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2025年7月1日。モパンの船の中、幸太、陽翔、ゼコウ、フミネ、アルパ、ジダイ、イゴエ、それぞれがそれぞれの思いを乗せてその場にいた。
お互いに言葉を発しにくい緊張の空気の中、ジダイがそれを壊す。
「と、ところで幸太君も陽翔君もフミネ先輩も無事でよかったねぇ~」
しかし誰も話すことなく、ぎこちなく笑うだけだった。
「あ、あれ?……」
「みんな、それぞれ話したいこともあるだろう。いったんそれぞれで別れて再びここでこれからの事を話し合おう。それでよいな?」
「はい……」
「わかったわ……」
そして皆がみんないったん別々の部屋に別れる。
「あれ……」
「ジダイ、空気を読むのだ……」
そしてイゴエに連れられてジダイは部屋に戻る。
ゼコウはフミネと一緒にいた。
「改めて、久しぶりだな、フミネ……」
「え、えぇ……」
「本当に無事でよかったよ……」
「え?どうして……」
ゼコウは笑う。
「いっただろ。俺はお前の事を信じたって。そりゃあミフジって名乗って幸太達を連れて行った時はかなりショックだったんだぜ……。でも信じてた。それまでもフミネは足りない俺の事を必死に支えてくれたし、組織としても協力してくれた。だからそんなフミネを俺は信じたかったんだ。でも、そんな信頼がフミネに相談させにくくさせたのかって今は思ってる。本当にごめん!」
ゼコウはフミネに頭を下げる。それにミフジも驚く。
「ちょっとやめてよゼコウ。裏切ったのは私の責任よ……。私こそごめんなさい……」
そしてミフジもゼコウに頭を下げた。
「そんな謝るなよ!ミフジはミフジの立場があっての行動だったんだろ?」
「えぇ……でも……」
「でも、今は違う。お前はもう1人じゃないんだ。だから教えてくれ、これまでのこと、そしてミフジが何に悩んでいたのか……」
「……そうね。私も話したい……。それじゃあ時系列順に話すわね。私は実は宇宙人なの」
「うん、やっぱりそうなんだ……」
「え、いつから知ってたの!?」
「え~と、核心は持ってなかったけど一緒にモパンとホニャ国大統領との密約を聞いた時から?その音声では大統領が宇宙の技術って言っただけなのに、もしかして宇宙人?って言ってたじゃん?きっかけはそれからかな。あとは一緒に行動していて日本が故郷って言ってたのにあんまり日本の事しらないなぁって……」
「私も、まだまだね……。それで私たちの星では宇宙の事を調べていたんだけど、ある時宇宙が段々と収縮している事に気付いたの。それを調べていくと私たちの星から遥か遠い場所にある地球を中心に収縮しているって事が分かってね。上層部は伝承で語り継がれてきた世界の滅亡の予兆として地球に私を派遣したの。そこで地球を管轄している世界政府って人達に掛け合ううちに段々とその裏にいるウロボロスっていう本当の地球の支配者たちと出会ったの」
「そこで、彼らの組織に入ったのか……」
「えぇ、彼らも世界の滅亡の異変に気付いていて志は同じだと思って一緒に行動したわ。その時に私の同胞であるモパンがやって来たの。ウロボロスは彼らの技術は世界の滅亡を防ぐカギになるかもって私はその交渉を始めたの。でも、彼らはホニャ国だけでしか活動しない。ホニャ国も知らぬ存ぜぬで交渉させてもらえない。そんな時に貴方ゼコウが彼らに不信感を持って動き出したわよね。私はそれをチャンスだと思ったの。モパンの邪魔をする団体があれば、彼らが苦戦すればするほどホニャ国自体が揺れてそこに交渉の余地が生まれると思ったから……」
「でも、フミネの行動は間違いなく俺たちと同じだと思ったよ?」
「ありがとう。そう、最初は利用するためだったけど貴方のそばで行動するうちに私も本気でホニャイヤダとして行動していたわ。でもあの複合災害の時本来の仕事が始まってしまったの」
「幸太のデータを見た時だね」
「えぇ、会社で福永君がオーラの力で暴走した時に違和感を感じていたけど、その後にモパンの船に乗り込んでデータを見た時に確信したの。これはウロボロスで聞いていたオーラだって。私はそれを報告しなければいけなかったの、世界を守るためにね。でも知らなかった、世界滅亡の原因が幸太で彼を殺せばそれを防げるなんて。そして未来に起きる滅亡を防ぐために陽翔を使って世界を完全に支配するなんて……。私はそこで迷ってしまったの。世界の滅亡の為に福永君を殺すべきなのか、そして未来の滅亡を防ぐために陽翔君を使ってオーラで完全支配をするべきなのかって。それは私の故郷の人々と同じになってしまうんじゃないかって……」
「そうだね……」
「そして貴方達が福永君達を保護しようとしていた時にウロボロスからは、今後支配の邪魔になる可能性があるからモパンも貴方達も排除命令が出ていたんだけどね……」
「でも、出来なかったんだよね。自分の行動に迷いがあるから」
