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耀聖(ようせい)
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【王族用・控室】
コンコン。
「はーい」
その日は、突然やってきた――。
「お邪魔しますね(笑)」
「げっ!」
扉を開け、シャラリと入ってきたのは、尖った耳が特徴的なエルフ族——。
セシリア・モルダー・フォーレストだった。
フォーレスト王族の一人であり、精神魔法の使い手。
そして――ステイシーの親友である。
「ようこそお越しくださいました……(大汗)」
引き攣った笑顔で出迎えるサラ。
幸い、この場にはフィグネリアがいない。
つまり、今のサラは完全に「サラ」のままの姿だ——。
(もう……絶対、分かってて来たよね!)
そもそも、平民がこの部屋にいること自体で、バレバレなのだ。
ドギマギしながらサラは、控室を見渡すセシリアの背中を見つめる。
「……」
定期的に連絡は取っている。
だが、普段は同じクラスのステイシー(アイラ)がセシリアと接しているため、会話がどうにも微妙に噛み合っていなかった……。
(もう、自分から言った方がいいわよね……)
もう、諦めが入っているそんなサラの、思惑など知ってか知らずか、一通り部屋を見渡したセシリアは、ソファーに転がっているヘッドマウントディスプレイに目を留めた。
そして、クスッと笑う――。
「もう、クーンの姫剣士はここで潜っていたのね」
「……!」
サラの顔が引き攣った——。
(もう無理!)
ステイシーが日頃から剣を振り回し、実力がある事もセシリアは当然、知っている。
その笑顔は――『いいから、早く自分から言いなさい』と語っていた。
「そうよ、セシー。色々あって、ここで潜っているの」
「うふふ。ステイは成績が悪いから、偽装しているのよね(笑)」
「!!……(汗)」
ズバリ核心を突かれる——。
「相変わらず勘がいいわね~。感心するわ~」
サラは、もはや観念したように苦笑する。
この数ヶ月間。セシリアは、断片的な情報だけを頼りに考え続けていた。
そして――ついに答えへ辿り着いたのだ。
「素顔を見せてよ、私が解除するよ(笑)」
セシリアは楽しそうに微笑むのだった——。
※※※※※※
【グレイスの私室】
バーチャル用カプセルが開き、グレイスが這い出てくる。
その表情は、鬼のように歪んでいた――。
「アイツ……人外だ! クッソ!」
怒り心頭のグレイスはサラに瞬殺されたことで、当初の目的など完全に頭から吹き飛んでいる。
そして――。
「運営に通報してやる!」
何を勘違いしたのか、チートを使っている本人が、サラを「チートの疑いがある」と運営に通報しようとしていた。
だが、本人はいたって真面目である——。
「こんなの絶対おかしいだろ!」
そして運営へ通報してしまう——。
<プレイヤー名「姫」は、チートを使用している疑いがあります>
チートを使っている本人が、正々堂々とプレイしているサラをチート扱いする。
もはや、何かの冗談である。
しかし――。
運営側も、トップクラスの実力を持つプレイヤー「姫」の動向は当然監視していた。
「もう何通目ですかね。本人の実力なのに……」
すでに何度も通報されていたのだろう。
そのため、すでに調査済みだった運営は、即座に返信を送った——。
<プレイヤー「姫」については《《既》》に調査済みで、不正行為は確認されませんでした>
「はっ?」
そして、メッセージは続く――。
<結論:人力チートです>
「…………」
グレイスは固まった。
異常な反応速度も、あり得ない攻撃精度も、すべて本人の技量によるものだった。
つまり――。
サラは、本当に自力でやっていた。
「ウグゥゥ……!今度こそ……今度こそ倒してやる!」
グレイスの拳が震える。
その憎悪は違う方向に向き始めていた。
※※※※※※
【翌日デルタ作戦司令本部・監視室】
ジェフ国王は、「RPGと剣術大会の成績が、ほぼ一致している」との報告を受け、視察に出向いていた。
