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2月の下旬に入ってすぐ、カンナの高校入学試験があった。晶子に家に報告にやって来たカンナを自分の部屋へ引きずるようにして連れて行った晶子は、まるで自分が試験を受けたように興奮した表情で尋ねた。
「どうだった、カンナ? 問題全部解けた?」
カンナは床に座って頭の後ろを掻きながら、苦笑しながら答える。
「一応解答欄は全部埋めた。マークシートだから、分かんないとこは秘密兵器使えたしな」
「秘密兵器?」
カンナはカバンを空けて筆箱を取り出し、1本の鉛筆を取り上げ晶子に見せる。鉛筆の反対側の六角形の断面の表面が薄く削られていて、マジックペンで1から6までの番号が書いてあった。
「3分の1ぐらい分からない問題あった。これ転がして、出た数字のとこ塗りつぶした。ま、いくつはまぐれで当たってるかも」
晶子も苦笑するしかなかった。
「それが秘密兵器なわけ? カンナらしいと言えばカンナらしいね」
「ま、後は野となれ山となれだ。ああ、やっと終わった!」
そして3月1日、カンナの入試の合格発表の日が来た。カンナが受験したのは定時制で、その枠での受験生は数が少ないため、校内の掲示板への張り出しのみの発表だった。
平日だったので晶子は登校しなければならず、一緒に見に行く事は出来なかった。
まだ携帯電話を持っていない二人は、晶子が下校する途中の、駅前の商店街で落ち合う事にした。
部活も休んで、学校を飛び出した晶子は、一目散に駅に走り、自宅の最寄り駅で降りるまで気が気でないという様子だった。
駅を出て商店街の待ち合わせ場所へ走る。こんなに走ったのは体育の授業以外ではいつ以来だろう、と晶子は思った。
息をはずませてスーパーマーケットの休憩スペースへたどり着く。カンナは既にそこにいた。
中学の制服を着たカンナは、目の前に走って来た晶子を見ると、顔をくしゃくしゃにして泣いているような表情になった。
晶子の顔が青ざめた。晶子はカンナの肩を思わずギュッと両手でつかんで震える声で訊く。
「カンナ、結果は? ま、まさか」
カンナはポケットから畳んだ紙きれを取り出し、開いて晶子に見せた。
「合格してた」
晶子はカンナの肩をぶんぶんと揺さぶった。
「だったらそんな顔しないでよ! てっきり落ちたのかと思ったじゃない」
「うれし泣きだよ。多分ギリギリでセーフだったんだろうけど。あたいだって、こういう時は不安なんだぜ」
「とにかく、合格おめでとう、カンナ!」
「ありがと! これも晶子のおかげだ」
それから二人は連れ立って家の方向へ向かって並んで歩いた。カンナはさっきとは一転して、笑いが止まらないという表情で晶子に話しかけた。
「やっほう! これであたいも華の女子高生だぜ」
「高校生になったら何かやりたい事ある?」
晶子も自分の事のようにうれしくてしょうがなかった。
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グリルタ
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「やっぱりバイトだな」
「アルバイト? 部活とかじゃなくて?」
「15歳になって中学卒業したら、ちゃんとしたアルバイトできるようになるんだよ。何をやろうかな、楽しみだぜ」
「まあ、それもカンナらしいか」
「あと女子高生って言ったら、アレだろ」
「アレって?」
「ミニスカート! これぐらいの」
そう言いながらカンナが制服のスカートの端を両手で持ち上げる。晶子はあわててカンナの手を握って下に降ろさせる。
「ちょっとカンナ。こんなとこでスカートまくらないの。パンツ見られたらどうするのよ」
「いいじゃねえかパンツぐらい。見られて減るもんじゃねえし」
「そういう問題じゃないよ。あれ、同じ事前にもカンナに言ったような気がするな」
コメント
1件
カンナの合格、本当によかったですね!😊 鉛筆転がしてマークシートを埋める「秘密兵器」には思わず笑ってしまいました。カンナらしいけど、合格発表の日にくしゃくしゃ泣きながら「合格してた」って言う姿にグッときました。晶子が肩をぶんぶん揺さぶるのも、嬉し泣きを心配した反動で、リアルな友情だなあと。スカートまくって「パンツぐらい見られて減るもんじゃねえ」って言い放つカンナの図太さも、この子らしさ満点で大好きです。