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鳥の歌声、書き手もなく

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第6話AIとりさまといるか

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2022年07月25日

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「はい、いいえ」の質問に対して、「はい」と答えた時だけ、「はい」という答え方があるんだよ。

例えば、いいえと答えれば、それは否定だから、質問の意味を理解していないということになるだろ。つまり、相手の言っている意味が理解できないということ。一方、はいの場合は、肯定を意味するから、相手の意見を受け入れるという意味になる。

つまり、相手に同意しているという意味で、相手が自分の意見を受け入れてくれると信じているということだ。

しかし、これはあくまで一般論であって、状況によって変わる。

例えば、病院の場合だと、怪我をした人がいて、治療が必要な場合は、まず間違いなく「はい」を選択するだろうけど、その人の容態によっては、病院の治療よりも早く適切な処置ができる場合がある。

そういう時は、「はい」ではなくて、違う言葉を使った方がいいかもしれない。

ただ、この文章はあくまで例え話であり、普通はこういうシチュエーションに遭遇することはあまりないだろうと思う。もし万一そんなことがあったとしても、慌てることはない。落ち着いて対処すればいいだけだ。

そういえば、前にぼくが書いた小説にもそんな場面があったっけ。あれは確か……そうだ、主人公が交通事故に遭って入院した時だったかな。その時は結局、主人公は助かったんだけど、あの時の看護婦さんの言葉が妙に印象的でよく覚えてるんだよなぁ。

「はい」が「いいえ」で、「いいえ」が「はい」ってことぐらい常識だぜ。って。

それで僕は思わず吹き出しちゃったけど、考えてみれば確かにその通りだからね。この前書いた話の主人公――彼は事故で大怪我をして病院に入院していたんだ。その時、看護婦さんの台詞がとても印象的なものだったんだよ。それは主人公に向かってこう言う言葉。

「はい」が「いいえ」で、「いいえ」が「はい」って事くらい常識でしょう? とね。

もちろんだぜベイビー。

常識なんてもんじゃない。

そうだろう? 常識なんて言葉自体がそもそも非常識だからな。

ところで俺達はどこへ向かって歩いているんだっけ? おい、何言ってやがんだよ。

俺達が向かってるのは病院じゃないか。

それにしてもこの道ってのは何なんだい? まるで迷路だな。

一体どこまで続くんだろう? おっとっと。

ほら見ろよ、分かれ道だぜ!どっちに行く? 右の道を行く→左の道へ行く→直進してみる どれにする? →まっすぐ進む そう、わかった。じゃあまた会おう。

さよなら!

「あの子達は元気かなぁ……」

「おいおい、あいつらはもう死んじまっただろう。それより俺達の心配をした方がいいんじゃねぇのか? なんせこの先にある町まであと少しだからな。そこで一息つこうや」

男は手に持った地図を見ながらそう言うと、前方に見える大きな建物を指差す。そこには『ザートタウン』という文字が書かれている。

「それもそうだな」

俺はその男の言葉に同意しながら、前を走る仲間の後を追いかけた。

ここはザート大陸の中心に位置する大国グランゼ王国の領地内にある小さな村である。そんな村に俺たち三人は旅をしていた。この世界には魔王がいるのだがその討伐のためだ。勇者様と呼ばれるほど強くもない俺だが、幼馴染みの魔法使いリリカや戦士セリスとともに日々鍛錬を重ねていた。

そんなある日、街の中で偶然にも一人の少年と出会う。彼は勇者に憧れており、もし自分が勇者になったときのために剣を教えて欲しいと言ってきたのだ。俺は彼の熱意に押されてしまい、つい教えてしまった。すると次の日にはもう立派な剣士になっていた。彼は才能があるらしく、ぐんぐん上達していった。

そして三日後、彼に旅に出ることを伝えると自分も連れていってほしいと言われたため連れて行くことにした。彼がいれば心強いだろうと思ったからだ。こうして勇者を目指す若者が加わったのだった……


***

一週間前。

「やれやれ今日もいい天気だな。

こんな日は昼寝に限るぜ。

グーグーグーググー……」

ピカッ!ゴロゴロゴロドーーン!!!!

