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#健康鯖
プランテーション
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めりりんちよ
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ーー『休日の猫カフェ』
休日の昼下がり。
「なあ、ショッピくん!」
「……なんですか、シャオロンさん」
ソファでスマホをいじっていたショッピは、勢いよく目の前に現れたシャオロンを見上げた。
「今日、暇?」
「まあ、暇ですけど」
「よっしゃ! ほな猫カフェ行こうや!」
「……猫カフェ?」
「そう! 猫ちゃんがおる、あの猫カフェ!」
「いや、それはわかりますけど……」
シャオロンは目をきらきらさせながら、ショッピの返事を待っている。
どうやら、かなり前から行きたかったらしい。
「……ええですよ」
「ほんま!? やったあ!!」
「うわ、声でか……」
「ええやん! 猫やぞ、猫!」
「はいはい。わかりましたから、ちょっと静かにしてください」
呆れたように言いながら、ショッピは小さく笑った。
まあ、たまにはこういう休日も悪くない。
それに、猫は嫌いじゃない。
……むしろ、結構好きだったりする。
「ほな、準備してきますわ」
「おう! 早よな!」
「シャオロンさんが落ち着いて待ってたら、早めに行きます」
「えっ、俺のせい!?」
「そうですよ」
「ひどない!?」
そんなやり取りをしながら、二人は猫カフェへ向かった。
* * *
猫カフェの扉を開けると、そこにはふわふわの世界が広がっていた。
窓際のクッションで丸くなる三毛猫。
キャットタワーの上で眠る黒猫。
おもちゃを追いかけて、てちてちと走り回る茶トラ猫。
そして、部屋の真ん中で気持ちよさそうに伸びをする白猫。
「…………」
「…………」
二人は、そろって黙り込んだ。
数秒後。
「……やば」
ショッピがぽつりとつぶやいた。
「な!? やばいやろ!?」
シャオロンも、声をひそめながら大きくうなずく。
「めっちゃおる……」
「めっちゃおるな……」
「かわい……」
「それな……」
さっきまで騒がしかった二人が、まるで示し合わせたかのように小声になっている。
猫の力は偉大だった。
受付を済ませ、飲み物を受け取った二人は、窓際のソファに並んで座った。
すると。
「……あ」
ショッピの視線が、隣へ向く。
シャオロンが、白猫を見つめたまま固まっていた。
白猫はというと、ゆっくりシャオロンに近づき、彼の靴の匂いをくんくんと嗅いでいる。
「シャオロンさん、来てますよ」
「えっ、えっ、ほんま!?」
「声でかいですって」
「いや、だって! 見てみぃ!」
白猫はシャオロンの足元をひと回りすると、ひょい、と膝の上に前足を乗せた。
「…………っ!」
シャオロンは息をのんだ。
「……え、俺でええの?」
「猫に聞いても答えてくれませんよ」
「わかっとるわ!」
そう言いながらも、シャオロンはおそるおそる手を伸ばした。
白い毛並みに、そっと指先を埋める。
ふわっ。
「…………」
「…………」
「……ふわふわや」
「猫ですからね」
「いや、そういうことちゃうねん……。なんか、こう……ふわふわなんよ……」
「語彙力どっか行きました?」
「今は猫に夢中やねん!」
シャオロンは真剣だった。
白猫の頭を撫でるたび、目尻がどんどん下がっていく。
しまいには、猫と同じくらい幸せそうな顔になっていた。
ショッピはその横顔を見て、ふっと笑った。
「……シャオロンさん、めっちゃ嬉しそうですね」
「そら嬉しいやろ……」
シャオロンは白猫の頭を撫でながら、ぽつりと言った。
「こんなん、ずっと撫でてられるわ……」
その声があまりにも柔らかかったので。
ショッピは、なんとなく目をそらした。
「……ふーん」
「なんや、その反応」
「別に?」
「絶対なんか思っとるやろ!」
「いやあ、シャオロンさんにもこんな顔するんやなあって」
「どんな顔やねん!」
「猫にデレデレの顔」
「うっさいわ!!」
シャオロンが反論している間も、白猫は膝の上でのんびり丸くなっていた。
そして、目を閉じる。
「……あ」
シャオロンの声が小さくなった。
「寝た……」
「寝ましたね」
「……どうしよ」
「どうもしなくてええでしょ」
「いや、動いたら起きてまうやん……」
「……ふふっ」
ショッピはとうとう笑ってしまった。
「なんやねん!」
「いや、すんません。シャオロンさん、猫にめっちゃ気ぃ遣ってるなと思って」
