テラーノベル
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大森元貴 × 若井滉斗
恋人同士 会社員
🔞
長め
残業のオフィスは、コピー機の待機音とパソコンのファンの音だけが響いている。
時計はとっくに23時を回っていて、俺と大森だけがデスクに向かっている。
「……なぁ、もうやめとけよ。顔、疲れてんぞ」
斜め向かいから声が飛んできた。 低く落ち着いた声。俺の上司であり、直属の先輩であり、そして…秘密の恋人だ。
「大森さんこそ。まだ片付いてないじゃないですか」
「俺はいいの。若井の顔見てたら、手ぇ止まっちゃうんだよ」
からかうような笑みを浮かべながら、椅子を引く音が響く。
歩み寄る気配に、無意識に背筋が伸びた。
「ねぇ若井、…立って」
言われるままに立ち上がると、大森が俺の胸元に手を伸ばす。
器用な指先が、俺のネクタイをするりと引き抜いた。柔らかな布が喉から外れる。
「ちょ、なんで_」
「静かに。……ほら」
そのまま、ネクタイが俺の手首に巻きつけられる。布の感触が、じわりと皮膚に熱を伝える。
「大森さん、ここオフィスですよ」
「知ってるよ。だから、興奮する」
耳元に落ちる声が低くて、背中がぞくりとした。ネクタイの端を引かれ、ぐっと自分の身体が大森の胸に近づく。
ネクタイは片手だけを拘束して、もう片方の手は自由だ。それなのに、動けない。大森の視線と距離に、身体が縫い止められてしまう。
「仕事中の顔も好きだけど……こうして縛られてる顔の方が、ずっといい」
大森の指が俺の顎を持ち上げる。 視線が絡まって、喉が鳴るのが自分でもわかった。
唇が触れる直前、彼はわざと呼吸を長く吐きかける。温かい吐息が唇に触れて、火照りが一気に広がる。
そして、軽く唇を合わせた瞬間、ネクタイが引かれた。 拘束された手首が背中側に回され、胸と胸が押し付けられる。
「っ……」
声にならない息が漏れる。
唇が深く重なり、舌が容赦なく押し入ってくる。 自由な方の手で必死に大森のスーツの袖を掴むが、それすらも彼を喜ばせるだけだった。
「……いいね、その必死な感じ」
唇を離し、笑いながら俺の耳たぶを甘く噛む。
身体がびくりと反応するのを、彼は見逃さない。
「ここ、弱いだろ」
耳の裏に舌を這わされ、息が乱れる。
オフィスの静けさが余計に心臓の音を響かせ、背徳感が喉を締めつける。
「誰か来たら……」
「来ないよ。みんな帰った。残ってるのは俺たちだけ」
大森の声は確信に満ちていた。
拘束された手首をさらに引き寄せられ、デスクの端に腰をぶつける。
大森は空いた手でワイシャツのボタンを一つ外す。 ひやりとした空気が胸元に入り込み、同時に唇が鎖骨をかすめた。
「ん……っ」
小さな声が漏れた瞬間、彼の笑みが深くなる。
「……やっぱり、声我慢できないんだ」
その言葉に顔が熱くなる。オフィスの蛍光灯の下で、こんな顔を見られているなんて。
ネクタイを握る手に力がこもり、引かれるままに上半身が傾く。
大森が低く囁いた。
「若井、もっと乱れて」
その一言で、抵抗の糸がぷつりと切れた。
自由な手で彼の背中を掴み、唇を求める。
大森はすぐに応じ、舌を絡めながら拘束をさらに強める。
もう、オフィスであることも、残業中であることも、どうでもよかった。
ネクタイは俺と大森をつなぐ赤い輪のようで、解かれることなく夜が深まっていく。
拘束された手首がじわじわと熱を持ち、ネクタイの布が皮膚に食い込む感覚が快感に変わっていく。
背徳と緊張が混じった空気の中、大森の指が胸元をゆっくりなぞるたび、呼吸が浅くなった。
「……顔、赤い」
低い声が耳の奥に落ちてきて、体温がさらに上がる。
彼は俺のワイシャツの二つ目、三つ目とボタンを外していき、ネクタイ越しに拘束された手をそのまま自分の腰骨の辺りに押し当てた。
「触りたいんだろ?」
