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数週間後、ニート部は「サバイバル王決定戦」の成功を記念し、全員で「ニート部の価値」について語り合う座談会配信を企画した。
マイクを通して語られるのは、陰キャ転生の「失敗を恐れなくなった話」、ひまじんの「虚言が物語に変わった話」、できおこの「真面目さが土台になった話」など、彼らがこの場所で得た新しい「見方」ばかりだった。
全ての言葉の終着点は、主催者であるKUNに向けられていた。
「KUN、ぶっちゃけ聞かせてくれよ」DDが、いつになく真剣な声で問いかけた。「あんたは、俺たちにニート部という場所を与えて、何をさせたかったんだ?」
その質問は、全員の共通の疑問だった。
KUNは、少し沈黙してから、いつもの冷静なトーンで話し始めた。
「俺は、お前たちに何もさせていない」
その言葉は、メンバーを困惑させた。
「俺が与えたのは、『ルールがないこと』と『カメラ』だけだ。お前たちが持っている『自分らしさ』は、現実の世界では全て『困り事』として扱われる。陰キャ転生の煽りも、あーけんの不安定さも、うみにゃの引きこもりも、世間から見れば『欠点』だ」
KUNの言葉は鋭かったが、誰も否定しなかった。それが真実だと知っているからだ。
「だが、このニート部という、俺が作った箱庭では、その『欠点』は『個性』になる。そして、その個性をカメラの前で晒すことで、お前たちは『愛される』。俺がさせたかったのは、ただ一つだ」
彼は一息置いた。
「お前たち自身が、お前たち自身の『みかた』になることだ」
とーますが、静かに頷いた。「俺の色の見え方が違っても、誰も否定しなかった。それが、この場所のルールだ」
なっしーが笑いながら言った。「俺の明るさが空回りしても、どるぴんが裏で調整してくれてるって知ってる。だから、安心してバカができる!」
どるぴんが静かに応答する。「俺の『王』という重荷は、お前たちの『自分らしさ』が軽やかに跳ね回ることで、初めて意味を持つ。お前たち全員が、俺の孤独な『王の責任』の『味方』だ」
KUNは続けた。「お前たちの『困り事』は、『居場所を失うこと』だった。だから、俺は、お前たちの『欠点』を『すてきな個性』という『見方』に変える舞台を用意した。お前たちは、そこで、自分を否定しない『味方』を見つけた。それは俺ではない。お前たち自身と、お前たちを愛するリスナーだ」
彼こそが、全ての「自分らしさ」を肯定する「世界の創造主」であり、ニート部という居場所そのものが、永遠に続く「みかた」なのだと、メンバー全員が理解した。
このニート部は、社会のルールから逃げた場所ではない。「自分らしさ」を武器に変え、自分を愛するための新しいルールを見つけた場所だった。