CP:快新
世界:オメガバース
補足:付き合っていない
その他
・1部K新要素あり。
・微平和表現あり。
・直接的表現なし。
・事後表現あり。
※1万字↑あるので、
時間のある時にお読みください。
※書いたことのない世界線で
調べながら書いたので1部違うところが
あるかもしれませんが、
暖かい目で見てくださると嬉しいです。
ある日の晩
「待て!キッド!」
そう言って、俺は屋上の戸を開ける。
「オメー…好きだよな、屋上…」
「逃げるには
うってつけの場所ですから♡」
彼、怪盗キッドはそう言って笑う。
「…名探偵、
ひとつお聞きしますが───」
「あ?んだよ…」
「…襲われては、いませんよね?」
意味のわからないことを彼は言う。
「何言ってッ…んだよ…襲われる?
何にだよ…」
はぁ、とため息をついて彼は続く。
「これだから警戒心が薄い人は
困るんですよ」
「はぁ!?」
「あなた、気付いてないのですか?」
気付いてない?何が───
「名探偵、フェロモンが
ただ漏れなんですよ?♡」
「…はッ?//♡」
俺は東の探偵、工藤新一。
先日、フェロモンだとか
襲われてないかだとか
意味不明なことをほざかれたため
一応病院で診断しにしてるところだ。
「えーっと…あなたが工藤新一さんだね」
「はい、そうです」
「検査の結果は、『Ω』だね」
「オメガ…?」
俺は聞き慣れない単語を聞かされた。
「具体的にはどういう症状が?」
「『オメガ』というのは…
まぁ、簡単に言ってしまえば、
男性でも出産できるということだね」
俺が───いや、俺”たち”が
元々住んでいたところは
男性が女性を孕ます。
それが当たり前だった。
けれど、時代は変わってしまった。
女性からの多くの声が上がったのだ。
『女性ばかり嫌な思いを
することになるじゃない!』
『妊婦の気持ちを理解しろ!』
『あなたに出産の痛みがわかるの?ねぇ!』
それだけでもたくさんだったのに、
匿名でこんな声が飛んだのが
決定打だった。
『同性愛を認めてほしい。
そして、男同士でも家庭を持ちたい』
それがネットで拡散され、
この世界は『オメガバース』
となってしまった。
「オメガはね、位の中でも最も低く、
見下されているんだ」
だから、俺が探偵だとか、
有名人だからとかは関係ない。
誰彼構わず、嫌われていく。
「…君は、よくテレビに出るよね」
「まぁ、仕事柄…」
「そんな時に”ヒート”がきてしまったら
大変だろう。だから──」
「す、すみません…ヒートって…?」
「あぁ……、君は本当に
何も知らないんだな」
態度が少し変わる。
きっと、こいつも見下しにきているんだ。
「ヒートというのはね、発情期のことだ。
それが発症すれば脱力感ができ、
何も考えられなくなるのだ。
まぁ君は今の今まで気づかなかったから
そんなことは無かったのだろう」
何も考えられなくなる…か。
探偵業としては終わりだ。
探偵は思考を巡らせて
謎を解き、犯人を見つける仕事だ。
そんなときに来てしまったら───
「…それで、それを抑えるには?」
「あぁ、抑制剤を使うといい。
これを使えばしばらくヒートはこない。
だが、一時的だ。
時間が過ぎればくるだろう」
その後、何度も話を重ね、
薬を貰い帰宅した。
家
「よりによって Ω かよ…」
どうせなら β が良かった。
βは一般の人。なんの特性も持たない。
多少Ωのフェロモンの
影響を受けるらしいが、
αほどでは無いらしい。
医師によると、ヒートのときに
αには会わない方がいいらしい。
Ωの出すフェロモンは強すぎて、
αは制御出来ないのだと、そう話していた。
「…黒羽は、なんなんだろうな」
黒羽快斗。
それは、俺にそっくりな顔の人だった。
マジックが得意で、
チョコレートアイスが好きで、
スケベで…
そして、”怪盗キッドの面影がある人物”。
彼は、時折怪盗キッドだと
思われる面影がある。
…いいや、考えるのはやめよう。
明日、このことを打ち明けようか。
答えを出す間に、俺は眠ってしまった。
大学
「工藤おはよー!!」
「黒羽…おう、おはよ」
「工藤が…挨拶を返した!?」
「あ?やんのか?」
「きゃー怒ったー!!」
このふざけた野郎が昨日話した
『黒羽快斗』。
女の子大好きなノンケだと思ってるが、
実際は知らない。
そういう噂になっているだけだ。
「…なんか元気ないね?どしたの?」
「え?あ…」
やべぇ、バレないように隠していたが、
疑われている。
「いや、別に、元気だぜ?」
「ふーん…」
「…んだよ」
「ふーーーーーーーーーーーん」
「だからなんだよ!!」
「なんやお前ら、また喧嘩しとんのか?」
「服部…」
「おはよーさん」
こいつは西の探偵、服部平次。
高校生の時は関西で探偵業をしていたが、
関東でも広めたいとかなんたらで
東京に来た。
「…服部!工藤なんか体調悪そうだから
家に返してくるわ!」
「はぁ!?ちょ、黒羽!」
服部、止めてくれ。
疑ってくれ…!
