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僕は懐かしんだ。ただひたすらに。
ーーー
啜り泣く声が聞こえる。
読書に集中できないじゃんか。そんな泣かれるとさ。
「んもー!誰ぇ?ずっと泣いてんの!」
びっくりして何処かを打ったのか近くで大きな物音が聞こえた。しばらくして誰かが小さく言う。
「ご、ごめんなさい… 」
其処にはさらさらな深紫色の髪と綺麗な柳緑色の瞳をした男の子が頭を擦りながら頬を濡らしていた 。
「わ、そんなとこにいたんだ… 」
「ぐすっ…うッ…」
めっちゃ泣いてる…。どうしよ…。
「…名前、なんて言うの? 」
「ぇ…」
「君の名前」
「…えと、剣持刀也…」
剣持刀也…うん、全然聞いた事ない!どこら辺の子だろ?
「刀也くんね!ちなみに、どこら辺から来たの?」
「○○の○○区から…」
…○○?どこ!?初めて聞いたんだけど…!
「ここはどこなの?」
「えっと、○○ってところだよ?」
「え…初めて聞いた…」
「えっ…」
嘘!?ここをご存知ないだと!?桜魔の子ではない…のか?はッ、もしや日本の子!?
「お、桜魔皇国って知ってる…?」
「えっと…名前だけ…」
「もしかして日本から来たの…?」
「うん…」
嘘でしょ!?日本からどうやって!?何らかの術式を使わないと行き来はできないはずなのに!
「ここは桜魔なの?」
「そうだよ」
「………」
「………」
二人揃ってどうすれば良いかわからず、沈黙が漂う。
「あっ、そういえば、化け狐とか見なかった?」
男の子によって沈黙が破られる。
「え?見てな…あ、やっぱいたかも」
「え!ホント!?」
「う、うん。僕の記憶が正しければ…」
「実は、僕の大事な御守りをそいつに取られちゃて…!」
「追いかけてたらいつの間にかここに…」
「あー、なるほどね… 」
それならいつの間にかこっちに来ちゃうのも納得だ…。化け狐がこっちの者なら。
「あっ!化け狐!!」
「えっ、見つけるの早くない!?」
「今尻尾が見えた!」
「早く追いかけよ!」
ーーー
あーーっ!めっちゃ走った…!肺がはち切れそうだし足ももげそう…。
僕は必死で呼吸をする。明日が来るのが怖い。体を一部でも動かせば即死だろうから。
はぁ、とりあえず御守り取り返せて良かった…。刀也くん喜んでくれてるし。僕の自由時間は全部ぱあだけど。
しっかし、あの化け狐すっごいチャラそうでイラついた。なんかピースサインしながら煽ってきたし。
「あの、ありがとう」
「ん、いいよ全然」
「えっと、名前は…?」
「え、僕?えっと」
「甲斐田晴です!」