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「希良く~ん! 今夜の飲み会。希良君も行くよね?」
「悪い。今日はバイト」
ちょっとめんどくさそうに答えてしまった。
「え~! 希良君が行かないなら、亜美(あみ)もやめようかなぁ」
「いやいや、亜美。それはないんじゃない?」
「光平(こうへい)はうるさい! 私は希良君と話してるんだから~」
東英大学のキャンパス内。
気持ちの良い青空の下。
なのに、僕の心は……ちょっと曇ってる。
雫さんに会えると思って、時間をこじ開けて会いにいったのに……
『杏』にいた2人の男性、僕よりも遥かに大人でイケメンだった。
榊社長――今まで見たこともないような美形で、スタイルも抜群。
しかも榊グループの社長って……
カフェで雫さんのこと「雫」って呼び捨てだった。
もう1人のイケメンは僕の知り合い。
東堂製粉所の東堂 慧さん。
あの人は、バイト先のスーパーでもかなり人気がある。
従業員の女性達は、スーパーで働く男性達には目もくれず、ほとんどみんな東堂さん狙い。
でも、あの人はきっと……雫さんが好きなんだろう。
榊社長に対する態度を見てればわかる。
もちろん、僕の雫さんへの気持ちは、例えライバルが何人現れても絶対に変わることはない。
雫さんを好きな気持ちなら誰にも負けない自信がある。
だけど……
あの2人の見た目や肩書きには、どうやっても勝てる気がしなかった。
「バイトなら仕方ないけど、次は飲み会ちゃんと付き合ってよ~」
「わかった」
亜美は、苦い顔をして教室に向かった。
「希良、お前さ……亜美の気持ちわかってるのに何で付き合わないの?」
光平が言った。
僕が、唯一、心を許せる親友。
「前にも言っただろ。亜美のこと、女性としては見れないって」
「告白されたのに断ったんだもんな、希良。東英大学で1番可愛い女の子なのに。ほんと、もったいないよ」
「1番って、誰が決めたんだよ? 確かに可愛いのかも知れないけど、僕には……」
本当に、亜美のことは何とも思わない。
好きだって言われても、困ってしまった。
ただの友達としてなら、全然一緒にいられるのに。
「希良は変わってるよな」
「別に普通だよ」
確かに、昔から明るく振舞ってはいても、どこか少し冷めていた。
そういうとこはあるかも知れないけど……
「それだけイケメンで、女子にめちゃくちゃ人気あって、おまけにファンクラブまで。なのに自分はイケメンじゃないからって。もし俺が希良の顔とスタイルだったら、今頃、絶対亜美と付き合ってるし、他にも女友達と遊びまくる」
光平は、いつも僕の顔になりたいとか言う。
でも、この顔……普通だと思う。
もし本当に僕がイケメンなら、あの時、雫さんに……
ちゃんと「OK」って、告白の返事をもらえたはずだから。