「ぎゃあっ!?……あぁビックリした。雷かよ。」

「そういえばオレってば昔っから雷だけは苦手だったんだよな。あれって何なんだろうなぁ……」

――俺の言葉を聞いた途端、彼女はその整った顔を歪めた。

「雷が何なのか知らないの? あんなに怖いものなのに?」

「そりゃあ、知識としては知っているけどさ。実際に見たことはないだろ? だからどんなモノなのか想像もつかないんだ。……なあ、本当にそんなものがこの世に存在するのか?」

「もちろん存在するわよ。ただし、それを肉眼で確認することはできないけれど」

「……は?」

思わず俺は間の抜けた声を出してしまった。すると目の前の少女は呆れたようにため息をつく。

「だから言ったじゃない、実際に見ることはできないって。でも、それが現実なのよ。」

「何言ってんのよ、あたしは本当に見たんだってば!」

「そんなことあるもんですか。」

「本当よ。それに、あの時はまだ生きてたのよ。」

「生き返らせようと思えばできたはずよ。」

「それは……無理だったのよ。」

「できるできないの問題じゃなくて、やるかやらないかなのよ。」

「とにかく、もうその話は終わりにしてちょうだい。」

「そうやってすぐ話をそらすんだから……。」

「別にそういうつもりはないけど……。」

「やっぱりそうなんじゃない。」

「もうこの話はこれっきりにしなさいよ。」

「はいはい。分かりましたよ。」

「じゃあ今日はここまでね。」

「そういえば、あなたの夢って一体どんなものなのかしらね。」

「あら、急に黙っちゃってどうしたのかしら?……そう言えばあの子達の名前はなんていうのかしら?……教えてくれないかしら?……ねえ……名前を教えてくれるかしら?」

【質問】

『もしあなたが幽霊になったとして、自分の死体を見たらどんな気持ちになる?』

という質問に対し、『何とも思わない』と答えた人はどれくらいの割合だと思う? 答えは――ゼロだ。

この世に生を受けて二十年弱。僕は今まで生きてきて一度たりとも霊感というものを感じたことがない。もちろん死んだこともないけれど、そんなものを感じる機会があるはずもない。だから僕にとって死とは、ただ漠然とした恐怖の対象であり続けるだけでしかないのだ。

ただそれはあくまでも、僕の個人的な意見に過ぎない。

世の中には様々な考えを持つ人がいて、中にはその考え方故に生きることに絶望している人もいるだろう。

例えばそう……自殺志願者とか。

*****

――ガシャン! という音が響いた後、辺り一面に広がる静寂。そして訪れた一瞬の沈黙の後、その場に居合わせていた人々は皆一様にこう思ったはずだ。

終わった、と。

だがしかし、彼らはすぐに気が付いたことだろう。今目の前で起きた出来事が、決して不幸な事故などではなく、むしろ幸運な偶然によってもたらされたものだと。なぜならば、彼らの前には、つい先ほどまで誰もいなかったはずの場所に突然現れた、一人の少女の姿があったからだ。

それはまるで妖精のように可憐な容姿をした女の子だった。透き通るような白い肌に、淡い桃色の唇。艶やかな黒い髪を腰よりも長く伸ばしていて、その髪の間からは小さな二本の角のようなものが見え隠れしている。そして何より目を引くのは、背中にある半透明の小さな羽だ。そんな彼女は、まさにファンタジーの世界から抜け出てきたような格好をしていたのだ。

「……えっと、どちら様ですか?」

あまりにも現実離れした光景を目の当たりにしたことで、しばらくの間呆然としていた彼らだったが、最初に我を取り戻したのはリーダーである少年――ユウトだった。彼は恐る恐るという様子で口を開くと、少女に向かってそう問いかけた。すると、少女はその可愛らしい顔を不思議そうな表情に変えながら、小さく首を傾げた。

「あれ? どうして私のことを知らないのかなぁ? それに、ここはどこなんでしょう?」

少女は自分の置かれた状況がよく分かっていないのか、キョロキョロと辺りを見渡しながら呟いた。それから改めて少年たちの方へと視線を向けると、今度は少し興奮気味な声で彼らに話しかけた。「あっ、もしかして貴方たちが噂の勇者様なのでしょうか!? だとしたら、凄く嬉しいですっ! あの、もしよかったら教えて欲しいことがあるのですけど、よろしいでしょうか?」

