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第2話 君の声
深澤side
放課後のチャイムが鳴った瞬間、
教室の空気が一気に緩んだ
佐「ふっか、帰ろ!」
すぐ隣から聞こえる明るい声
深澤は、わかりやすくため息をついた
深「お前、早すぎんだろ」
佐「だって約束じゃん!」
そんな約束した覚えはない。
…いや、昨日「別にいいけど」って言ったのは自分か。
佐「ほらほら!」
ぐいっと腕を引かれる
深「引っ張んなって」
佐「いいからいいから!」
結局そのまま、並んで校門を出る
—
最初は、ただの流れだった。
なんとなく一緒に帰って、
なんとなく会話して。
でも気づけば、それが“当たり前”になっていた。
佐「ねえふっかさ、好きな食べ物なに?」
深「急だな」
佐「いいじゃん教えてよ〜」
深「…ステーキ」
佐「子どもじゃん!」
深「うるせえ、、、////」
くだらないやり取り。
でも、それが妙に心地よかった。
—
佐「そういえばさ」
ふと、佐久間が少しだけ声のトーンを落とす
佐久間にしては珍しい変化に、深澤は横目で見る
佐「ふっかって、将来やりたいこととかある?」
深「は?」
佐「夢、みたいなやつ」
そんなの、考えたこともなかった。
深「別に。普通に生きれればいい」
そう答えると、佐久間は「そっか」と小さく笑った
——でも、その笑い方が、
いつもと、少しだけ違った気がした。
深「佐久間は?」
何気なく聞き返す。
すると一瞬だけ、間が空いた。
ほんの一瞬。
でも、確かに止まった。
佐「俺?」
それからすぐに、いつもの笑顔に戻る
佐「んー、内緒!」
深「は?」
佐「教えない!」
くすくす笑って、ごまかすように前を向く
深「なんだそれ、」
呆れたように言いながらも、
さっきの“間”が、頭から離れなかった。
—
その数日後
佐「ねえふっか!」
昼休み、突然机に身を乗り出してくる佐久間
佐「今日さ、ちょっと寄り道しない?」
深「寄り道?」
佐「いいとこあるんだよ!」
キラキラした目でそう言われて、断れるわけもなく
深「…少しだけな」
佐「やった!」
—
連れてこられたのは、小さな公園だった。
特別何かがあるわけでもない、
どこにでもあるような場所。
深「ここが“いいとこ”?」
佐「うん!」
満足そうに頷く佐久間
佐「ここね、声がめっちゃ響くんだよ!」
そう言って、ブランコの前に立つ
佐「ね、聞いてて」
深「は?」
次の瞬間——
佐「——『大丈夫。君ならできるよ』」
空気が、変わった。
ただの一言なのに、
不思議なくらい心に残る声。
優しくて、まっすぐで、
どこかあたたかい。
思わず、言葉を失う。
深「…今の、なに」
佐「え?普通に言っただけだけど?」
照れくさそうに笑う
でも、その目は——
少しだけ、遠くを見ていた。
佐「俺さ、こういうの好きなんだよね」
深「こういうの?」
佐「声でさ、誰かの気持ちを動かすの」
その言葉に、胸が少しだけざわつく。
深「…じゃあやればいいじゃん」
思ったまま口にする。
すると、佐久間は一瞬だけ固まって
佐「…はは」
小さく、笑った
佐「簡単に言うなって」
その声は、いつもより少しだけ軽くて。
でも——
どこか、諦めてるみたいだった。
—
帰り道
いつも通り隣を歩いてるはずなのに、
今日は少しだけ距離を感じた。
佐「ふっか!」
急に明るい声が戻る
佐「明日も一緒に帰ろーねっ!」
何事もなかったみたいに笑う。
深「…おう」
そう返しながらも、思う。
——こいつ、絶対なにか隠してる。
あの声も。
あの間も。
あの笑い方も。
全部、気のせいなんかじゃない。
でも
踏み込む勇気なんて、まだなくて。
ただ隣を歩くことしかできない自分に、
ほんの少しだけ、苛立った。
—
それでも
隣で笑うこいつを、
嫌いになれるはずなんてなかった。