「そ、そうやったんか!?
工藤、無理は禁物やで…
それに、出席日数怪しいから
無理するなんて、
探偵として終わっとるんとちゃうか?」
服部はアホだ。
後でぶん殴らせてもらおう。
「俺も帰ることになるから
服部後はよろしくな!」
「おう!任せとき!」
黒羽家
「なんでオメーの家なんだよ…」
「だって工藤の家知らないもん」
俺は半強制的に黒羽の家へと
連れて行かれた。
「俺の部屋しかベッドないけど…
まぁソファとか床よりかは
マシだよな!」
ドサッと押されベットに俺は倒れ込んだ。
乱雑すぎる。
それでも体調不良者の扱い方か?
まぁ体調は崩してないのだけれど。
「だーかーらー…俺は平気だって」
「俺がここに連れてきた理由は
体調が悪そうってのもあるよ?
でもさー…」
黒羽は溜めて、俺に言ってきた。
「フェロモン、
ちょっとだけ出始めてない?」
「は?フェロモンが何───」
その瞬間、身体が熱くなった。
「なんッ、だこ…れ…ッ/」
「ッ、ごめん!
収まるまでその部屋にいて!」
「はぁッ!?ちょ、くろッ…/」
扉から出て行く後ろ姿から見えたのは、
耳まで真っ赤な黒羽だった。
快side
いつも通り、朝挨拶をした。
「工藤おはよー!!」
いつも通り、冷たい返しがくると思った。
「黒羽…おう、おはよ」
挨拶を返された。
そこまでは気分だろうなって
思ってたけど、
その後の反応からして
何か隠してるんだと思った。
体調不良とその付き添いなら
サボりだと思われることもない。
あとは服部に託して
俺の家まで連れてきた、が…
「まさか、
俺ん家でヒートが来るとはな…//」
俺はこの前診断を受け、
『α』だと言われた。
3つの位の中でも最高位だから
不自由はないと言われたが、
1つ心配になった。
“αのことをαが好きになること”だ。
その場合孕ませることはできるのか、
また、孕むことはできるのか、
心配になった。
けど、そんな心配は要らなかったようだ。
「工藤、Ωだったんだな…
あっぶねー…w//」
俺は『怪盗キッド』としての存在もある。
その時に気づいた。
“工藤は、Ωなんだ”と。
今まで工藤にはΩの素質が見えなかった。
だからαだと思ったんだ。
でも実際は自覚してなかっただけで、
Ωだった。
まぁ、そのことも聞こうとして
家に連れ込んだが、
ヒートがきてしまったと…。
運が悪い。
「…工藤、大丈夫かな」
新side
「ッはぁ…ッはぁ……んっ♡///」
初めてヒートというものを感じた。
今までは身体が熱いとしか思わなかった。
身体を戻す薬の後遺症なんだと思ってた。
でもそれが、まさかΩの作用とは
思わなかった。
「ッ…くろ、ばぁ…ッ♡///」
会いたい。
黒羽に会いたい。
なんでかは分からないが今、
無性に黒羽に会いたくて仕方がない。
「これ…ッ、黒羽のタンス…//」
俺はタンスから黒羽の衣服を
取りだしかき集める。
「黒羽の…匂い…///」
そのまま俺は眠ってしまった。
「………い」
なにか聞こえる。
「……う……て…?」
もっとはっきり話してもらわないと
聞こえない。
「工藤さん聞こえてますかー!?!?」
「うっさ!!!」
「起きたね、おはよ」
ニコッと華やかに笑う顔に、
自分とそっくりな顔立ちのくせに
キュンときてしまった。
辺りを見渡すと、散乱された服が
大量にあった。
そこで俺の記憶はぶり返した。
「思い出した?」
「…うっせ…バーロー…/」
黒羽は意味深にこちらを見つめる。
「ねー工藤、知ってる?
