「よければ、どこがいいのか、教えてほしい」
「そんなの、言えな……っ」
「言わないと、わからない。私は、経験がそう深くはないのだから……」
「……こ、こで、言うの……は……い、じわ…る……」
息が上がって、上手く言葉にならない。
「言ってくれないか? うん?」
焦れるような指の動きとともに、耳に吐息が吹きかかる。
「う……ん、そこ……」
「ここが、感じて……?」
無言で頷くと、彼の長くしなやかな指が、両脚の狭間にもどかしげに触れて、内奥から甘い痺れが引き出された。
「……貴仁さん……」
「……うん?」
「好き……貴仁さんのことが……」
「ああ私も、君が好きだ……」
「ううん」と、首を横に振る私に、「どうした?」と、彼が首を傾ける。
「……名前で、呼んで」
「名前……そうか、……彩花……好きだ……彩花」
名前を呼ばれる度に、身体が呼応するようにじんと熱を帯びて、じりじりと芯から追い上げられていく。
「……ん、もう……っ」
つま先を這い上がるように、内腿へ微電流のような感覚が走ると、
「感じて……彩花」
彼の悩ましく魅惑的な声が、熱を孕む吐息とともに、耳にぴったりと付けられた唇から吹き込まれた。
そうして私が快感を手放すと、「……起きて、シャワーを浴びてくるといい」と、彼にベッドから抱き起こされた。
「あっ、だけど……」と、彼の顔を上目に見やる。
私を満たしてくれたのに、気づけば彼の方は上こそ脱いではいたけれど、ブランケットに隠れていた下は身に着けたままで、それ以上の行為に及ぶ気はなさそうだった。
「私のことはいい、初手から君に無理強いをするつもりもなかったからな」
「でも、本当にそれで……」
心苦しいような思いで見つめる私に、チュッと触れるだけのキスをして、彼が「いいんだ」と、くり返す。
「ほら、シャワーを浴びてきなさい。疲れただろうから、ゆっくり眠るといい」
そう言って微笑う彼は、きっと無意識のうちに寝てしまっていた私を気づかってくれているんだろうと窺えて、心がより痛んだ。
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