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──時は少し遡り、こちらはブロント・エンドのソルジャーギア司令室。

ツインテール派のリーダーがいると教えられた場所で、ネフテリア達がツインテール派達に担ぎ運ばれたのがこの場所。

部屋に入った瞬間、パフィがポツリと呟いた。


「すっごく帰りたくなったのよ」

「うん……」


汚物を見るような目になっているパフィとネフテリア、そしてハーガリアン。アリエッタは目を点にし、ムームーは苦笑い。

明らかに冷静さを欠いた目になっているネフテリアが、挨拶代わりに質問を投げかける。


「つかぬことをお伺いしますが……貴方は変人ですか?」

「初対面の質問ですかねそれ!?」


ムームーが思わずツッコミを入れてしまった。

そんな無礼さ抜群な質問に対し、目の前に立つ男は豪快に笑った。


「ハッハッハ! よく言われるが、儂は変人ではないぞ?」

「よく言われるのになんでそんな無自覚なんですか!?」


悪口もツッコミもどこ吹く風と、白髪を可愛らしいツインテールにした筋肉隆々の初老の男は、ネフテリア対してお辞儀をした。


「話は伺っております。ファナリアという世界リージョンから来て下さった王女様ですな。儂はスタークと申します。よろしくお願いします」

「チェンジで」

『ちょおっ!?』


死んだ目になってチェンジを言い渡すネフテリアに、ハーガリアンとムームーが慌てて止めに入った。

ここまで変な運ばれ方をして、心身共にすっかり疲労困憊な所に、インパクトのある男に絡まれたのだ。もう完全に気力を失っている。

そんな王女を見て、スタークはマイペースに笑い飛ばした。


「ハハハハ! 王女様は冗談がお得意なようですな! しかしここは儂がお相手させていただきましょう。ソルジャーギアの司令として」

(だめだこのジジイ、話が通じないっ)


ここでゆっくり話をする為に、部屋の隅にあるテーブルへと移動。当然どれも完全な四角形なので、アリエッタには積み木のテーブルセットにしか見えない。

全員座ったところで、スタークがニヤニヤしながらハーガリアンに話しかけた。


「おう、ハーガリアン。なんでこんな所にいるんだ? トランザは暇なのか?」

「いや、むしろ接待に復興にと忙しいな」

「……なんじゃそりゃ?」

「それよりも、アンタがツインテール派だったとはな……」


ハーガリアンはスタークがツインテール派リーダーという事はもちろん、ツインテール派だという事すら知らなかった。

という事は、今の髪型はムームーを招く為に整えた派閥的な装いだろうと、ネフテリア達は推測していた。


「気付かれないように活動するのは、儂にとっては簡単なことじゃな」


なるほど、このスタークという人物は潜入に長けているようだ……と、感心するネフテリア。こういう人物は敵対していなければ実に頼もしい。何かあれば頼らせて欲しいと考えていた。


「普段からツインテールにしているから、おかしなジジイだなと思っていたが」

ゴンッ

「いやそこは気づかないのがおかしいのよ!?」


苦々しい顔のハーガリアンの言葉を聞いて、ネフテリアはテーブルに頭をぶつけ、スタークに対する評価を粉砕した。どうやら普段からツインテールだったらしい。ネフテリアの代わりにパフィが全力でツッコんでいた。

ここで、別の隊員が部屋に入ってきて、テーブルに飲み物を置いて退室した。当然コップは四角形。アリエッタには可愛いコップでジュースが配られていた。


「まぁそれはそれとして、ここに来たのは?」

「ツインテール派とレジスタンスの壊滅が目的ですね」

「……ズバリにも程がありますな」


テーブルから身を起こした王女から放たれた返答に、スタークとハーガリアンが冷や汗を流した。

普通なら作戦を練って、周囲から包囲するなど、時間をかけて行うべき行為。ネフテリアの実力を見たハーガリアンは、もしかしたら不可能ではないのか?という意味で疑問に思っているのだが、こういう強引な行動に出た理由はちゃんとある。