抑制剤なしでヒートを
最小限に抑える方法」
黒羽はひっそりと話す。
「そんな方法があんのか!?」
「全国的にも有名な名探偵さんが
ここまで知らないとはね…
俺びっくりしちゃった」
「…お前も俺を見下すのか?」
「ううん、見下さないよ?でも…」
俺は時の流れが遅く感じた。
そして、彼は扉の鍵、窓の鍵、カーテン、
全て閉め、話を続けた。
「俺、工藤のこと欲しいんだよね」
「…は?」
快side
ついに言った。言っちゃった。
あはは、思った通り。困惑してる。
ま、そりゃそっか。
いきなり友達に『お前が欲しい』
なんて言われたら戸惑うか、普通。
「お前…もしかして…」
「気付いた?」
「魚食えるようになりたいのか…?」
「違う!!!
そのワード出さないで
聞きたくない!!!」
「ごほん…まぁ、工藤そういうことには
鈍いからね〜、想定内って感じ」
「…それで、抑制剤なしでヒートを
最小限にする方法って?」
お、やっぱり乗ってきた。
「…番(ツガイ)を作る。それだけ」
「番…?」
「まぁ、簡単に言っちゃえば
恋人作ろうよってこと!」
「はぁ?俺がお前と恋人になれって
言いたいのか?」
「うーん…まぁそれもそうなんだけど、
俺たち番になれば
お互い苦悩がなくなるよ?」
「苦悩…?」
「工藤はヒートに悩まされるし、
俺は工藤をどう手に入れようか
悩まされてる。
でも、ここで番を作れば
工藤はヒートに悩まされることはないし、
俺も工藤を手に入れられて
丁度いいってこと!」
「…確かに、それは都合がいい」
「でしょ?じゃあ──」
「でも、それじゃダメだ」
…え?
「確かに、
俺にもお前にも良いことはある。
それでいいはず…だけど、
俺はまだ気持ちの整理がついてねぇんだ」
「…そっか」
まぁ、強引に工藤を手に入れても
俺は納得できないかもだったし、
これで良かったかも。
「…でもな、黒羽」
「ん?」
「俺の事、惚れさせたら
番っての考えてやるよ」
それは、
世界一簡単で世界一難しい、
挑戦状だった。
新side
翌日の大学
「はぁ…ねみぃ…」
「くーどう!どう?体調は?」
「黒羽か…はよ。今のところは平気だぜ」
「ならよかった!」
こいつはいつでもハイテンションだな。
そんなことを思ったとき、
影から女子たちの声が聞こえてくる。
「ねぇねぇ、黒羽くんいるよ!」
「嘘!話しかけちゃおっかな…!」
こいつはいつもニコニコしている。
それに───
『俺、工藤のこと欲しいんだよね』
「…なぁ黒羽」
「ん?」
「お前って、ノンケなのか?」
「え”…」
この反応は図星か?
やはり、こいつは人たらし───
「工藤までそんな噂信じてるの!?」
「……はぁ?」
「俺さー、確かに女の子は好きだけど
食い荒らす程じゃないのにさー…」
女の子が好きなら、俺はなんなんだ?
俺は男だ。じゃあ黒羽のあれは冗談?
