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一週間が過ぎた頃、僕の体調は静かに、しかし確実に崩れ始めていた。
最初は小さな違和感だった。
朝、目が覚めると全身が重く感じられ、布団から出るのに時間がかかるようになった。
涼ちゃんの「おはよー!今日も元気にいこうね!」の無邪気な声が、逆に胸に刺さることもあった。
食欲もどんどん落ちていった。
「元貴、ご飯だよ!」と涼ちゃんが作った料理を差し出されても、箸がなかなか進まなかった。
少しだけ口にしてみるが、すぐに胃が重くなり、食べるのをやめてしまう。
若井は黙って僕の様子を見守っていた。
時折「無理しないで、ゆっくりでいい」とだけ言うその言葉に、
僕は少し救われていたけど、心のどこかで自分がどんどん壊れていくのを感じていた。
夜になると、薬の副作用か、吐き気と闘う時間が長くなった。
トイレで何度も嘔吐しようと試みるけれど、なかなか出てこないその苦しさは言葉にできなかった。
ある夜、若井がドアの隙間から声をかけてきた。
「元貴、無理するなよ。何かあったらすぐ言え」
僕は答えられず、ただかすかに首を振った。
涼ちゃんはいつもどおりニコニコしていたけれど、
僕の変わった様子に気づいていた。
「元貴、大丈夫?無理しないでね!」と、いつも以上に明るく声をかけてくれた。
でも僕は、そんな二人の優しさを受け止めきれず、心の中で孤独を感じていた。
“助けてほしい”という気持ちと、“自分でどうにかしなきゃ”という焦りが交錯し、
どんどん自分を追い込んでいった。
そんな時、ふと窓の外を見た。
灰色の空の隙間から、わずかに漏れる光。
それはほんの少しの希望のようで、でも遠く感じられた。
僕はまだ何も変えられない。
でも、このままじゃダメだとも思う。
そんな葛藤の中、僕はまた一人で、薬を手に取るのだった。