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38. ◇欲望に忠実に 生きる夫
あんなに私を好きだアイシテルと言ってた英。
付き合って7年結婚して4年、求愛された日から11年目に
彼は心変わりしてしまった。
……じゃなかった正確には10年目に心変わりをし、私をこよなく愛して
くれたやさしくて唯一無二の夫は、この世から……私の前から……
居なくなってしまったのだ。
私にいろいろと彼らの情報を教えてくれた先輩や後輩たちからは『甘い、
手ぬるい、あいつらふたりに天誅を喰らわしてやれ』とヤイノヤイノ言われた。
けれど、仕事もあり多少の小金もあって実家もそれなりに裕福なので、
そういった意味での心配がないのが救いだ。
子供というお宝を持っている私と、景子ひとりを天秤に賭けられ、負けた
私が唯一守れるプライド、それは彼のお金をビタ一文受け取らないことだった。
糟糠の妻とは言わないけれど、共に医師になるという同じ志を持ち、
共に学んだ6年。
寝食を共にして4年余り、そんな妻を……私を……息子共々、夫としての
責任も父親という責任も、簡単に捨てて自分の欲望に忠実に生きる道を選んだ夫。
38-2.
泣いて縋って脅しても、英は景子の元へ行くと言うだろう。
そういう英の気持ちが嫌というほど透けて見えたから、私はそういう全ての行動をやめた。
ただ、それだけのこと。
物分かりのいい人間でもドライな人間でも、ましてや、かっこいい人間でもない。
人間時には諦めも肝心なのだ。
私は自分にそう言い聞かせ、宥めた。
私が離婚を了承した時、夫はすまないと辛そうな顔をしていた。
……だけど、胸の内では万歳三唱していたに違いない。
だって、彼のその時の様子を見ていたら、彼の身体とそこから溢れ出る
オーラが、喜びに満ちていた。
せめてそういうの、隠してほしかったな。
私たちの元から去るというのに、とてもうれしそうな夫。
『さよなら』
私はさまざまな郷愁と感慨を胸に、彼とお別れをした。
「ほんとに自分の勝手で君と息子に迷惑かけてすまない」
「いいよ、人の心を変えることはできないもの」
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