「当たり前やろ! 寝とるんやぞ!」
「俺が眠いときも、それくらい優しくしてくださいよ」
「ショッピくんは自分で寝てください」
「扱いの差ぁ!」
二人の笑い声に、白猫の耳がぴくりと動いた。
「……あっ、ごめん」
シャオロンが慌てて口元を押さえる。
ショッピもそっと声を落とした。
「……静かにしよか」
「……せやな」
二人は顔を見合わせ、くすくすと笑った。
* * *
それからしばらくして。
シャオロンが白猫に夢中になっている一方、ショッピのところにも小さなお客さんがやってきた。
灰色の、毛の長い猫だった。
猫はショッピの足元で立ち止まると、じっと彼を見上げた。
「……ん?」
ショッピが手を差し出す。
猫は慎重に匂いを嗅いでから、指先に頭をすり寄せた。
「……おお」
思わず声が漏れる。
もう一度、そっと撫でてみる。
猫は嫌がるどころか、もっと、と言わんばかりに手のひらへ頭を押しつけてきた。
「……かわええな、お前」
自然と声が柔らかくなる。
その瞬間。
「……ショッピくん?」
「はい?」
「めっちゃ顔緩んでるで」
「…………」
ショッピは無言でシャオロンを見た。
シャオロンは、にやにやしていた。
「なあなあ、今どんな気持ち? 猫ちゃんに甘えられてどんな気持ち?」
「……シャオロンさん」
「はい!」
「うるさいです」
「ひどっ!!」
ショッピはため息をついた。
けれど、灰色の猫を撫でる手は止めなかった。
「……だって、かわいいじゃないですか」
ぽつりとそう言うと、シャオロンは一瞬だけ黙った。
それから。
「……せやな!」
いつもの明るい声で笑った。
「めっちゃかわいいな!」
「……はい」
ショッピも小さく笑い返す。
窓から差し込む日差しが、二匹の猫の毛並みをふんわり照らしていた。
なんだか、時間がゆっくり流れているみたいだった。
いつもなら、しょうもないことで騒いで、ふざけて、あっという間に過ぎてしまう休日。
でも今日は違う。
猫を撫でて。
ときどき顔を見合わせて笑って。
何でもないことを話して。
それだけで、十分楽しかった。
* * *
「……なあ、ショッピくん」
「なんですか、シャオロンさん」
「また来ような」
シャオロンは、眠っていた白猫が目を覚ましたのを確認してから、ゆっくり背筋を伸ばした。
「今日めっちゃ楽しかったわ」
その言葉に、ショッピは一瞬だけ目を丸くした。
それから、灰色の猫の頭を最後にひと撫でして。
「……そうですね」
と、笑った。
「また来ましょ」
「ほんま!? 約束な!」
「はいはい、約束です」
シャオロンが嬉しそうに笑う。
その顔を見て、ショッピも自然と口元を緩めた。
帰る時間になっても、二人はなかなか席を立てなかった。
最後にもう一度だけ猫たちを撫でて。
眠っている猫に小さく手を振って。
「またなー」
「……また来ますね」
そんな言葉を残して、二人は猫カフェを後にした。
外に出ると、午後の風がふわりと頬を撫でた。
「……あー、癒やされた」
シャオロンが伸びをする。
「ですねえ」
ショッピも隣を歩きながら、空を見上げた。
しばらくして、シャオロンがぽつりと言った。
「……今日、ショッピくん誘ってよかったわ」
「…………」
ショッピは少しだけ目を見開いた。
「……なんすか、急に」
「いや、楽しかったから!」
シャオロンは照れくさそうに笑った。
「一人で来るより、誰かと来たほうが楽しいやん?」
「……まあ、そうですね」
ショッピは前を向いたまま答えた。
それから、ほんの少しだけ笑って。
「……俺も、シャオロンさんと来れてよかったです」
「……!」
今度はシャオロンが黙る番だった。
「……お、おう!」
なぜか少しだけぎこちない返事をするシャオロンに、ショッピは首をかしげる。
「なんですか?」
「いや、なんでもない!」
「変な人」
「お前に言われたないわ!」
二人はまた笑い合った。
帰り道は、まだ少し長い。
でも、今日は急がなくていい。
ふわふわの思い出を胸に、二人でゆっくり歩いていこう。
次の休日も、きっと楽しい。
だって、また一緒に来る約束をしたのだから。
コメント
1件
ああ、めっちゃ良かった……!もう猫の描写が細かくて、ふわふわした毛並みの感触がこっちまで伝わってくるみたいでした。特に二人が「やば」「かわい」しか言えなくなってるところ、猫の前では人間みんなそうなるよなあと共感しながら読んでました。シャオロンが膝に乗せた白猫に「俺でええの?」って戸惑うシーン、最高に可愛かったです。それと最後の「また来ような」の約束。二人の距離感が自然に縮まっていく感じがすごく心地よかったです。癒やされました!