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それはまずい、と、ぱっと目を開けると、いるはずのない、女がいた。
彼女はろうそく型のLEDランタンを、明明とつけていた。暗い部屋にふわふわと明るい。
眩しいくらいだけど、白いLEDの光よりは赤い方が好きだ。
「おはよ。やっと起きたの。」
彼女は僕の方に手を伸ばす。
スラリとしている白くて細い手だ。だけど寝起きの僕はその手をとれなかった。
体が勝手にその手を拒み、そして彼女を拒んでいた。
僕は心底怯えていたようだ。
なぜ、ここに居るのだろう?僕が彼女を拒む理由はその「なぜ」しかない。それだけで汗が滲んでいる。
僕ってこんなに弱かったかな?
「はあ、何してるのかなって来てみたのに、このきったない部屋。ゴミ屋敷じゃない。上がるのも躊躇したわ。」
確かに、僕の部屋は汚い。
でも問題ないはずだ。人をあげたことなんかないし。自分が生活できればいいから。
というか、勝手に部屋にあがったのは女の方だ。
「躊躇どころじゃなくて、帰ってもらっていいんだけど。」
僕は彼女を見ずに言う。こんなことが言えるのは、こいつだからかもしれない。
彼女は、はあ、と大きなため息をついて言った。白い髪は、彼女にとってはコンプレックスらしいが、僕は綺麗だと思う。ストレートな白い髪。今日は綺麗にまとめられている。
「わざわざ来てやったんだから、その言い方はないでしょう。」
「何をしに来たんだよ。」
「あんたねぇ、学校ずうっと休んでるじゃない。ちょっとくらい、心配だってするのよ?」
僕は元気だ。心配はいらないはず。なんで休んでる、とか、聞かれることもあるけどただのずる休み。
「そりゃどーも。」
「大丈夫なの?元気なの?」
僕は元気だ。だからこうやって生活している。
「あぁ。」
「なら良かった、せっかく来たんだし、なにかしようか?いや、元気そうだし、いいかな?」
僕は元気だ。だから自分1人で、生活ができる。
「いい、帰れ。」
「やだ。」
「帰ってくれ。早く‥」
言葉がぷつりと途切れる。