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ーー『ハンバーガーショップでの出来事』
休日のお昼。
街中のハンバーガーショップは、家族連れや学生で賑わっていた。
「わぁ……! すごい人ですね!」
店内を見回しながら、しにがみが目を輝かせる。
「そうですね。お昼時ですからね。」
ピヤノも小さく頷いた。
今日の4人は、買い物の途中でお昼ご飯を食べに来ていた。
「ほな、俺とたらこで注文してくるわ。お前ら席取っといてええで」
シャオロンがそう言うと、たらこも頷いた。
「しにがみさん、ピヤノさん、何食べる?」
「僕、てりやきバーガーがいいです!」
「僕も同じものでお願いします」
「おっけー。飲みもんは?」
「オレンジジュースでお願いします!」
「僕はアイスティーで」
「了解。ほな、ちょっと待っとってな」
そうして、シャオロンとたらこはレジの列に並びに行った。
残されたしにがみとピヤノは、空いている席を探して店内の端に移動する。
「席、見つかるといいですね」
「そうですね。あ、あそこが空きそうですよ!」
そんなふうに話していた、そのときだった。
「ねえ、君たち。今、二人?」
突然、知らない男性二人組に声をかけられた。
しにがみとピヤノは、同時に振り向く。
「えっと……?」
「よかったら、一緒にご飯食べない? めっちゃかわいいね」
男性の一人が、にこにこと笑いながら言った。
しにがみは困ったように笑う。
「すみません。僕たち、友達と来ているので……」
「あ、友達待ち? じゃあ、待ってる間だけでもさ」
「いえ、本当に大丈夫です」
ピヤノも丁寧に断った。
しかし、男性たちは引き下がらなかった。
「えー、そんな警戒しなくてもいいじゃん。」
「……あの、僕たち、男ですけど」
しにがみが、はっきりと告げる。
隣のピヤノも頷いた。
「そうです。ですので、お誘いはお断りします」
すると男性たちは、一瞬顔を見合わせたあと、笑い出した。
「えっ、男? うそでしょ!」
「いやいや、そんな声で? 冗談うまいね!」
「……冗談ではないんですけど」
しにがみの声が、少しだけ小さくなった。
ピヤノも困ったように眉を下げる。
「本当に男性です。信じていただけませんか……?」
「またまたー! そんなにかわいいのに?」
男性の一人が、しにがみの顔を覗き込むように身をかがめた。
「ねえ、連絡先だけでも交換しようよ」
「ですから、困ります……!」
しにがみが一歩下がる。
ピヤノも、さりげなくしにがみの前に出た。
「何度もお断りしています。もう、やめてください」
普段は穏やかなピヤノの声にも、はっきりとした拒絶が滲んでいた。
それでも男性たちは、まだ笑っていた。
「そんな怒んないでよ。女の子二人で来てるんでしょ?」
「……だから、男ですってば」
しにがみが、今度は少し強めに言った。
けれど、やっぱり信じてもらえない。
どうしたらいいのか分からず、二人が困り果てた、そのとき。
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「……何してんの?」
低い声が、すぐ後ろから聞こえた。
しにがみとピヤノが振り向く。
そこには、注文を終えたシャオロンとたらこが立っていた。
シャオロンの手にはトレー。
たらこもドリンクを持っている。
けれど、二人とも笑っていなかった。
「シャオロンさん……!」
しにがみの表情が、ぱっと明るくなる。
「たらこさん……」
ピヤノも、ほっとしたように息を吐いた。
シャオロンは二人の様子を一瞬で確認した。
困った顔のしにがみ。
シャオロンの後ろに半歩下がったピヤノ。
そして、その二人の前に立っている見知らぬ男性たち。
「……あー」
シャオロンはトレーを片手に持ち直した。
そして、男性たちをまっすぐ見た。
「その子ら、俺らの連れなんですけど。何か?」
声は低く、静かだった。
怒鳴っているわけではない。
けれど、その場の空気がすっと冷える。
男性たちは、少し戸惑ったように顔を見合わせた。
「あ、いや……俺たちは別に、ちょっと話してただけで」
「話?」
シャオロンが、ほんの少し首を傾ける。
「本人ら、嫌やって言うてたんやろ?」
「いや、でも……」
「何回も断っとるのに、まだ続けとったん?」
声を荒らげることもなく、シャオロンは淡々と続けた。
その静けさが、かえって怖かった。
たらこも、二人の横に並ぶ。
いつもの柔らかい笑顔は、そこにはなかった。
「しにがみさんも、ピヤノさんも、困ってるよね」
「……はい」
しにがみが小さく頷く。
「何度もお断りしたんですけど、信じてもらえなくて……」
「そうなんだ」
たらこは二人を見てから、男性たちに視線を戻した。
「男か女かとか、そういう問題じゃないと思うけど。嫌だって言われたら、普通にやめようよ」