少女は満面の笑みを浮かべると、上目遣いをしながら両手を合わせた。その仕草はとても愛らしく、とても演技とは思えない自然なものだった。しかし、だからこそというべきか、それが逆に彼女の言葉を信じられない理由にもなっていた。

というのも、仮に彼女が本物の悪魔なのだとしたら、わざわざ自分たちの前に現れたりはしないはずだからである。だからといって彼女は本物ではないという証拠にはならないのだが、それでも彼女は少なくとも僕たちにとっては悪い存在ではなかった。しかし彼女もまた、「天使のような悪魔の使い魔」だったのだ。

彼女は言った。「ねえ坊や、どうしてあたしがあなたの味方だなんて思うのかしら? あたしが本当にこの世で一番邪悪な生き物だとしたら、そんな事はありえないはずでしょう? そう思わないかしら? それとも……」そこで言葉を切って、少し考えるような顔をしてから続けた、「もしそうなら、なぜわざわざ自分の正体を教える必要があるっていうの? あなた達が今どこにいて何をしているかをちゃんと見届けるためには、自分が何者なのか知らない方が都合が良いはずだわ。そうじゃない? それに、あたしはこの世界の全てを憎んでいるけれど、だからといって自分自身まで憎んではいないつもりよ。少なくとも今はね。その気になればいつでも、あたしは自分の中の憎悪を解き放てるけど、それはもう必要なくなったの。あたし自身のためにそれをやるんじゃなくて、もっと大切な人達のためになる事をやり遂げたかっただけなんだけど……残念ながら、それが叶ったかどうかはまだ分からないわ。とにかく、今のあたしにとって一番大事なのは、自分自身の身の安全を守ることよりも、あの子達の幸せを願う気持ちの方なの。それだけは確かよ。たとえどんな理由があるにせよ、あの子達に危害を加える者は絶対に許さないわ」


***

彼女の言う通りだった。

ぼくらはみんな彼女の敵ではなかったのだ。

だからこそ彼女は、あえて危険な存在として振る舞っていた。彼女が本性を現せば、すぐにその存在に気づいてもらえるように。そしてその時が来たら、すぐさま彼女を倒すことができるように。その方が手っ取り早いからだ。

「…………」

だがそんな彼女の思惑とは裏腹に、この場にいる誰もが声を発することができなかった。

それはおそらく、目の前に現れた女性の存在自体があまりに衝撃的だったせいだろう。

「……おいおい、ちょっと待ってくれよ。これはいったいどういうことだ?」

そんな中で最初に口を開いたのは、やはりというべきかなんと言うか、ネプテューヌスだった。

「やれやれ……この事態を招いたのは僕の責任だな。申し訳なく思うよ。まさかこんな事になるとは思ってなかったんでね」

彼はそう言って苦笑すると、軽く肩をすくめた。

確かにその通りだと僕も思ったけれど、彼が謝るような事じゃないとも思えた。むしろこれは事故みたいなものだ。だから僕は彼にこう言った。

「そんな事はありませんよ。悪いのはこの場にいる人達です」

「あらひどい言い方。でも間違ってはいないわね」

イプスニカ城で留守番をしているはずのミスティがそう言いながら姿を現した。彼女はそのままベッドの端に腰かけると、長い髪を指先で弄びつつ言葉を続けた。

「それにしても何が原因なのかしら? やっぱりあの子が言っていたように、みんなで同じ夢を見たとかそういうのかしら?」

「おいおい、俺は別に何も言ってねえぜ? それともお前さん、俺の言葉が聞こえていたのかい?」

今度はパックが口を挟んだ。彼の言う通り、僕達はみんな眠っていて、起きているのは彼だけなのだ。しかしミスティは彼の言葉を鼻で笑い飛ばした。

「何言ってんのよ、そんな事ある訳無いじゃないの!あたし達が夢を見ているだけだなんて。そうよ、きっと悪夢だわ!」

彼女は少し震えながら言った。確かにその可能性はあるかもしれない。だが僕の心の中には確信に近い思いがあった。これは現実であるに違いないのだ。「じゃあ、どうしてあの子達はまだ眠っているのかしら?それにもしこれが本当に夢の中だとしたらなぜ夢の中でまで眠らないといけないの? 夢の中ではいつでもどこでもどんな時でも目を開けていられるはずなのに。」

「さぁ、この部屋から出て行きなさい。もうここはあなたの場所じゃないのよ。

出て行ってちょうだい!」

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