にしては本気度が違ったが…
「ちなみに、工藤はその女の子たちよりも
遥かに上で大好きだぜ?♡」
「はぁッ!?//」
耳元でいきなり囁かれた。
心臓に悪い。
「工藤顔真っ赤じゃねーか!
やっぱりまだ体調悪いんじゃねーのか?」
「…性格悪ぃなオメー…//」
ケケケッ!と彼は大袈裟に笑う。
あれは明らかに原因が
体調不良ではないと気付いている顔だ。
「工藤って結構顔に出やすいんだよねー。
昨日の朝も笑顔がヘタクソだったり、
話してた時も思い詰めたような顔で、
今だって『じゃあ俺は?』みたいな
怒りの顔だったり、
結構分かりやすいんだよね」
「そ、そんなに…?」
「うん、そんなに」
ポーカーフェイスも親父から
教わっておけばよかったのかもしれない。
「よぉ工藤!体調はどうや?」
「服部!」
そういえば昨日こいつに
見捨てられたんだよな。
殴らせてもらおう。
「ちょ、工藤!?なんやそのポーズ!
まさか殴ろう思てるんとちゃうよな?な!?」
「そのまさかじゃなかったらよかったな」
服部との鬼ごっこが始まった。
「行っちゃった…」
「おい服部!待て!!!」
「待てって言われて待つバカが
どこにおるんじゃアホォ!」
服部は剣道をやっていて
大会の優勝候補に入るくらいのため、
運動神経はもちろんいい。
そのためとてもすばしっこい。
「工藤がまだあのガキンチョやったら
逃げきれたかもしれへんのになぁ!
大きくなりよって!」
その瞬間、俺はガチンときた。
「それじゃあ1発お見舞してやる…ッよ!」
俺はその辺に捨てられていた空き缶を
蹴り飛ばし、
見事服部の背中へと直撃させ勝利した。
「工藤…ここまでやったんだ…」
服部は見事にボコボコにされて
撃沈している。
「俺をバカにした罰だ」
「クッソ…許さへんからな…」
「あぁ?和葉ちゃんに会いたいって?
仕方ねぇなぁ
連絡してあげようじゃねーか」
「や、やめい工藤!
早まるんやない!」
遠山和葉。
それは服部の幼馴染で、彼女だ。
合気道が強く、
服部にも気合いと躊躇いがなければ
勝てるだろう。
「しっかし、なんや急に
襲いかかりおって…」
そういえば、服部の
第2の性は聞いていなかった。
「なぁ服部。
オメーって第2の性なんだったんだ?」
「そんなしょーもないこと聞くためだけに
こないなことしたんか…?
恐ろしい奴やのぉ…」
少しイラッときたがそれを抑え、
今はそういうことにしておいた。
その方が話が早そうだ。
「んで、第2の性やろ?
βやったで。1番多いやつやな。」
それじゃあ、低確率だが
こいつに襲われる可能性があるのか…?
いや、服部には和葉ちゃんがいる。
彼女がいるのに俺が襲われるわけが無い。
服部もこう見えて意外と
しっかりしているタイプだ。
そのまさかが起きるわけが無い。
「もしかして工藤も結果出たんか?」
「…はッ……?」
やべぇ、考えてなかった。
「も、もちろん俺もβだったぜ…?」
俺はしどろもどろに答える。
まぁあんな体調不良とかいうのに
勘違いしてたくらいだし
今回も大丈夫だろう。
「…何嘘ついてんねん。
探偵に嘘は禁物やぞ?」
何故かそこで、
俺は俺の中の糸が切れた気がした。
「…服部…オメー、さぁ…」
「あ?なんやねん」
俺は一息吸って続けた。
「なんでこんな嘘には気付くくせに
昨日の体調不良には気付かなかったんだ?
どこで本領発揮してんだよ嘘は禁物?ならあんな一般人でも見抜けそうな嘘に探偵が騙されてんじゃねーよそれに服部オメーはよぉ!いt」
「ちょ、工藤落ち着いて!!
鬱憤が溜まってるのは凄くわかる!