挑発的なその言葉に、喉がカラカラになる。
自由な手で彼のスーツ越しの身体のラインを探ると、微かに息を呑む音が返ってきた。
その反応が、妙に嬉しい。
「……もう、解いてくれませんか」
「やだね。こうしてる方が、俺のことだけ考えるだろ」
そう言って、大森はネクタイを軽く引き、俺の上半身をさらにデスクに預けさせた。
腰の位置が近づき、呼吸が混ざる距離になる。 視線を逸らそうとしても、顎を指でつかまれ、逃げられない。
「俺の目、ちゃんと見て」
その命令が妙に甘くて、背中を震わせる。
見つめ返した瞬間、唇が深く重なり、舌が容赦なく絡んでくる。
逃げられない状況が、逆に欲望を煽った。
彼の手が腰に回り、背中を撫でながら密着を強める。
布越しでも伝わる体温に、理性が揺らぐ。
大森は俺の耳元で、わざと熱い息を吐きながら囁いた。
「……若井、声、もっと聞かせて」
自分の口から漏れる息が荒くなっていくのがわかる。 オフィスの静寂の中、その音だけがやけに大きく響いた。
スーツの袖口が乱れ、シャツの裾が引き出される。指が素肌をなぞるたび、腰がわずかに逃げる_が、ネクタイの拘束がそれを許さない。
「ほら、もっとこっち」
腰を引き寄せられ、大森の膝の間に挟まれる。
自由にならない片手が逆に感覚を研ぎ澄ませ、触れられる場所がやたらと熱く感じる。
唇、耳、首筋、鎖骨_すべてに熱が刻み込まれていく。
「…大森さん……っ」
名前を呼ぶ声が震え、彼の笑みが深くなる。
「いい声。……俺が一番好きな声」
その一言が、胸の奥に響く。
拘束されているはずなのに、逃げたくなくなる。むしろ、この輪を外されたくないと思ってしまう。
大森の唇が鎖骨から胸元、そしてさらに下へと降りていく。
視界の端で、蛍光灯の光がネクタイの赤を鈍く照らしていた。 その輪が俺を繋ぎ止め、彼の熱と重さを受け止めるしかない。
デスクに散らばった書類も、残業の意味も、もうどうでもよかった。
今はただ、この夜が解けなければいい_そう願ってしまうほどに。
___
どれくらい時間が経ったのか分からない。
熱に浮かされた頭では、蛍光灯の明かりさえぼんやりと霞んでいた。
荒い呼吸を整えようとしても、胸の奥がまだざわついている。
大森がようやくネクタイを握っていた手を緩める。
布がするりと手首から外れた瞬間、自由になったはずなのに、腕が重く感じた。
きっと、この拘束が解かれるのが惜しかったからだ。
「……大丈夫か?」
少し掠れた声が耳に届く。
俺は頷くだけで精一杯だった。視線を合わせれば、彼はいつもの大森に戻ったような落ち着いた顔で、それでも口元だけがわずかに緩んでいる。
ネクタイを軽く握ったまま、彼は俺の髪を整えるように撫でた。
「跡……ついてないといいけど」
「……少し、残ってるかも」
そう答えると、彼は喉の奥で小さく笑った。
「じゃあ、俺だけが知ってる証拠だな」
その言葉が妙に嬉しくて、胸が熱くなる。
誰にも知られない、俺たちだけの秘密_その輪は、ネクタイよりもずっと強く結ばれている気がした。
大森は乱れた俺のシャツを直しながら、ポケットから新しいネクタイを取り出す。
「ほら、これでちゃんと締め直せ」
差し出されたのは、俺のじゃない、彼のネクタイだった。
「え、これ……」
「今日はそれで帰れよ。俺が外したやつ、持って帰りたいから」
そんな台詞、ズルすぎる。
顔が熱くなるのを隠すために、俯きながらそのネクタイを受け取った。 布地に残る体温と香りが、まだ俺の身体を締め付けている。
オフィスの外に出ると、夜風が少し冷たくて、ようやく現実に戻った気がした。
けれど、首元に巻かれたこのネクタイが、さっきまでの熱を確かに思い出させる。
_もう二度と、この輪からは逃げられない。
そう思いながら、俺は隣を歩く大森の横顔を盗み見た。
ちょっと長すぎた
コメント
2件
結局まだ起きてたぁ まじ好き 書き方天才かよ