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こいつが帰ったら、また僕は一人。冷たい空気に覆われた部屋で、また一人。
なんて駄目な人間なんだろう、僕は。そのためにこいつをここには置いておけないだろう?
それに僕みたいな最低な人間と居させるべきではない。
彼女は怪訝そうに顔をしかめる。
「どうしたの?」
「…何もない。帰れ。」
彼女は黙って靴を履き、出ていった。
一人きりの部屋はあまりにも静かだった。
開けかけのコーラはもう甘い砂糖水になっている。毎日それで乾いた喉を潤す。
髪を掻き上げる。白いフケが落ちてきた。
カーテンを開ける。夜空が目の前に広がり、それぞれが壮大な星座を作る。
ぽつんと端にいるのは名前もない星。
400年くらい前から長い時間をかけてきた光が今僕に届いている。
ベランダにかけた制服から水滴が垂れる。シャボンのように虹色に光って落ちる。ずっと干しっぱなしだからつゆがついている。落ちたつゆはどこに言ったのだろう。もう消えてしまったようだけど、まだどこかに存在するのかもしれない。
訳もない、涙が一筋頬を伝ったのがわかる。
はぁ、と、また息をつく。
ほら、また。
目を瞑り、ゆっくり息をする。冷たい空気が肺を冷やす。吐いた息が透明な窓を濡らす。
窓は僕のせいで曇ってしまう。
ずっと前から長いこと独りでいるくせに、今日は寂しい。
これまで寂しいなんて思ったこともなかった。
こんな夜は初めてだ。
僕は元気、普通。健康なのに学校をずる休みする、馬鹿なやつ。
本当に、馬鹿だなぁ。
軽く背伸びをして、それから腹が減ってみかんを一つ食べた。その後ベッドに潜った。
寝るのが好きだ。
何もかも忘れていられるから。何も考えない、ただ自分の世界にいられるから。
だけど僕は寝られなかった。朝焼けが街を照らす時間になる。それでも眠れない。さらに時は進む。
僕なんかおいてけぼりで。
夕日が沈む。僕は、まだ寝ていない。何も考えていない。はず。でも寝ることはできない。
…寝ることも、馬鹿馬鹿しい。
ただの現実逃避。