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駆け足で森を出て、私は木の後ろにひょっこりと顔を出す。
よく見ると、白のローブを着た数名の男女が武器を持って彷徨いていた。1人の男性が村の小さなステージに上り、村人達に集まるよう呼びかける。
「スズラン村の皆さん、ここは危険です。何故なら、危険な魔法使いが3人もいるからです。」
男のその言葉に村人達は、相手にしていなかった。それはそうだ、村人側から見れば私達の悪者要素は一切ないんだから。
「…そんなのアタシは信じないね。というより、あんたは誰だい?」
「おっと、名乗るのが遅れてしまいました。僕は、魔女狩り部隊のクリスです。」
「まじょがりぶたい?お母さん、それなぁに?」
「…静かにしてなさい。」
女の子の言葉にクリスはチラッと女の子を見た。
「お嬢ちゃん、良い質問だね。魔女狩り部隊(魔法使いも含む)というのは、悪い魔法使いを捕まえてみんなの安全を守るグループだよ。警察と一緒だね。」
「古くから、魔法使いは人々の幸せを壊していった。今は、皆さん何も危害は加えられてないですが、それは罠なんです。」
「善者を演じて、油断させて幸せを壊すんです。信じられないかもしれませんが、魔法使いはちょっと小賢しいヤツらなので、表には出してないんです。」
木の後ろで隠れて見ていた私は、ぎゅっと拳を握る。
「何を言ってるの?あいつ。」
今にも飛び出しそうになっていると、書店のレオさんが一喝を入れた。
「何言ってんの?」
「マジックさん一家が悪い魔法使いで捕まえる?言っとくけど、お前らなんかよりも僕達の方が彼らと過ごした時間が多いんだ。村人がそんなこと1番分かってるんだよ。」
「そうだ!そうだ!」
「あの時、命を助けてくれたのはあの2人だった!」
レオさんの声に、次々と村人達が立ち上がる。
私は、ホッと安堵した。
「なんだ、別の村では馬鹿な村人ばかりだったからここも信じてもらえるかと思ったけど…。」
男性の目が変わり、他の仲間達に呼びかける。
「勝手に暴動起こして、何とかなるって思ってたけどいいや!お前ら、こいつら殺して。」
武器を持った仲間達が次々に村人に襲い掛かる。
「な、なんだ!?」
「い、いたい!いだい!!」
泣き叫ぶ声。重なる銃声や断末魔。
「何事よ!?」
「……どうした、、これは…。」
そこには、ママとパパの姿があった。2人は、青ざめてステージに立っているクリスに話しかける。
「お前は誰だ!?」
「何が目的なの!?」
「ちょっと、ちょっと。そんなピリピリしないでよ。…魔女狩り部隊って聞いても分かんない?」
「……?」
「まぁー分かんないか。でも、一回キミ達の先祖に滅ぼされたけどね。」
「それで今日は、キミ達を殺しに来た。殺してキミ達の肉を食べる。」
クリスは、人差し指を口元に当てる。
「…食べて何の意味が?」
「魔法使い(魔女)は不老不死。おまけに、魔力も得られる。食べると不老不死と魔力が得られると言われている。」
「だから殺して、食べに来たんだ。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
足が動けない。助けに行かなくちゃ…聞こえないけど助けが必要かも。
「でも…私って何ができるんだっけ…。」
そう、考えているうちにパパとママの悲痛な叫び声が聞こえた。
(殺されて…ない、よね?)
動かない足を無理矢理動かして、声のした方へと進む。みんなパニックになって逃げていた。人混みの中を上手く抜けた私に待っていたのは、信じられない光景だった。
「え…2人とも…?」
ズタズタにして殺された2人を見て、私はその場に倒れ込む。
「なんで?なんで?なんで?」
治癒魔法で治そうと何度も何度も2人の遺体に手を当てる。だけど…治癒魔法は傷を癒すだけ。人を生き返らせることはできない。
「いかないで…よ…。」
2人との彩りある思い出が消えかけの灰色になってしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ねぇねぇ、キミ。魔法使いの娘っているよね?全然見当たらないんだけど。」
「ひぃぃ!言うわけないだろう!!」
「言ってくれたらさー。逃がしてあげるよ、特別に。」
クリスは怯える村人に向かってウインクする。
「……俺はいいから、妻と息子と羊だけ逃がしてほしい。」
「多いな。…分かった、いいよ。」
「あそこだ。薄いピンクの髪に紫の目をした女の子だ。」
村人は、ミリーを指差す。
「んん?どこ?…あー。あの子か。」
「教えてくれてありがとう。」
クリスは、ニコニコして村人の頭をポンポンする。
「じゃあ!約束通り…」
「いいや、ダメだよ。上からの命令でさ、全員従わなかったら殺せって言われてるんだよね。」
「は…?それじゃ、話とt…」
グサッ
クリスは短剣で村人刺した後、ミリーのところへ向かっていた。
クリスはしゃがんでミリーに話しかける。
「お嬢ちゃん、名前なんて言うの?」
「……。」
ミリーは、話しかけられていることに気づいていないのかずっと死んだ両親を見つめている。
「…これだからガキは嫌いなんだよね。」
「お嬢ちゃんに良い事教えてあげる。僕らについて来てくれるんだったら、両親元に戻してあげるよ。」
「だからさ…」
「いかない。」
「は?」
「私はどこにもいかない。」
「ミリーさん!そいつは危険です!離れて下さい、おりゃああああ!」
聞き覚えのある声に振り返ると、ヒューゴのパパがこっちに向かって猪のように走ってくる。そして、クリスの体を押さえ込む。
「あの時、傷つけてしまって本当にすみません!でも、貴方の魔法は俺達にとったら素晴らしいものなんです。だから、自信持って下さい!」
「それから、ヒューゴ。ミリーさんを頼んだぞ!」
「どういうこと!?」
「これからずっと遠く離れた所へ逃げるんだ。ミリーは今、この魔女ハンター?狩人?に命をねらわれてる!」
強く手を彼に引かれて、その場を去る。
「おい…暑苦しい!離れろって!」
(2人が遠くに逃げられますように…神様お願いします。)
短剣をヒューゴパパに何度も刺すと、重い遺体を蹴飛ばし、耳に手を当てて誰かに遠隔で連絡する。
「本当だるっ。」
「び、びっくりした!どうしたのぉ?もしかして、逃げられちゃったぁ?」
「言わなくても分かるでしょ…このままだと村の外に逃げられるから、……捕まえろ!」
「うわっ、うるさいなぁ。りょーかい、ウチが捕まえるねぇ!」