テラーノベル
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季節はあっという間に移りかわり若井と2人になった夏は終わって、もう秋、なのに寒い日もあって僅かに冬の気配を感じる。別れて、離れて会えなくなって連絡も取ってなくて···それでも俺はりょうちゃんを忘れることなんて出来なくて心の中ではずっとりょうちゃんを求めていた。
SNSでりょうちゃんらしき人の目撃情報を見てからそのあとしばらくはそんな話題も見なくなって、あれはやっぱり人違いだったのかなと思っていたある日、ふと知らない誰かがアップしていた動画が目にとまった。
それは病院でボランティアで入院している子供たちにピアノを弾いてくれる人がいるというものだった。
顔は映っていなくて手元がギリギリ遠目で映るくらい、メインは聴いているいる子供たち。
その人の過去の投稿を見ていくとその人は度々弾いてくれるようでとても上手で子供たちが喜んでいると。
「この人···上手だな···」
上手なだけじゃない。
楽しそうで、丁寧で、優しい音···。
動画をどんどん再生していく。
クラッシックもあれば、アンパンマンのような子供向けのもあった。
「これ···」
俺たちの曲だ。
動画は短いもので曲の一部だった。
けどそれを聞いたとき、思わず携帯を落としそうになった。
だってそれは、あんなに何度も聞いた“りょうちゃんの音”だったから。
改めて他の動画を再生する。
手も、その背格好もりょうちゃんに似ている。なによりその音が···。
「りょうちゃん···りょうちゃんだよね?」
それからその人が新しい投稿をしていないか、また同じ人が弾いている動画がないか探して、探して···。
確証が掴めたら若井を、そして会社の人に突きつけてどういうことだと問い詰めるつもりだった。
夜、自宅でもう何回目になるんだろう、また同じ動画を見ていると少ししてまた動画が投稿された。
再生するといつもより長い動画で、曲は俺たちの「Soranji」だった。
引き終わったその人はぺこり、と深々お辞儀をしたのが後ろから撮影されている。
「今まで聞いてくださってありがとうございます。楽しそうに聴いてくれて少しでも力になれればと思ったけど僕のほうが元気付けられて勇気付けられました。体調のこともあって今日が最後かなぁと思いますが最後に大好きな曲を弾けて良かった···本当に楽しい時間をありがとうございました」
動画の投稿主のコメントが入る。
『この方は同じ病院に入院しているそうで、今までボランティアで弾いてくださっていました。最後なのが寂しいです』
俺はすぐに財布と携帯だけもって若井の家に向かった。ルームウェアの上にコートを羽織って小さな箱と鍵だけをポケットに入れる。
今から行くとだけメッセージを入れておいた若井はすぐにドアをあげてくれた。
「元貴!どうした?こんな遅くに···」
「りょうちゃんがいる場所を教えろ」
「···りょうちゃんは海外だよ、元貴も知ってるだろ」
「これ」
あの動画を見せると、若井の目に涙が溜まっていく。
お前だってわかるだろ?
りょうちゃんのピアノなんだから。
若井はごめん、と小さくつぶやくと俺に謝った。
「···ごめん、ごめん!りょうちゃんは、長野の病院に、いる。海外に行ったのは嘘。元貴には黙っててくれって言われたから···俺言えなくて···!」
「···わかった、明日の仕事は調整する。今から俺は長野に行くから、病院の場所教えて。止めても無駄だから」
「止めないよ、でもひとつだけ···りょうちゃんを責めないであげて」
「···わかってるよ、どうせりょうちゃんのことだから俺のためにとかミセスの為にとかそんな理由でしょ?わかってるから」
泣き顔のまま若井が何度も頷いた。
きっとずっと言えなくて嘘ついて、若井も辛かっただろう。
病院ってなに入院してるの?本当は何を理由にミセスを辞めたの?何を考えて俺と別れたの?聞きたいことは山ほどあったけどそれは全部本人に聞かなきゃいけないことだと思う。
どちらからともなくぎゅっとハグをして俺は長野に向かった。
いつ着くとか会ってくれないかもとかそんな事はどうでもいい。
少しでもりょうちゃんの近くに行きたかった。
こうもり@スランプ
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稀灯 夏成🩵🍸
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コメント
4件
もう泣きそうですー😭

会いたいが積もり積もったら、なりふり構ってられないもんね。切なくて繊細な表現が好き💖 やっとここまで追いつけたわ。