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夏祭り当日。
「わーっ!瑞樹久しぶり!」
綺麗な浴衣に身を包んだカナちゃんに手をぎゅっと握られる。誰が見ても美人で、おまけに性格も良い。完璧な女性。
隣の隼兄も…浴衣、すっごく似合ってる。
すれ違う人が振り返るくらい、お似合いの2人だ。この2人と幼馴染なの、少し誇らしい気すらする。
悠と俺は、ラフな普段着だ。
初期の頃から付き合っていた2人はいつからか浴衣を着ていたけど、俺たちはそんなキャラじゃないし。
恋人と来るなら、浴衣着てもいいって思えるんだろうか。
でもまあ、悠の浴衣姿は少し見たかったかも……絶対言わないけど。
4人で屋台に向かって歩き出す。
町の一大イベントとだけあって賑わいがすごい。人がかなり多く、歩くのも大変だ。
話しながら近くを歩いていた人が、こちらに気づいていなかったようで、ドンっとぶつかってしまう。
やばっ……咄嗟のことでバランスを崩しそうになったところを、ぐいっと悠に支えられる。
「あ…ありがとう…」
「ったく、どこ見てんだ…」
ぶつかってきた人に向かって舌打ちしながら、なんでもないように再び歩き出す悠。
悠のこういうところが、きっとモテるんだろうなぁ…。
これじゃあ他のやつらも、悠のこと好きになっちゃうんじゃん。
……ん?他のやつら“も”………??
「大丈夫?ずっと上の空だけど」
「へっ?!あ、大丈夫」
っぶねー!変なこと考えるな俺……!
前を歩くカナちゃんの髪飾りが揺れる。綺麗だな。
そういえば、最後に4人で来た時もこんな感じだった。最終的に隼兄とカナちゃんとはぐれてしまい、後半は悠と2人で回ったんだっけ。
射的が下手だの、俺が迷子になったりで最後は大喧嘩したっけ……。
だめだ、ろくな思い出が無い。
食べものをつまんだり、ゲームを楽しんだり。4人であの頃に戻ったみたいで嬉しい。
っと、あぶない。楽しくて忘れるところだったけど…。
「じゃ、隼兄とカナちゃん、あとは2人で楽しんでよ」
「え、大丈夫?」
「もちろん!むしろお邪魔しちゃってごめん」
「全然!…悠、瑞樹いじめちゃだめだよ」
「わーってるって」
カナちゃんに咎められる悠をみて思わず笑ってしまう。
あとは2人で過ごしてもらわないと。
せっかくの夏祭り、2人のいい思い出になるといいな。
隼兄達と別れたあと、しばらく悠と2人で歩く。
「……大丈夫?」
「え?なにが?」
ふと、人混みから離れたところで立ち止まる悠。そのまま顔を覗き込まれる。
「無理してない?」
「なんで?………」
「なんでって……」
………あっ
も、もしかして。
悠は、俺が隼兄のことまだ好きだって思ってるわけで…
「はぁ、あいつマジで空気読めねーよな」
空気読めない…?それって、隼兄が俺を誘ったこと、?
苛立っているような声色で、バツが悪そうに頭をかく悠。俺はじっと、悠から目を離せない。
「お前も断れよ、何が楽しくて3人で好きな奴らのデートに……、悪い」
「……」
もしかして…
「今日来たのも俺のため…?」
「は?……まぁ、お前明らかに無理してそうだったし、……え、あいつらと3人がよかった?」
まさか。俺は勢いよく首を横に振る。
悠は少しホッとしたような表情で続ける。
「っ、とにかく、花火まで見るだろ?欲しいのあったら言えよ…なんでも」
「…っ」
俺のために無理して今日来たってこと?
それにさっきから、俺のこと必死に慰めてる…?
……っ。
どうしよう、気づいてしまった。
好きだ。
間違いなく、悠が好きなんだ俺。
意地悪だけど、時折見せるこの不器用な優しさがたまらなく好きなんだ。
「ものはいらない……花火、見たい」
「……ふ、あっそ」
眉を下げて少し笑う悠。くしゃっと頭を撫でられ、頬が熱くなるのがわかる。
「い、いこ!」
「っおう」
悟られないように歩き出す。
どうしよう、自覚したらまともに悠の顔が見れない。
と、咄嗟にぎゅっと手を握られる。
「ちょっ、ここ外」
「暗くなってきたし見えねーって。お前すぐ迷子になるし」
「……うるさい…」
胸がぎゅっとなって苦しい。いつものようなやり取りさえも、たまらない気持ちになる。
どうしよう、超えちゃいけない線、俺だけ超えてる。
でも今は、この手を離したく無い。ぎゅっと握る手に力を込めて、俺は歩みを進めた。
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