聞いててわかる!でも落ち着いて!!!」
「…なんか、ごめんな服部」
「おう。全然悲しんでないで」
「…そんな悲しいなら謝るからよ、
元気だせって」
「なんや、
どこが悲しんでるように見えんねん?」
「いや……」
「俺と目が合わないところ、だな…」
服部は俺の方を向かず
一生背中を向けている。
ちょっと振り向いたかと思えば
ずっと下を向いている。
言い過ぎたか?とも思ったが
溜めすぎるのも良くない。
発散することも大切だろう。
「はぁ…そんで、
工藤はなんやったんや?αか?」
どうしようか。
正直にΩだと伝えても
服部は大丈夫だとは思う。
そんな薄情なやつだとは
思っていないからな。
けれど、怖い。
もし、俺がΩだと知って俺の事を
見損なったりしたら、
俺は耐えられるだろうか?
それを防ぐなら、αだと嘘をつけばいい。
でも、本当にいいのか?
もしヒートが服部の前できたら
すぐにバレる。
そしたら最低な奴だと思われる。
そんなマイナスな思考をグルグルと
フル回転させていたら、救世主が現れた。
「工藤は正真正銘のβだと思うぜ。
最近事件続きで寝れてなさそうだったし、
直近で体調崩しちゃったんじゃね?」
黒羽がいい具合に
誤魔化してくれたおかげで、
俺は質問に答えなくて済んだ。
感謝の意を簡単にも伝えようと
黒羽の方へ目をやると、目が合った。
その瞬間、彼は俺に対してウインクをし、
『これは貸しだからな!』
と訴えかけられているような気がした。
『わーってるよ。サンキュな』
と目で会話をした。
正直、少しだけキュンときてしまったことは秘密にしておこう。
昼
快side
「くーどーうー…」
「……………」
工藤は腹が減ってないから
という理由で飯を食わずに
本を読んでいる。
行儀の悪いやつめ。
そんなにこいつの母さん達は
行儀の悪いやつだったのか?
でも確か、工藤の母親は有名な女優で
父親はミステリー作家だっけか。
もし似るのなら母親の方だが、
役者なだけあって厳しさもありそうだ。
「…工藤、今、俺の好感度どんな感じ?」
「…………」
「少しは上がった?それともそのまま?」
「…………」
「工藤知ってる?
工藤は気付いてないかもだけどさー…」
「…………」
「俺と目が合う度に
顔が赤くなってるんだよね〜♡」
「…………」
「もちろん今もね?
本当は聞こえてるんでしょ?新ちゃん♡」
「…いつから気が付いてた?」
やっぱり聞こえてる。
前までは左耳から入って
右耳に出ていったけど、
今回は留めてくれているらしい。
「最初から♡」
「嘘つくんじゃねぇよ。直感だろ」
「だって工藤、
本を読む手と目の動きがなかったもん」
「…その洞察力、どっから来てんだよ?」
「え?そりゃ探偵と同じようなもんだよ。
気づいたら身に付いてたって
いうか───」
「前々から思っていたが、
お前、とあるやつに似てるんだよ」
「と、とあるやつ…?」
ポーカーフェイスが崩れかけている。
何とか持ち直さなければ。
「オメーはマジックと
ポーカーフェイスが得意で、
人を欺くのも得意だ」
嫌な予感がする。
話題を変える前に彼は言い切った。
「オメー、やっぱキッドだろ。
怪盗キッド」
イタズラ交じりに、俺はこう答えた。
「…だったら、どうする?」
「ッ!?」
新side
「…だったら、どうする?」
「ッ!?」
まさか、
本当にこいつが怪盗キッドだったのか?
さっきとは大きく雰囲気も違い、
威圧的になった。
「…そしたら、俺、は…」
「…なーんてね、冗談!
