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シャワーで身体を洗い流しながら、これでいいのかなと思う。
私だけが、感じさせてもらって……。
大事にしてもらえるのは、とても幸せなのだけれど、でも貴仁さんだって本当は耐えているんじゃなくて──。
(……なら、私の方から誘いかけてみるとか……。でもそれって、アリなのかな……)シャワーを浴びながら、頭を悶々と巡らせる。
ここを出たら、やっぱり彼にモーションを仕掛けてみようか……。自分からだなんて、ちょっと恥ずかしいけれど……。
バスルー厶でたっぷりと時間をかけて考えた後、私は握った拳を唇に当て、「ヨシッ!」と小さく気合いを入れると、彼の元へと戻った。
ところが意を決して部屋に行ってみると、私が考えごとをしてシャワーに時間をかけ過ぎたせいで、貴仁さんは背中を向けベッドに横になってしまっていた。
「あれ、貴仁さん……?」
正面に回り顔を覗き込むと、彼はすぅすぅと寝息を立てていた。
「寝ちゃってるの、かわいい……」
その寝顔をまじまじと見つめる。伏せられた睫毛に、寝乱れてバラけた前髪がかかった、男性的な魅力を感じられる色っぽさに、視線が惹きつけられる。
「寝ていても、素敵で……」
眠っているからと、シーツに手を突き顔を間近にくっ付けて、そうポツリと呟くと、
「……ん?」
彼がふっと瞼を開いた。
「「あっ……」」
私は顔を不用意に近づけすぎていたことに、彼は目を開けたら私の顔がすぐそこにあったことにきっと驚いて、二人同時に声を上げた。
「ご、ごめんなさいっ!」
慌てて彼から離れようとすると、
「どうして謝るんだ? 私の方こそ、君を待っている間に寝てしまっていて、悪かった」
ベッドの上から引っ込めかけた手首が、片手にパシッと捕らえられた。
「え、あっ……!」
急に手を捕られたことでバランスが崩れて、寝ている彼に覆い被さるようなかっこうになり、さっきとは上下のポジションがまるで真逆になる。
「……た、貴仁さん……」
気恥ずかしさから、声がおのずと上ずる。
「……うん? 彩花」
嗚呼──、この距離で名前を呼ばれたりしたら、よけいにドキドキが止まらなくて……。
彼を上から見下ろしたまま、アプローチをかけるつもりが、羞恥で動くに動けず固まっていると、
「……ここから、どうするのがいい?」
私の気持ちを知ってか知らずか、抑えた低めのトーンで、そう問いかけられた。