今日はいったいどうしたのかな?
2人からの電話、すごく嬉しいけど……ちょっと切なくなる。
胸がキュッとして……変な感じだよ。
私は、部屋の片付けの続きを始め、それが終わってから夕食にクラムチャウダーを作った。
買い物に行かなくても、昨日買っておいた材料があった。
ベーコン、キャベツ、ジャガイモ……そして、アサリ。
子どもの頃から大好きで、よく母が作ってくれた大好きなメニュー。
今は、母からレシピを教わって自分でも作れるようになった。
『杏』のフランスパンも軽くトーストして付けた。
1人のディナータイム。
1口食べて思った、「美味しい。本当に……」って。
だけど、なぜだかゆっくり味わう気分になれなくて、私はスプーンを早めに使い終え、あっという間に食事を終えた。
お風呂もすませ、その日、私はいつもよりも早くベッドにもぐった。
そしたらまた……スマホが鳴ったんだ。
嘘、榊……社長。
祐誠さんからだ。
今日、3人目。
スマホに伸ばした手がちょっと震えてる。
「雫?」
向こうから声をかけてくれた。
当たり前だけど、耳に届く声は、慧君、希良君、祐誠さん……みんな違う。
まるでそれぞれの個性を表すように、3人とも声まで素敵で。
たとえ目の前にいなくても、その声は私の胸をくすぐり、ドキドキさせた。
「こ、こんばんは、祐誠さん……」
「ごめん。遅くに申し訳ない」
「いえ、全然大丈夫です。祐誠さん、今、海外なんですよね?」
「ああ、ニューヨークにいる。今、夏時間の朝9時。そっちは……22時だよな。もしかして寝てた?」
私、ニューヨークなんて行ったことない。
祐誠さんは、オシャレなニューヨーカーに混じっても、きっと見劣りしないんだろうな。
「いえいえ、寝てないです。全然、まだまだ起きてます」
嘘をついてしまった。
「なら良かった。今、アパレル事業の打ち合わせでこっちに来てる。イベントのこと、前田君達に任せて、雫にもなかなか連絡できずにすまない」
「いえ。時々もらってたメールに励まされてますから。祐誠さんが忙しくされてることは前田さんから常に聞いてます。私が聞かなくても……前田さん、全部教えてくれるんですよ」
私は、ちょっと笑った。
「同じだ。俺にも雫のこと、聞かなくてもいろいろ話してくれてる。イベントの準備も進んでるみたいだし、前田君は本当に良くやってくれてる。雫も、ありがとう。あと少し、頼むな」
祐誠さんの声、穏やかだ。
忙しくて疲れてるはずなのに……
「もちろん頑張ります。祐誠さんに恥をかかせないようにしなきゃって張り切ってますよ」
「……」
ん? 黙ってしまった?
「どうかしましたか? 大丈夫ですか! 祐誠さん!?」
嫌だ、疲労で倒れたとか!?
「雫に……会いたい」
「えっ、祐誠さん?」
「声だけでもって思ってたのに、実際に雫の声を聞いたら……欲張ってしまうな……」
そんなこと……
そんなこと言われたら私……
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