そもそも俺が怪盗キッドだったら
探偵である工藤新一と
お近ずきになりたいとか
思わないっつーの!」
こいつは、軽い気持ちで 冗談 と
称した。
俺が推理するに、
こいつは正真正銘の”怪盗キッド”だ。
それをポーカーフェイスで
誤魔化しているようにしか見えない。
「…もしかして工藤、本気で疑ってる?」
「まぁな。
探偵たるもの捕まえておきたいしな。
…それに、」
「? それに?」
「…いや、なんでもねぇ」
「ふーん…」
黒羽、オメーの質問に答えてやろうか。
『好感度どんな感じ?』だったな。
俺は、オメーに会ってから、いや。
一目見た時から、堕ちてたんだよ。
家
俺はベッドへ身体を投げ込み、考える。
そうだ。俺はあいつの事が好きなんだ。
だから、好感度なんて最初からMAXだ。
でも、あいつは怪盗キッド。
怪盗と探偵。
犯罪者と付き合ってしまって
いいのだろうか?
正直、キッドに好感を持ったことはない。
けれど、黒羽にはある。
黒羽と付き合うにはキッドも
好きにならないといけねぇのか?
考えれば考えるほど、頭がおかしくなる。
こんな難問、いつぶりだろうか。
外を眺める。
夕日が綺麗だ。
快side
家
「親父…、親父なら、
こんな時どうしてた…?」
俺は絵画となってしまっている
親父に問いかける。
母さんも親父も似たような職業だったから
心配することはなかったのだろう。
しかし、俺と工藤の場合はどうだろうか?
怪盗と探偵。
簡単に言ってしまえば悪と善だ。
お互い対(ツイ)になっている職業だから、
世間の目は痛くなるだろう。
それで工藤の信頼度が下がるのは嫌だ。
俺のせいで工藤に迷惑がかかるのは
嫌なんだ。
外を見ると雲行きが怪しい。
なぁ、工藤。
明日は晴れるかな?
新side
翌日
気付いたら朝となっていた。
やはり、寝る直前に悩み事をするのは
やめた方がいい。
質のいい睡眠が出来ないからな。
「工藤おはよ」
「…黒羽か。おはよう」
今日はあいにくの天気で
雨音が外でも響いている。
台風でも来るのではないか。
「…工藤、ちょっと来て」
そう言って、彼は俺の腕を掴み
物置へと誘導された。
「ッはぁ…はぁ…、何のつもりだよ」
「ここなら、ちょうどいいかなって」
「はぁ?ちょうどいいって何が───」
ドクン、と大きく心臓のなる音がした。
気付いたら終わりだ。
鼓動は小さくなるが、
止まることなく鳴っている。
あぁ、わかった。
「タイミングばっちり、だな…/」
ヒートだ。
なぜあいつが俺のヒートを
ここまで推測できるかはわからない。
けれど、雨の中倒れるよりかはましだ。
「ねぇ、工藤…/」
「んだッ…よ…//♡」
今話しかけてほしくはない。
今は、求めてないんだ。
だから、離れてくれ。
そして、被害を最小限に───
「俺と、番になってくれませんか?//」
「今言う言葉じゃッ…ねぇ”だろ…ッ///♡」
「じゃないと工藤、
一生苦しいままだよ?」
黒羽の言葉にいちいち身体が反応する。
「別に、もう無理に手に入れようとは
思ってないよ。でも、諦める気もない。
ちゃんと堕として、ちゃんと手に入れる」
こいつは、ちゃんと考えているんだ。
なのに、俺はどうだ?
