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河嶋
知らない世界と見知った顔
冬弥said
俺と咲希さんは、司先輩の事について探ろうと思い立ったが、自分たちが赤ん坊である以上、取れる行動はほとんどない事を思い出す。
仕方なく俺たちは、月日が経つのをひたすら待つ事にした。
月日が経ち、俺たちは、1歳半になった。
そして俺たちが過ごしたこの数年間で分かった事がある。
まず、司先輩はショーキャストではなく俳優の道に進んだ事。
最近は売れてきている為、送り迎えが必要な保育園や幼稚園に俺たちを通わせない事にした事。
その代わりにベビーシッターの方が家に来ると話してくれた。
最後にコレは俺の憶測にすぎないが、俺たちは司先輩の本当の子供で、母親はいないという事。
俺たちは、母親の事を気になりはしているが、あまり行動が出来ないため、ゆったりと家で過ごしている。
そして今は、それよりも深刻な悩みがある…
それは、司先輩の呼び方だ。
これは咲希さんもまだ決まっていないらしい。
まだ一応言葉は、喋れない設定にしている。
なぜなら今の時期に喋ってしまったら、赤ん坊らしからぬ事を言いそうだと自負しているからだ。
しかしそれが俺にとって唯一の救いになった。
そんな感じで最近は、ずっと司先輩の呼び方についてを考えている。
そのせいか司先輩は、俺を見て
「あまり眉間にシワを寄せるな冬弥
せっかくの顔が台無しになるぞ?」
と言葉をかけられる事が多くなった。
今日もまた同じ事を言われた。
少し考えるのを止めようと思い、俺はソファーに座ってテレビを見る事に集中しようと思った。
その隣に咲希さんを抱えている司先輩も座った。
喫茶店の特集がやっていたので、それを見る事にした。
真剣に見ている俺を見て司先輩は、微笑んだ。
「冬弥は、オシャレだな」
司先輩が俺にそう言った時、家のチャイムがなった。
司先輩は、ソファーへ抱えていた咲希さんをそっと置き、玄関へと向かった。
「今開けるぞ」
喋り方からして、知り合いだと分かる。
司先輩が玄関のドアを開いたその先には、望月さんが立っていた。
もしかして…司先輩が頼んだベビーシッターって望月さんだったのか?
いや…でも咲希さんからの話だと望月さんは、家事代行をしていると聞いていたが…
やはり咲希が昔言っていた様に、ここは俺たちの知らない世界なのか…?
そう疑問に思っていると司先輩が望月さんを連れて俺たちの前へと来た。
望月さんは、俺に目線を合わせる様に屈んで笑いかけた。
「すまんな穂波
咲希を起こした方が良いか?」
「ありがとうございます
けど大丈夫です」
そう言って望月さんは、また俺に視線を向けた。
「こんにちは冬弥くん
司さんが仕事でいない時、私が代わりに冬弥くんたちと一緒にいる事になりました。
これからよろしくね」
一応喋れない設定の俺は、こくんと頷いた。
その時、隣で寝ていた咲希さんが目を擦り起きようとしていた。
「ふわぁ」とあくびをした後、望月さんに気がついたのか少し動きを止めた。
「ほなちゃん…?」
咲希は、まだ少し寝ぼけた声でそう問いかけた。
そして、その瞬間を目撃した司先輩と望月さんは、 目を見開いた。
司先輩に関しては
「さ、咲希が喋った〜〜!?」
と驚きのあまり、いつもより大きな声を出していた。
そして数秒経った後、少し悲しそうな表情をした。
「つ、司さんのマネをしようとしたんですよ、きっと! 」
慌てながら司先輩を慰めていた。
そこで俺は、ようやく司先輩が何に対して悲しいと思ったのかを理解した。
司先輩なら確かに自分以外の人、しかも咲希さんからしたら初対面の人の名前が初めて喋った言葉だったのだから、悲しくなったのかもしれない。
司先輩をなんとか元気に…笑顔にしたい
そう思った俺は意を決して声を上げた。
「つ、司さん…」
今は、司先輩と言う言い方に慣れたからか、すごく恥ずかしい気分になった。
頬が熱くなる感覚がする。
そんな状態のまま、司先輩の方を見てみると司先輩は、驚いた表情を浮かべた後、少し涙ぐみながら俺を抱きしめた。
「冬弥!!
ありがとう!そしておめでとう!」
と先程の様に大きな声を出した。
それがとても嬉しかった。
この生活が一生続けば良いと俺は、思ってしまった。
咲希said
お兄ちゃんは、泣いちゃったアタシを抱き上げてリズム良く揺れながら背中をさすってくれた。
それがすごく気持ちが良かった。
いつの間にか眠っていたみたいで、起きた時アタシは、ソファーに座っていた。
自分がどんな状況か理解しようと、ぼやけた目を擦ると目の前には、アタシの良く知る人物である、ほなちゃんが居た。
「ほなちゃん…?」
まだ寝ぼけてるのかな?
こんな所に、ほなちゃんがいるはずないもん。
そう思っていたら急に耳が痛くなった。
それと同時にお兄ちゃんの声が聞こえた。
「さ、咲希が喋った〜〜!?」
その言葉を聞いてハッとして口を塞いだ。
夢じゃなかった?
しかもアタシ、声に出しちゃってた?
ちゃんと見て確認しようと思い、目の前の光景をよく見てみると、しょんぼりしたお兄ちゃんとそのお兄ちゃんを慰めてる、ほなちゃんがいた。
訳が分からなくて、とーやくんに助けてもら思い、隣を見てみると顔を赤くしながらお兄ちゃんの名前を言うとーやくんがいた。
そして、そんなとーやくんに泣きそうになりながら抱きつくお兄ちゃん
もう訳が分からなかった。
困った表情を浮かべていると、ほなちゃんがアタシの方を見た。
「自己紹介まだだったね
わたしは、望月穂波です。
司さんがいない間、咲希ちゃんと冬弥と一緒に過ごす事になったの
これからよろしくね」
とーやくんがアタシに教えてくれたベビーシッターの人ってほなちゃんだったって事?
なんだか嬉しい様な悲しい様な気持ちが込み上がってきた。
少し悲しくなったけど、それを奥に引っ込めてアタシは笑顔で頷いた。