「フォフォ、アーレイが考案したRPGは、成果はでとるのか」
視察に来た理由はそれだけでは無かった——。
「はい陛下、このRPGは学生の素行を調べるには非常に有益であります」
「ゲームで品行方正が分かるのは意外だったな」
バーチャル世界では、自分の欲望が表に出ることが多く、プレイヤーの性格があらわになる。
貴族学校卒業後、為政者や士官になる生徒の素行を、調べる際に大いに役立つのだ。
「ところでクーンのステイシーの成績はどうなんだ」
「……陛下、誠にいい辛いのですが、一回戦敗退です」
「なんだと……」
ステイシーの脳筋ぶりを知るジェフは、顎が抜けそうになるほど驚く。
一年生なので表彰台は無理として、ちょっとは勝ち上がってくると、思い込んでいたらしい。
結果を聞き、残念そうな表情を浮かべる。
「ですが陛下、今年はクーンの生徒の躍進が目を見張るものでしたね」
ジェフの表情に反応した管理官が、すかさずフォローを入れる。
だがそれは、サラの秘密を暴く、フラグになってしまう——。
「ああ。たしか優勝者はサラだったな」
「あのルドルフ提督の娘らしいですね」
「はっ?……」
(確か、人間の娘は結婚していたはずだが……まさか……)
ルドルフの家族を知るジェフは、強烈な違和感を抱き始める。
その直後、表彰式の時に、少し寂しそうにしていたサラの顔を思い出す。
(んっ?クーンの一年で剣豪……あっ……)
さすがは知恵の回る国王。同時にアーレイの顔も浮かび、確証を得た。
「そうか、なるほど、サラをお茶に誘え」
「えっ、平民ですよ」
そしてジェフは直ぐにアーレイの奇策だと気がついた。
多分、直接会って、褒めてやりたくなったのだろう。
「ああ、構わない、アン・プチ・デルタの茶菓子を用意しろ!」
髭をいじるお爺ちゃんは、お茶が今から楽しみなのか、少しだけ口角を上げるのだった。
※※※※※※
【バーチャルRPG・漆黒の森】
「あの森だ。待ってろサラ!」
ストーカーになりつつあるグレイスは執拗にサラを追っていた——。
「姫!貴様にデュエルを申し込む!」
「……」
そして、また懲りずに「マーク」がデュエルを申し込んでくる。
(現れ方が都合良すぎる……)
フレンド登録でもしてなければ、広大なエリアの中で、ソロのプレイヤーを見つけるのは困難だ。
この時点で、何かしらの裏技を使っていると、サラは感じていた——。
「じゃ、始めるわよ」
「望むところだ!」
思惑が交差するなか、二度目の対戦の火蓋が切って落とされた——。
※※※※※※
【デルタ作戦司令本部・監視室】
「陛下、これが優勝者のサラですよ」
「おお、凄まじい動きだな(笑」
帰り際、サラの名前をジェフが口にしたことで、監視員の一人が、気を利かせてライブ映像を出す。
「凄いな、男子生徒と一騎打ちとは」
「ええ、ナンバーワンですから、挑まれることが多いですね」
丁度、マーク(グレイス)と戦っている場面が映し出される。
その戦い方は凄まじく、マークの連撃を受け流しながら、切り込んでいた——。
「うーん、サラと互角って……なんか変だな」
戦いを見ている管理官は、首を傾げ、何かしらの違和感を抱き始めていた。
「マークは誰だ、すごく強いではないか! この前の大会よりサラの動きが激しいぞ」
目の肥えているジェフもまた、同じように感じていた。
「陛下、こ、これは……チートの疑いがあります」
「何だと、即刻調べなさい!」
グレイスの悪事は、思いもよらぬところから発覚してしまった。
ジェフの目の前で不正が発覚すれば、ただでは済まないだろう。
孫娘を不正な手段で追い詰めるマークを、ジェフはジッと睨んでいた――。
コメント
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わあ、17話!セシリア登場シーン、もう「げっ」から始まるサラの反応が可愛すぎて笑っちゃいました。親友だからこそバレる空気感とか、王族のお茶会フラグとか…あと「人力チート」って運営の返信、これまで以上にサラの実力が証明されて痛快でしたね!グレイスの執念も変な方向に行ってて、次が気になる展開です。