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一ノ瀬 翠
20
ねこ
15
#幼馴染
猫塚ルイ

788
そこからの意識は曖昧で。
母いわく先輩は即死。
私の事は駆けつけてくれた保健体育の先生が保健室まで運んでくれたらしい
先輩の葬式は、先輩の家族だけの小さなもので終わった。
正確には、私もお呼ばれして、最後に会いに行った。
棺は最初から最後まで閉じられていた
先輩のお父さんいわく人の形すら保っていなかったらしい。
そこから私は暫く引き篭もった。
眠ることも、ろくに食事を取ることも出来ず、布団に潜り込み丸くなるだけの日々が続く。
眠ればあの光景が夢に出て、食事を取ればふとあの光景が頭に浮かび吐いてしまう。
そんなある日、部屋の戸がノックされた。
「ハナちゃん、ご飯食べなくてもいいから、リビングに降りてこない?」
母さんだ。私は唇を強く噛んだ。強く噛みすぎて血が滲むがそんなこと意識すらしていない。
煩い、煩い、煩いんだよ。
その名前で私を呼ぶなよ。
普段ならまたか、で済ませられるような日常的な呼びかけ。
「ハナちゃん、?寝てるの?」
母さんはきっと私が返事をするまで呼び続ける気だ。
「ハナちゃん、?」
私は布団から出て、勢いよく扉を開けた。
「母さん、何で、私をそう呼ぶの。だってその名前は、!」
顔を少し伏せると、長く伸びた前髪が表情を隠してくれる。
私は今まで溜め込んできた鬱憤を晴らすかのように、静かに、だが確かに苛つきを込めて母に問いかけた。
母さんはびくりと驚いて、視線を右往左往させた後、ゆっくりと答えた。
「だって、貴方はハナちゃんでしょう、?」
違う、違うんだよ、母さん。
だって、その名前は、
「ハナちゃんは、私の大事なたった1人の娘、白石ハナちゃんでしょう?」
私は、私の中で何かが崩れそうになるのを感じて、思わず叫んだ。
「っ、やめてってば、!!!!」
母さんは目を見開いて、怯えたように私を見上げた。
「母さんっ、姉さんはもう居ないんだよっ、私は、私は姉さんじゃなくて、!」
私は目に涙を浮かべて、必死にそう母さんを諭そうと試みる。
そう、私には、「白石ハナ」という年が4つ程離れた姉が居た。
3年程前に、交通事故で、私の目の前で轢かれて死んだ。
その途端、頬に熱が走った。
いや、違う、叩かれた。
「何を言っているの、?ハナちゃん。貴方は貴方でしょう?」
母さんは、今までに無いくらい冷たい目をしていた。
何も映していないような、ガラス玉みたいなあの目。
いや、一度だけ、姉さんの葬式中に、あんな目をしていたっけ。
「ハナちゃん、変なことを言わないで頂戴。ご飯、リビングに置いておくから、ちゃんと食べてね」
母さんは冷え切った声でそう告げると、リビングへ降りていった。
私は部屋の扉を閉めて、手で顔を覆って、扉に背を預けてずるずると座り込んだ。
コメント
1件
うわ、これは……重いなあ。第3話、一気に核心に迫ってきた感じがする。主人公が「姉の代わり」として扱われてる違和感、母親の壊れた認識がじわじわと怖い。特に「ハナちゃん」って呼ばれるたびに主人公の中で何かが崩れていく描写が胸に刺さったわ。母親の冷たい目、あれは現実から逃げてるんだろうな…。続きが気になる🔥