Ambivalence
誰も通らない。車も今は来ない。信号は青から黄色に変わり始めてる。気温は低く、時々吹く風は冷たく肌に刺さる。
今、言う。全部を告白する。
歩行者用信号が青になる。昨日や一昨日とは違う。もう逃げない、何がどうなろうと今ここで話す。ばっちり目が合う。ボクを逃がさない。
もう一度深く息を吸い続きを吐く
「その、……」
だめだ、上手く言葉に出せない。
さっきまでの気合いが全部一瞬にして嘘に変わった。
怖い
好きだった所が嫌いになったなんて言えない。
それ以前に
こんなこと言ったら重いかもしれない。嫉妬深いとか、……絶対重い、。普段からそう思われたくなかったから全部言ってこなかった。急に言われたら保科も引くかもしれない。ボクのことを嫌うかもしれない。ボクのことを捨てるかもしれない。
「鳴海さん、なんか、、その、」
「少し重いんやね、笑」
「僕、ちょお耐えられへんかもしれへん」
「鳴海さんならもっと、僕よりももっとええ人います」
こんなこと言われたらたまったもんじゃない。
絶対泣く
怖い
漠然とした不安がボクを襲う
時間が経つにつれ心臓の鼓動が早くなる気がする。
不安と焦りが心臓から、体の中心からジワジワと全てに広がる気がした。心がざわざわして落ち着かない。
“ 怖い 不安 嫌われる 捨てられる 引かれる “
「その、……っ、」
言葉が出ない
続かない
自分の心臓を耳に突きつけられてるのかってぐらいうるさい。耳障りだ。臓器の音しか聞こえない。
どくんどくんどくんどくんどくんどくん
「鳴海さん、、?」
手を取られる。
目が覚めたような気がした。慌てて、でもさりげなく、恐る恐るちらっ、と保科の方を見る。
好きな要素しかない。全部が好き
小さい顔に綺麗な白い肌
毛先は黒く、紫がかったサラサラな髪の毛
鮮やかで派手、暗い色寄りの赤の瞳
長いまつ毛
高くて綺麗な鼻
ぷっくりとした艶のある唇
そこから見えるするどい八重歯
白く細い首
綺麗なうなじに繋がる首筋のライン
整えられたうなじ
くっきり、しっかり見える鎖骨
細いがしっかりと筋肉がついてる身体
きゅっとくびれてる腰
スラッとした長い足
たった4センチしかない身長差
「ゆっくりでええから、」
「教えてください、。」
この声も
そのお前の優しさも
全部全部
全部が大好きでしょうがない
「嫉妬、した、。」
「合同練習、のとき、…」
「お前が他の奴の肩に手おいて気使ってるの、見て、…」
言った
言った
保科は??どんな顔してる??次になんてくる??なんて言う??なんて答える??
顔を上げる
「それだけですか、??」
「……ぅん、…」
「ごめん、。」
「嫉妬、、深い、よな、…その、重いし、……」
「……」
引かれたかな
無言で目が合う
目を合わせるのが精一杯
「…ふふ、、」
「、、は、、、、?、」
「ごめんなさい、笑ってしもて」
「すっごく安心しました」
「……、」
「…寂しい思いさせてごめんなさい」
「僕も、もう少し距離考えます」
「ぅん、」
「…嫌われたかと思いました」
「、」
「なんやその日からずっと距離空いてて寂しかった」
「、ごめん」
「……、帰りましょ鳴海さん」
「、……」
無言で頷くことしかできなかった。
まだひとつ言えないことがある
嫉妬したは嫉妬した。
距離も少し近くて嫌だ
ただ、まだ少し、……
お前の優しさが他に向いたのが嫌だった
それが言えなかった
きっと保科は人との距離について思ってるのだろう。それもそうだが、、そうだが、
言えなかったな、。。
~
久しぶりに2人揃って家に入った気がする。
「ただいま〜、」
「ただいま」
そこからは流れるように全て、
時間が経つのが早く感じた。
「鳴海さんもう寝ますか??」
「ねる」
「、そか、」
「ほんなら僕も寝よ」
大きめ
ふたりで寝れるよう
布団に入って30分ぐらいだろうか。ずっとモヤモヤして寝ようにも寝れなかった。まだ少し、やっぱり心に何かが刺さって取れない。つっかえる。
さっき言えなかった。
振り返ってみる。保科は背中を向けて寝てる。
…
近寄って背中にくっつく。
暗く静か。
告白
、
「……合同練習で」
「宗四郎の優しさが他に向いてるのが嫌だった」
「好きだった所が苦しくて、嫌いになりそうで」
「……怖くて、」
「、嫉妬深くてごめん、、、」
「なにも、……全部下手くそで、、」
震える声
寂しい。苦しい。好き。好きすぎてたまらない。好きすぎるが故にここまで、嫌いになる程に、。
頭を保科の背中にうめる
目頭が熱くなる
目尻が水分を止めるが、溢れ出す。
ちゃんと伝えたかった。情けない。弱い。
「……、っ、」
情けな
直接、正面堂々と言えない。怖くて言えない。
人が聞いてない時にしか言えない。
泣くことしかできない。
自分が大嫌い
「…、弦くん」
「……ぇ、…」
「ぉ、起きて、…」
「……それで、、全部ですか??」
「っっ、……」
無言でこくりと頷く
返事ぐらいできるようになりたい
もっとちゃんと、全部できるようになりたい
「…そか」
ねくすと70
またじかい♡⃛
追記
誤字がありました💧大変失礼しました💧💧
コメント
7件
みるの遅れちゃってごめんなさい!🙇🏻♀️🙇🏻♀️ 今回は特に鳴海さんの感情が繊細に表現されてて、めっちゃ見ててドキドキハラハラ(?)しました😹 やっぱりこの2人って、何か伝えた時に受け入れて改善(?)しようとする姿勢がほんとに素晴らしいですよね🥹💖💖 保科さんがなんて返事するのかすごい気になります😖🫶🏻🫶🏻 今回もめっちゃくちゃ最高でした!💖💖💖💖 続き楽しみに待ってます🥹🫶🏻🫶🏻
やばい最高👍 なんか2人の関係が良すぎて泣けてくる😭続き待ってます!頑張ってください🔥🔥💪
本当にこのお話大好きです〜! 今回は鳴海の気持ちがすごく溢れてる感じがして感動しました! この後の保科の台詞が気になりすぎますっっ!