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……彼女の成れ果ての様を図書館館長アンジェラ、友だちことローランは観測していた
……これまでの接待相手の様に、招待状による過程の断片を
「最悪だよ……またあんな物を見なきゃいけないなんてな……うっぷ…」
「あまり見ない方が良いわよ。貴方には酷でしょうし。
…彼女がねじれた場合、ああ なるのね。…本当に趣味が悪いわね。」
「…そもそも何でゲストの断片が見れるんだ?図書館は力を失ったはずだろ?
まずゲストが来る事自体、前にお前が言っていた事と矛盾してる気がするんだが…」
「前に言ったでしょ?この図書館は私のE.G.O.そのものよ。…とは言ってもこの程度が限界だわ。
…ただ、彼女が図書館に来れた理由までは分からない。前回侵入して来た調律者と同じ、招かれざるゲストでしょうね。」
「そうかよ。…それで、アレは本にしちまうのか?」
「しないわよ。あくまで接待を行うってだけ
“私”自身で決めたことだから」
「……そうか
それじゃあ、接待だけして返すのか?
それもそれでお前の意に反する気─…」
「それは彼次第よ。…それじゃあ、私も向かうわ。」
その言葉を最後、アンジェラは指を弾く音と共に消え失せてしまった
「…歓迎いたしますゲストの方。
私はこの図書館の司書兼館長、アンジェラと申します。」
「■■■」
「…随分とみすぼらしい姿になって帰って来たわね。」
「■■■■■」
「…もう、貴方が苦しむ必要はないでしょう?
貴方は彼に逢いたくて此処へ来たのだから…貴方がねじれる必要なんて」
「■■」
「……あの楽団員達と違って対話すら出来ないのね。」
アンジェラは『規制済み』された肌をさする
肉体は機体へと逆戻りした為傷は負わず、流れる血液すら存在しない
…ただ、冷たさがあるだけ
「…どうかあなた…貴方達の本が見つかりますように。」
……スミレが生き返ると聞いた時、”また逢いたい”と思ってしまったんだ
あの時、手を取れなかった癖に
あの時、この手で殺した癖に。
スミレは俺の事を恨んでいないと言ってくれたが…それでも、俺なんかとは2度と会うべきじゃない
スミレを更に不幸にしてしまうだけだ
分かっている…筈なのに。
そうして
…その願いが、最悪な形で叶ってしまった
「……………う”」
吐き出された吐瀉物は幾ら抑えようと止まらず、観測したその光景を記憶ごと取り出そうとする様であった
体は震え、目の前のそれが頭の中を反芻する度に全細胞が拒絶反応を起こす
知っている。そして覚えている
この姿形を嫌と云うほど知っている
…だからこそ、目の前のそれが信じられない
「どうして…どうしてだよ!!!スミレ!!!」
……一人、また一人とあの『規制済み』に殺されていく
歴史の階が決して弱い訳ではない…かと言って万全という訳でもない。
…図書館が保有していた光が全て都市にバラ撒かれた為、確実に図書館の力は弱まってしまった
その為接待やゲストを本にする事は可能でも、本を媒体にした過去の再現は不可能となった
…要するに、もう死ぬことは許されないのだ
その重みが、今までの接待の何倍も動きを鈍くする
そしてそれ以上に……
「………っ」
振り上げた鎌を下ろすことが出来ず、動きが止まる
そんな隙を見逃される訳も無く、俺の腹に『規制済み』がねじ込まれる
そうだ
どう頑張ろうと、あれに攻撃する事が出来ないのだ
あれがどんな姿だろうとも、スミレだから
…きっと前の接待でもスミレは同じ気持ちだったのだろう
……そして…今のスミレは、ずっと前二人で見てしまった旧L社の特異点そのものであったから
…俺達二人の道が狂い始めた一番の理由
あの時から今この瞬間まで、あの光景を忘れたことは無い
どれほど悔やんだだろうか
どれほどやり直しを請いただろうか
…あの時一緒に飛び込んでいれば
なんて考えたこともあった
……だからこそ対面する事が出来ない
あの時掴めなかった手を、自分自身を。恨んでも恨みき れないから
「…あ」
「………」
『死の境界』
追撃を喰らいそうになった俺を、マルクト様が後方へ引っ飛ばしながら剣を抜いた
…しかしその一撃は想像以上に重く、鋭く…スミレに巨大な斬撃跡を残した
複雑過ぎる感情を処理しきれず、ただその跡を見ていると…
…奥の、奥の、そのまた更に奥
その先に、スミレの姿が見えた
「………そうか」
先程までの体たらくは何所へやら、俺の足はあれへ…いや、スミレへ向かって動き出した
一度腹にねじ込まれた『規制済み』を回避し、防御し、切り裂きながら走る
そして…もう一度鎌を振り上げ、斬撃跡に沿うようにして振り下ろす
邪魔な鎌を投げ捨てる
「……………見つけた。」
もう一度スミレの姿を捉え……
迷う事無く、全力で飛び込んだ。