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一緒にテーマパークに行った時のことが頭から離れない。
嬉しかったあの日の思い出。
でも……いつだって思い返すと切なくなる。
あの人と、毎日でも一緒にいたいと思うのに、自分の自信のなさの上に、あの2人の存在。
僕の願いは叶うどころか、どんどん遠ざかっていくようで……
僕はすぐに光平とは別れ、バイト先のスーパーに向かった。
仕事用のエプロンを着けて品出しをする。
何度も裏と店内を往復していたら、裏に引っ込んだ時、誰かに背中を叩かれた。
「えっ?」
振り返ると、そこには東堂製粉所の東堂さんがいた。
「こんにちは」
東堂 慧さん、その優しい眼差し。
女性じゃなくても惹きつけられる。
穏やかな爽やかイケメンの登場に、通り過ぎる女性従業員は、みんな頬を赤らめて挨拶している。
「東堂さん、こんにちは。お疲れ様です」
「お疲れ様。この前は『杏』で会って驚いたね」
「はい、びっくりしました。それに、榊グループの社長さんにお会いできるなんて。でも、東堂さん、良かったですね。小麦粉置いてもらえることになって。ここより、あの百貨店で売る方がかなりの利益が出ますよね」
「ああ。父さんがすごく喜んでるよ。あんな嬉しそうな顔、久しぶりに見た」
「そうなんですか、それは良かったです。本当に」
「渡辺君、名前、希良君って言うんだ」
「はい、そうです」
「カッコいい名前だね。若くて明るくて名前も顔もカッコいい。素晴らしい夢もあって……本当にうらやましいよ」
正直、東堂さんにそんなことを言われるなんて驚いた。
「な、名前負けですよ。僕は……東堂さんこそ優しくて、イケメンで、必ず東堂製粉所の2代目になる人だし、しっかりしててうらやましいです」
それは本心だった。
「渡辺君は……雫ちゃんのことが好きなのかな?」
あまりに突然の質問。
言葉が出なくて数秒黙ってしまった。
「……あ、えと……」
「ごめんごめん。こんなとこじゃ話せないよね。良かったら、この後飲みに行かない? 20歳は越えてるよね?」
東堂さんからの誘い。
「あっ、はい。20歳ですから大丈夫です。僕も2人で話したいです。雫さんのこと……」
ついOKしてしまった。
ライバルである東堂さんと話すのは少し抵抗があるけど、今を逃すともうチャンスが無いような気がしたから。
バイトを終えてから居酒屋へ。
近くだから歩いていったら、店の前にはもう東堂さんが来ていた。
「すみません。お待たせして」
駆け寄って謝った。
「全然。俺も今来たとこ。入ろうか」
「はい」
2人で店に入った時、
「よお、希良!!」
大きな声で名前を呼ばれた。
「光平!?」
そうだった、光平達も飲み会だったんだ。