穏やかな声。
けれど、言葉には有無を言わせない強さがあった。
シャオロンも続ける。
「そもそも、こいつらが男やから何やねん。断っとることに変わりないやろ」
男性たちは、ようやく気まずそうに目をそらした。
「……悪かったよ」
「次から気ぃつけてくださいね」
たらこがそう言うと、二人はその場を離れていった。
姿が見えなくなってから、シャオロンは小さく息を吐いた。
「……ったく」
そして、くるりと二人に向き直る。
「お前ら、大丈夫か?」
その声は、さっきとは違っていた。
まだ少し低いけれど、いつものシャオロンの声だった。
「は、はい……! ありがとうございます、シャオロンさん……」
しにがみが、ぺこりと頭を下げる。
「助かりました。ありがとうございます、たらこさん」
ピヤノも丁寧にお礼を言った。
「ええよ、別に」
シャオロンはぶっきらぼうに答えた。
「嫌なことあったら、すぐ呼べや。無理して相手せんでええからな」
「……はい」
しにがみは頷いたあと、少しだけシャオロンの服の袖をつまんだ。
「シャオロンさん、さっき……ちょっと怖かったです」
「は!? 俺!?」
シャオロンが目を見開く。
「えっ、いや、あれは……その……!」
「でも、かっこよかったですよ」
しにがみが、にこっと笑った。
「……っ!」
シャオロンの動きが止まる。
隣では、たらこが口元を押さえていた。
「……シャオロンさん、耳赤いよ」
「赤ないわ!!」
「ふふ。赤いですね」
ピヤノまで、珍しく笑いながら言った。
「ピヤノまで何言うとんねん!?」
「すみません。でも、本当にかっこよかったです」
「……っ、もうええから! はよ飯食うぞ!!」
シャオロンは、ぷいっと顔をそらした。
けれど、トレーを持つ手には、さっきまでの険しさはもうなかった。
たらこはそんなシャオロンを横目で見て、ふっと笑う。
「シャオロンさん、心配だったんだね」
「当たり前やろ。連れが困っとったんやから」
即答だった。
その言葉に、しにがみとピヤノは顔を見合わせた。
そして、二人そろって微笑んだ。
「……ありがとうございます」
「本当に、心強かったです」
「……お、おう」
シャオロンは照れくさそうに頭をかいた。
たらこは、そんな三人を見ながら思った。
――ああ、やっぱりこの4人で出かけるのは楽しいな。
席に戻り、ようやくお昼ご飯。
しにがみはてりやきバーガーを一口食べて、ほっとしたように笑った。
「おいしいですね!」
「よかったです。僕も、ここのハンバーガー好きです」
ピヤノも、いつもの穏やかな調子に戻っていた。
たらこはドリンクを飲みながら、ふと思い出したように口を開く。
「そういえばさ、二人とも」
「はい?」
「さっき、男って言っても信じてもらえなかったんだよね?」
「……はい。声が高いから、冗談だと思われたみたいです」
しにがみが苦笑する。
「私もです。何度説明しても、なかなか信じてもらえませんでした」
ピヤノが頷いた。
シャオロンはバーガーを置くと、眉を寄せた。
「……ほんま、声だけで決めつけるんも失礼な話やな」
「そうですね。でも、シャオロンさんたちが来てくれて安心しました」
「……おう」
シャオロンは少しだけ視線をそらす。
すると、たらこがにやりと笑った。
「じゃあ今度から、しにがみさんとピヤノさんが困ってたら、シャオロンさんを呼べばいいね」
「なんで俺限定やねん! たらこもおるやろ!」
「え、僕も行くよ?」
「いや、そういうことちゃうねん!」
「ふふっ」
しにがみが笑う。
ピヤノも、くすくすと笑った。
さっきまでの緊張が、嘘みたいにほどけていく。
シャオロンは「ったく……」とぼやきながらも、しにがみのポテトが落ちそうになれば皿を寄せ、ピヤノのドリンクが空になりかければ「追加いるか?」と聞いていた。
たらこは、そんなシャオロンを何も言わずに見ていた。
そして、ふいに口を開く。
「……シャオロンさんって、優しいよね」
「は?」
「いや、なんでもない」
「なんやねん、気になるやろ!」
「ふふ、内緒」
「おい!!」
また、4人の笑い声がテーブルに広がった。
今度は、誰にも邪魔されない。
大切な仲間たちと過ごす、いつも通りの楽しいお昼だった。
コメント
2件
(実際にこの4人の絡みを見てみたいよね)
いや〜、今回の話、めっちゃ良かったわ!シャオロンの「何してんの?」の低い声、一瞬で空気変える感じがマジでかっこよすぎた🔥 普段の脳筋ポジションから、仲間がピンチになったときの静かな怒りに豹変するギャップが刺さる…。しにがみとピヤノが「男です」って言っても信じてもらえないもどかしさと、そこに駆けつける二人の連携が最高。最後のたらこの「優しいよね」でシャオロンが照れるくだりとか、4人の関係性がじわじわ沁みる回だった!次も楽しみにしてるわ📖