「えぇ……。そして自分で決められないから貴方達を殺さずに、情報を渡して私が間違っていたら止めてもらえるようにしたの……。結局自分で決められなかったから、流されて利用されて利用して貴方達を傷つけてしまったわ……。だから私は本当はここにいるべきではないのよ……」
「ありがとう」
「え?でも私は……」
「これまで悩んで間違いを犯したと思ったから、最後にこうして話してくれたんだよね。話してくれてありがとう。だから次はこれからどうするかだよ。モパン達も俺たちも間違ってしまう事はある。その過去は変えられないんだ。だからこそ罪と向き合う事、自分と向き合う事、その、これからどうするかが大切なんだよ。今俺たちに必要なのは一緒に世界も幸太君達も救う方法を見つける事だよ。だから、これからも一緒に頑張っていこうよ。フミネ、君の力が僕たちには必要なんだ!」
「ゼコウ……。そうね、私はもう迷わないわ。これからでみんなの役に立って見せるわ!」
「あのぉ~、そろそろいいかなぁ~」
「「ひゃぁ!」」
後ろを見ると、ジダイがドアの隙間からこちらを見ていた。
「ジダイさん!何やってんですか!」
「いやぁ~」
「ジダイ、いい雰囲気を壊すな……」
「うわぁ、じゃ、後でこっちに来てねぇ~」
イゴエがジダイを引っ張り出した。
「いい後輩さんですね……」
「えぇ……。あの感じ全く昔から変わらないのね……」
「……それじゃあ、行きますか!」
「えぇ行きましょう!」
そして2人は部屋を後にした。
そしてみんなの前でそれぞれが知っている情報を共有しあう。
「これが私の知っている情報よ」
「なるほど、つまり7月5日までに何とかしないと世界は滅亡するわけか……」
「やっぱり、俺は……」
「幸太君!大丈夫だ!君を絶対に救って見せる!みんなその気持ちでここにいるんだ。だからみんなを信じて一緒に考えよう!」
「そうだよ!幸太が死んだら僕、悲しいよ!」
「俺たちもだな」
「もちろ~ん!」
「間違いない……」
「私もよ、福永君!」
「もちろん俺もだ。お前らもそうだよなぁ!」
「「もちろぉぉぉぉん!」」
野太い合唱が船内に響く。
「だってよ!だから死ぬべきなんて言うな!一緒に未来を生きようぜ!」
「みんな……。はい!」
そして対策会議が始まる。
「よし!物理的にヨロパの技術で防げないのか?」
「厳しいわね。地球上の異常気象は止められるかもしれないけど、7月5日に発生すると思われるビッククランチ、宇宙の収縮は止める方法が無いわ」
「うん、僕たちには宇宙の事はコントロールできないね。それも全宇宙規模になると想定も出来ないね」
「となると、科学技術方面では解決策は見いだせないな……」
「そもそも、今までオーラってどんな感じで世界をリセットしたり始めたりしてたんだろうね?」
「確かにそれが分かれば7月5日の現象を止められるかもしれない」
「でしょ!誰か憑依することでその人の願いを叶えてるんでしょ?それならリセットの時に誰かについてないとおかしいんじゃない?」
「以前、セルグスクはこれまでの滅亡の時はその滅亡の数年前からオーラが誰にも憑依しなくなってその後に滅亡したって言っていたから、単体でも力は行使できるのかもしれないわ」
「なるほど……」
「それなら、幸太君自身は願えないけど、オーラには力があるから願いを叶えられるってことだよね?」
「確かに!なら本来の選ばれし者の陽翔君が願いを叶えてもらえたら……」
「まて、オーラには滅亡を防ぐ願いをすれば代償で滅亡してしまうぞ。そして幸太はオーラを持ったままだから世界は完全な滅亡を遂げる……」
「なら、幸太の代償を失くしてほしいって願う事が出来れば、止める事が出来るんじゃないか?」
「そうだな!それなら可能性はありそうだな!」
「だとすれば問題は、陽翔が幸太のオーラで力を使えるかだな……」
「陽翔君、出来そうかな?」
「わかりません……でもやらないと!僕はやって見せます!」
「ありがとう!以前幸太のオーラを感じた事はある?」
「いや、そういったものは全く……」
「陽翔、あの時変なこと言ってなかったか?山で手を繋いだ時!」
「変な事って……。あ!」
「説明してくれ……」
「はい!以前幸太と手を繋いだ時に何となく幼稚園の時もこうやって手を繋いだよね~って言ったんです。でも僕たちは小学校からであったので幼稚園は一緒じゃないんですよ!それがもしも、幸太のオーラに触れたことで何かこれまでの世界の記憶を見ていたのだとしたら……」
「可能性があるな!もしそれを用いてオーラに願う事が出来れば!」
「幸太も世界も救える!?」
「幸太、陽翔。早速試してみてくれ!」
「わかりました!陽翔やろう!」
「うん幸太!君も世界も救おう!」
「俺たちはさらに案を練るぞ!」
「おう!絶対に救って見せる!」
落雷と暴風雨により激しい音が暗い世界を震わす中、船内では希望の声が共鳴していた。
世界の滅亡まで残り4日。
これにて26話、おしまい。