕たちは青き故郷って言うんだよ~」


「あの、昔話か。確かにあれが本当なら青き故郷とは地球の事であり、その地球の内部には空洞の世界があるとなるな。だが信ぴょう性が無い」


「……アルパ。今地球の検索サイトで調べたら過去に、戦闘機で南極を調査中に緑豊かな土地を見たと言う証言をした軍人がいるらしい……。それに南極は上陸を厳しく制限されている土地だ。つまり隠れるにはもってこいかもしれない……」


「噂だとしても調べてみる価値はあると思うんです!それしか可能性がないから……」


ゼコウは熱く語る。


「そうだな……。今はそれにかけてみるしかないな!」


「ありがとうございます!」


「では、調査を始めるぞ!」


彼らは噂話に一縷の望みをかけて調査を始める……。



それから3日後、2025年7月1日。


セルグスクと話したあの日から、幸太は一度も部屋から出ていない。それは軟禁されているからではない。定期的にフミネが命令を受けて外に連れ出そうとしているが頑なに幸太が拒否していたからである。彼は部屋に備え付けられたトイレや浴室に向かう以外は、全てをベッドの上で過ごしていた。目を覚ませば時折誰かと話しているかのように誰もいない空間を見て幸太は呟く。そして気を失うかのように眠りにつく。


「ねぇ、君もそう思うでしょ?うん、死ぬことは素晴らしいことだと思うよ。でも、他に方法は無いのかなぁ?ないよ、死ぬことだけが唯一の方法さ。じゃあ死ぬしかないね。そうだよ、死ねばみんなが喜ぶよ。死ねば僕は世界を救えるんだ。なら、死ぬのがいいね。死ねば俺をみんな認めてくれるよね。そうだ、お前が死んだらみんなが喜ぶ。世界も救える。僕は本当に幸せになれるんだ。それって本当に幸せなのかな?幸せに決まっている。世界を救ってみんなが喜ぶんだぜ?それ以上の幸せがあるのかよ?僕はずっと人に迷惑をかけてきたよ。その罪を償わないと。それが自分の死で果たせるなんて嬉しいことだよ?そうだな、それは嬉しいことに決まっているな。みんなも僕の死を待っている。早く7月4日が来ないかなぁ。俺は英雄になれるんだ。早く死なせてほしいねぇ……」


その姿を見ていたフミネは戸惑っていた。これまでの自身の行動によって彼に非情な選択を選ばせようとしている事を、もしもの時は自らの手で撃たねばならない事を。そしてそれが本当に世界の存続に繋がるのかを。


今の幸太の追い込まれた姿は、全て自らの迷いと決断から逃げたせいだとわかっていながらどうしようも出来ず、ただただその姿を見ていた。


――私は世界の滅亡を防ぎたかった。ただそれだけだったのに、彼を殺す事しか救われる方法が無いなんて、そんなの……。私は未だに、決断から逃げているだけなのね。


彼女は小さな部屋の窓から見えない空を見つめる。


――ゼコウ、貴方のような強さが欲しかった……。


その時、部屋に声が鳴り響く。


「皆さん、窓側の壁から離れて下さ~い!」

「へ?」


「ん?」


幸太とフミネが外を見つめた瞬間、衝撃と轟音と共に目の前の壁が爆発した。


「えぇっぇぇ!」


2人は叫ぶ。飛び散る砂煙の中、光が差し込む。そこには何か巨大な人工物が壁に突き刺さっていた。そしてその人工物から足音がこちらに近づいてくる。


「待たせたな!二人とも、無事だったか?」


「無事なわけがあるかぁ!」


「壁をぶち破って突っ込んで来られて怪我がなかった事を感謝しろ!死んでたらどうすんの!ゼコウ!?」


「いやぁ、これが一番だってジダイさんが……」


そこにはゼコウが笑って立っていた。そして後ろから続々と足音が部屋に向かいだす。


「敵による妨害にはDSDを用いて行動不能にして構わん!健康被害は出ないからな!そしてもしもの時は隊員間での判断を最優先とする。速やかに橘陽翔君を探して救出せよ!」


「「了解!」」


ホニャイヤダ隊員達が雪崩のごとく建物中になだれ込む。

「さぁ、早くこっちに早く乗ってくれ!」


ゼコウから少し離れる幸太。


「ゼコウさん、貴方は悪い人だって、まどか先輩が……」


「え!?」


「ごめん、あの説明は嘘なの……。ゼコウは良い人よ……」


「えぇ……。で、でも……僕はここで死なないといけないんです……」


幸太は戸惑う。その瞬間、頭に衝撃が走る。


「死ぬだと!?ふざけんな!そんな大バカ者はこの鉄拳を食らわしてやるぞ?」


「もう、食らわしてるじゃないですか……」


「いいか、幸太君が何を思ってそう話したのかはわからない。だが、死んでいい人間なんているわけが無いんだ!だから俺は君を助けに来たんだ!」


「え……」


再び幸太の頭に衝撃が走る。だがそれはとても温かく優しい感じがした。


「だからさ、一緒に行こうぜ?」


「はい……」


幸太は微笑んでそう返した。


「ぜ、ゼコウ、私は……」


「フミネ。俺はお前の話が聞きたいんだ。何を思って何を信じて行動してきたのか。そして何に悩んで今そこにいるのかを……。だから一緒に行こうよ」


「でも私は裏切……」


「お前は俺の大事な仲間だ。これまでのお前を俺は信じている。だから行こう」


「ゼコウ、貴方は本当に変わらず優しいわね……」


「お前がいるからこそだがな」


そして2人は船に乗り込む。


「本隊長、橘君を連れてきましたぁ!幸太君も一緒と言ったらついて来てくれました!」


「久しぶりだね、橘君」


「はい……。幸太は一緒なんですよね?」


「あぁ、一緒だ。さぁ行こうか」


「はい……」



そして彼らは全員船に乗り込んだ。


「全員、救出完了!アルパさん、後は頼む!」


「え!?」


幸太達の声が船内に響く。


「久しぶりだな君達。ではこれより脱出する。ジダイ、コースを設定。イゴエ、粒子圧縮準備!」


「もう完了してるよ~」


「いつでもいける……」


「よし、発進せよ!」


そして彼らを乗せた船は宮殿を後にした。



半壊状態の宮殿の中、アドラーはセルグスクに報告する。

「只今、福永幸太、橘陽翔、フミネの3名が宮殿に突入した部隊によって連れ出されました」


「そうか……」


「如何いたしますか?」


「何もしなくて構わん」


「左様でございますか……」


セルグスクはただ彼らの向かった先を見つめた。


――これもオーラの導きか……。


世界の滅亡まで残り4日。


これにて第25話、おしまい。

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