(ずっとお店から離れてるわけにもいかないのよね……)


ネフテリアは既に経営者オーナーである。予定より長期間離れてノータッチなのは、店としてもあまり良くないのだ。

出来れば壊滅。最低でもサイロバクラムの情勢を犠牲にしてでも、いやがらせで現状を引っ掻き回してから帰る所存であった。まさに魔王女である。


「まぁ、レジスタンスが誰かは、ムームーさんを勧誘する事を発表した総会で、何人か目処はつけてありますが。しかし、メンバーを減らされるのは少々困りますな」

「なにその総会、怖いんですけど」

「それはそうと、話は聞きました。ポニーテール派は感心しませんな。ぜひツインテール派に、どうですか?」

「いやどうですかと言われても……ん?」


ツインテール爺にムームーが引き始めたその時、遠くから地鳴りのような音が聞こえてきた。


ズゥン…ズゥン…

「何の音なのよ?」

「総司令! 大変です!」


ハッキリと音が聞こえたその時、ドアの外から隊員の叫び声がした。スタークが入室を許可すると、隊員が駆け込み、状況を早口で説明する。


「西の方角に正体不明の巨大な樹木のような物が現れました! こちらに向かって歩いてきます!」

「この地響きはそれか。しかし意味がわからんぞ。樹木のようなとはどういう事だ?」

「それがおかしいんです。見た目は木そのものなのに、グネグネ曲がってるし、エーテルラインもありません。まるで人のように動いているんです」


サイロバクラムでは木が曲がるという事はありえない。植物は四角形になり、外側には栄養となるエーテルの線が浮き出ているのだ。

慌てふためくサイロバクラム人達の横で、ムームーがどっと汗をかきながら青ざめていた。


「……ねぇ、その木ってもしかして」

「当然、ミューゼの仕業ね」

「そんな事出来るの、たぶんあの子しかいないのよ」

「デスヨネー」


昨日の事もあり、犯人はあっさり特定されていた。

すっかり慣れているのか、パフィとネフテリアの顔は平常通りである。アリエッタはもちろん何も分かっていない。


「どうする?」

「ミューゼだけなら大した理由なく移動手段にしてるかもなのよ。でも、あっちには総長がいるのよ」

「そうよねぇ。ピアーニャがいるんだから、何か目的があると思うんだけど……」

「えっと……ミューゼの評価低すぎ?」

「面白半分でわたくしが出てもいいけど」

「迷惑行為に拍車かける気満々ですね」

「まぁとりあえず様子見なのよ」


呑気に小声で話をする横で、ソルジャーギア隊員達があーでもないこーでもないと、木の巨人に対する対策を大急ぎで練っている。何か感づいていそうなハーガリアンは、ネフテリアの方をチラチラと見るが、様子見を決めたネフテリアはプイッと視線を逸らした。


「報告です! あの巨人の傍に、ツーサイドアップ派のメンバーが多数待機!」

「なにぃっ!?」


相手がツーサイドアップ派となれば、ツインテール派リーダーとしては黙っていられないスターク。何かのアーマメントを起動した。


「それは?」

「ツインテール派の緊急収集命令だ。ヤツらを迎え撃たねばならぬ」


ハーガリアンにバレてしまった事もあり、もはや自分の立場を隠す気は無い様子。スタークはその後すぐに部屋を出て行った。ハーガリアンはネフテリア達の同行者なので、もしもの為に残っているが。

あわただしい周りの様子を見て、アリエッタは不安に思っていた。


(何かあったんだな。さっきから凄い音してるし。ここは大丈夫なのかな?)


