テラーノベル
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「シャロンさん。俺とセディの事なんだけどさ……別に隠してるわけじゃないんだ。でも、セディがまだ不安定な状態っていうか……気持ちの整理がついて間もない。俺に対しては何を言ってもいいけど、セディはそっとしておいてやってね」
「は、はい。それはもちろん。驚きはしましたが、おふたりの関係を追及するつもりは全くありませんから……」
「良かった。ありがとう」
「ふあっ……いいえっ!! むしろ色々腑に落ちてすっきりしました。私はおふたりを応援します」
ルーイ様は安心したように笑った。その表情を見たフェリスさんの頬が赤く染まっていく。
フェリスさんと比べて私ときたら……興奮して余計な事を言ってしまったな。ふたりの問題であるのに第三者である自分が介入し過ぎだ。謝らないと……
「ルーイ様、ごめんなさい。私……」
「どうしてクレハが謝るの? お前はセディの……いや、俺たちの事を心配してくれたんだもんな。俺に遠慮しないでズバズバもの言ってくれるのお前くらいだから助かる。実際、浮かれて調子に乗っていたのは否めないからね」
ルーイ様もセドリックさんも……私にとって大切な人だ。まさかこのふたりがそういう関係になるとは思っていなかった。
レオンは知っているのかな。自分の側近が神様とお付き合いをすることを認めてくれるのだろうか。彼がどのようなスタンスを取るのかはわからないけれど、できる事なら私と同じ気持ちだといい。大切な人が悲しむ姿は見たくない。レオンにもふたりを温かい目で見守って欲しいと思う。
「でもね……またクレハを呆れさせるかもだけど、怒るセディが見たいって気持ちもちょっとだけあるんだよね。俺がご婦人方に良い顔するのが不快ってことはだよ……それはつまりやきもちじゃん。俺はセディに焼いてもらいたい」
「もー、ルーイ様。相手の気持ちを試すようなことはしない方がいいですよ」
「分かってるって。傷つけたいわけじゃない。ただ愛情を実感したいんだよ」
確かにセドリックさんは自分の感情を声高に主張したりはしなそうだ。ルーイ様があけすけ過ぎるのもあるけど、セドリックさんを好きという気持ちが大きいからこそ、相手も同じだけの熱量を向けてくれているか気になって確認したくなってしまうのだという。
「俺らからしても、セドリックさんの先生への態度はかなり特別だと思うけどね」
「殿下に関わること以外であの人があんなに取り乱すのを見たのは初めてでしたよ」
「セディと付き合いの深い君たちがそう言ってくれると自信がつくな。ありがとね」
互いに気持ちを通わせたであろうに、それでも不安になってしまうのか。クラヴェル兄弟はセドリックさんがルーイ様に向ける態度は特別だと言うけど、それはルーイ様だって同じなのだ。不安定なのはセドリックさんだけではない。セドリックさん絡みの事になると、ルーイ様は突飛な行動や発言をしがちになる。
「本当に好きなんですね……」
「カミサマの前で宣言するくらいにはね。……愛してる」
フェリスさんが『キャー』と悲鳴を上げた。もし今この場にセドリックさんがいて、ルーイ様の発言を聞いていたらどんな反応をしただろう。セドリックさんの顔が見たかった……なんて、真っ先にそんな事を考えてしまう私も、ルーイ様の事を責められなかった。
現在ネルとティナがいる場所としてワンダさんに教えてもらったのは、聖堂の敷地内にいくつかある広場のひとつ。前回テレンスと一緒にさくらんぼ飴を食べた時に訪れた休憩スペースのような所である。
もうすぐ聖堂で定期的に行われている懇親会があるらしい。信徒はもちろんのこと、養護施設の子供たちなど誰でも参加自由なのだそうだ。ネルとティナはその準備を手伝っているらしい。
「クレハ様可愛いー!!」
「レナードさんっ……苦しいです」
「やめれ、馬鹿ハゲ」
レナードさんにぎゅうぎゅうに抱きしめられて息が詰まるかと思った。彼の大きな体には子供の私なんてすっぽりと収まってしまうのだ。ルイスさんが止めてくれて助かった。
「でも本当に可愛いらしいです。今すぐこの場に画家を連れてきたいくらいです。この素晴らしさを後世に残さなくては……」
「髪色が違うだけでかなり雰囲気変わるな。これに更にメガネをかけると……おっ、普段より賢そうに見えるじゃん。良かったな、クレハ」
「ボスたちが羨ましがるだろうなぁ。姫さん、帰りもその格好のままでいようぜ」
黒髪ロングヘアーのウィッグに淡い色付きのメガネ。これらは私の一番の特徴である銀髪と青い瞳を隠すための小道具だ。服装もうちの使用人たちが着ているお仕着せに着替えた。ちなみにこれはリズから借りた。
ネルとティナに接触するにあたり、私の姿を無防備に晒すのは危険だと皆が口を揃えて言うものだから、ここからは変装をして向かうことになっていたのだ。
「ルーイ先生、困りました。この変装……クレハ様の可愛さは隠せてないです。いいのでしょうか」
「クレハ・ジェムラートだって分からなきゃいいんだよ。変装は大丈夫。それよりも俺たちがうっかり名前を呼ばないように気を付けなきゃな」
ネルとティナに会う……それは、より黒幕の存在に近い所に行くということになる。クレハ・ジェムラートが聖堂に通っているという噂も広まってきているかもしれない。ここからは何が起こるかわからないのだ。
事件について聞かれた少女たちはどのような反応をするだろうか。ニコラさんの懺悔室での様子が明らかになるといいけど……
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