『犯罪者と付き合っていいのか?』
『キッドも好きにならなきゃいけない?』
なんだ、生ぬるすぎる。
「…工藤?」
黒羽が近付けてきた手を掴む。
黒羽はいきなりのことに驚くが、
すぐにポーカーフェイスが直る。
そして俺は、伝える。
「俺”は…ッ怪盗キッドのことを
好きになッ”たことはねぇ…//♡
ッでも、…黒羽快斗の”ことはッ、
好きなんだ…ッ!///
一目惚れってやつを”ッ…
しちまったんだよ…//♡」
ヒートのせいで上手く話せないが、
できる限りで伝える。
「…工藤、それ、嘘じゃないよね?/」
彼の感情が変わったのだろう。
涙が流れている。
「ポーカーフェイス…、♡
崩れてるぜ…ッ?///♡」
そのことに気付いたのか、
彼は直そうとするも直さない。
いや、直せない。
そこで俺は言ってやった。
「ヘタクソな笑顔だな…ッ!////♡」
その瞬間、彼の中で何かが切れたのか、
動きが不自然になった。
「頑張って我慢してやってたのによぉ…///」
「くろッ…ば…ぁ?////♡♡♡」
「これで番にならねぇとか
言っても知らねぇからな?///」
そう言って俺らは、
講義なんて忘れて2人の時間を堪能した。
快side
事後
俺は今、後悔と喜びの感情がある。
やってしまった。
というのと、ついにできた。
そんな感情だ。
隣で名探偵が溶けている。
こんなところを工藤のファンに
見せたらどうなるか。
俺は写真を撮った。
でもこれは、俺だけの宝だ。
「ん”んっ…黒羽…?」
「工藤、起きたのか」
「…腰”と喉がい”てぇんだ”けど」
「起きて二言目がそれなんだ…」
さすがは名探偵と言ったところか。
寝起きでも頭は働いているらしい。
「うわ”っ…な”んだよこの痕”…」
工藤は”嫌”という感情を出しているが、
顔は綻(ホコロ)んでいる。
「素直じゃねーな!」
「はぁ?」
お互いが落ち着いたら、たくさん話した。
もちろん、俺の正体も。
工藤は少し、憂鬱な表情をした。
「俺…怪盗キッドに
好感を抱いたことはねぇんだ。
でも、オメーにはある。
これが、どうにも解けねぇ謎なんだよ…」
工藤は、思い悩んでいた。
俺を好いてくれている。
でも、怪盗キッドはそんなことはない。
同一人物なのに、
どうすれば…ってことか。
それならと俺は、
工藤に予告状を言い渡した。
「そんじゃあ、怪盗キッドの方も
オメーに惚れさせてやるよ!」
そう言われた彼は、笑顔に戻り、
俺に告げた。
「やってみろよ。
どんなトリックも暴いてやるからよ!」
そんな彼はかっこよく、可愛かった。
気付いたら雨は上がっていた。
「工藤、外を見てみろよ」
彼は外を見て驚いていた。
「工藤、虹が綺麗だな」
「あぁ、
このまま時間が止まればいいのにな」
新side
翌日
「お前さんら、講義サボりおって…
何してたんや?」
「いやぁ?べっつに〜?」
「なんやそれ…気ッ色悪いのぉ…」
「酷くね!?!?」
俺と黒羽は無事に番となった。
そのため、俺が出すフェロモンで
他のやつらが襲いかかってくる
心配はなくなった。
でも、昨日の行為を服部に言うのは
少し気まずい為、
黙っていようという話になった。
夜
俺は、予告状通りに
ビルの屋上へと向かった。
「…どういうつもりなんだ?」
「来ましたか、愛しの名探偵♡」
こいつが黒羽快斗だと知っていても
好くことができない。
やはり、番になるのはやめた方が
良かったのではないか。
そんなことを思う。
そして彼は、
ビルからの景色を眺めながら呟く。
「やはり、屋上は肌寒いですね」
そう言い放った彼は、
どことなく寂しさを醸(カモ)し出していた。
そんな彼を、可愛く思ってしまった。
不覚だ。
犯罪者にこんな感情を抱いてしまった。
しかしもう、今更だ。
俺は怪盗キッドを後ろから抱きしめた。
「め、名探偵…?」
「肌寒くなんてねぇよ。暖かいぜ」
これからも俺は、
こいつの温もりを感じたい。
「…私も、そう思っていましたよ」
そう言い放った彼は、やはり
ポーカーフェイスが崩れていた。
いつもよりも、酷く。
コメント
8件
えっとなんでこれが41良いねなのかが分からない
やだあなた上手すぎねちょっとレベル高すぎてるたさんのノベルに恥ずかしさを覚えてるよ ていうか展開の切り替わりとか諸々が上手すぎて読みやすかったし頭にすんなり入ってきますたほんと天才ね
ちゃんとした物語で初のノベルです。 小ネタを少し入れているので ぜひ見つけてみてください