気持ちを落ち着けるために、出されたジュースを一口。とその時、


ズシン

「ぅわきゃっ!?」

ぱしゃっ

「大丈夫なのよ、アリエッ……」


大きな振動で椅子から転げ落ちてしまったアリエッタ。パフィが慌てて手を伸ばすが、落ちた拍子に突き出されたアリエッタの小ぶりなお尻を見て停止してしまった。


「こらこら……」

「ハッ! 危ないのよ、魔性のお尻なのよ」


改めてアリエッタに手を伸ばし、起こしてあげた。


「ふえぇ……ぐすっ……」


ジュースが零れ、ボディースーツがぐっしょりと濡れている。突然の事に驚いたのと、落ちた時に頭をぶつけて痛かったのと、ジュースが零れてしまった事で、アリエッタは泣き出してしまう。


(うげっ、もしかして……)


を察したネフテリアが、ゆっくりと音をたてないように後退り。気付かれないように椅子の後ろに隠れようとした。


「テリア」

「はひっ!」


その途中で名前を呼ばれ、背筋を伸ばして上擦った声で返事をした。残念ながら隠伏いんぷくは失敗に終わってしまった。


「ツインテール派を手伝いに行くのよ」

『仰せのままにっ』


以前に王城で見たパフィの怒りを思い出し、下僕の様にパフィに従うネフテリア。その冷たい雰囲気に当てられ、ムームーも一緒になって返事をしている。

ハーガリアンも、パフィの目を見てしまったせいで、自分が何をすれば生き残れるかを瞬時に考え、速効でドアを開き、カタカタ震えながら「こちらです」と案内をする始末。

案内されてやってきたのは、ソルジャーギアのグラウンド。そこにはスタークとソルジャーギア隊員、そして集まったツインテール派達と思しき人達が並んでいた。


「おやパフィさ……っ!?」

『ひぃっ!?』


アリエッタを抱っこしながら、ただならぬ殺気のような何かを放ちながらやってきたパフィを見て、スタークを始めとする全員が恐れおののいた。


「アレを止めるのに、私も手伝うのよ」

「は、へ?」


そうやることを伝えたパフィは、アリエッタをネフテリアに預けてから、返事を待たずにパーツの中に手を入れた。実は少しゴツめのパーツは鞄の役割も担っていたのだ。小麦粉と少量の水を取り出し、こねていく。


「な、なにを……」


スタークが質問するが、それには答えず、別の液体と色とりどりの葉を生地に入れ、持ち前の能力で手を動かさずにこね続ける。混ぜた液体はアリエッタの木(仮)の樹液。その効果によって生地が増殖していく。

サイロバクラム人やムームーが唖然とする中、生地が建物よりも大きく膨らみ、人の形を模っていく。そしてほとんどの部位を橙色に染め、腕や足を青色、関節は白色で構成していった。色に応じて様々な効果を発揮するアリエッタの木(仮)の葉による着色である。


「あ、これ前にアリエッタちゃんが絵で描いたの見たことある……」

「おおー」(ぱひーすごい……おっきい……)


まさかの巨大ロボ(小麦製)に、アリエッタは泣き止んだ。


「仕上げなのよ」

「え、あの? ちょおおぼぼぼ」


形が整い、最後の仕上げとばかりに、スタークを生地の中に埋め込む。そのスタークは生地の中をうねうねと移動させられ、額の部分から上半身だけを外に出された。

その瞬間、なぜか目の部分が光り、頭の左右から白色の柔らかいロングパスタが無数に生えた。その見た目は、ツインテールをしたロボットである。


「テリア、あそこまで行きたいのよ」

「す、【空跳躍スカイリープ】!」


指名されたネフテリアは、慌てて魔法を発動。4人で空中を駆け上がり、肩の付近にやってきた。

続いて声の拡張を頼まれ、遠くまで声が届くようにすると、パフィが叫ぶ。


『出動なのよ! パスタロボ、ツインテイラー!!』

「もうやだ早くおうち帰りたい……」


ネフテリアの心は折れてしまったようだ。

からふるシーカーズ

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