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ある日、普通に編集しているとインターホンがなった。
「いまいいとこなのに…」
丁度ニキニキたちがおもろいところを編集していたため、少し不貞腐れつつ玄関を見に行く。
「はーい」
ぶっきらぼうに返事をしながら扉を開けると、そこにはキャメさんがたっていた。
「…いま、いい?」
「ダメでも拒否権ないっしょ?笑」
キャメさんを部屋に上げて話を聞いてみると、活動を辞めようか迷っているらしい。
「……なに?またドッキリ?笑」
なんて笑ってみる。
でも彼の顔を見て、本当なのだと悟った。
少しの沈黙が流れ、ようやく彼は口を開いた。
「…両親に、ちゃんと働いた方がいいって言われて。」
「俺ももう三十路だし、活動で食ってくのも限界が近づいてるって言われちゃってさ笑」
「ぐうの音も出なかったよ。」
ぶきっちょな笑顔と苦しそうな顔が混濁していた。
そんな彼を、見ていられなかった。
いつも通りの彼でいて欲しい。
いつも通り、おれのことを貶して豪快に笑って欲しい。
いつも通り、おれと一緒にいて欲しい。
けど、それはおれのワガママだ。
辞めるも続けるもキャメさんの自由…
「…キャメさんがやりたいようにやろうよ。」
「親がどうとかじゃなくて、キャメさんがどうしたいかで決めようよ。」
『おれは一緒に居たいよ。』
そんな呪いみたいな言葉は飲み込んで、きっと今、キャメさんが一番欲しいであろう言葉をかけた。
「…ごめん、ありがとう」
「…ごめんね、ほんとに。」
でも、彼はただ下を向いて謝るだけだった。
「なんで謝んの?」
そっと彼の顔を覗き込んでみるも、よく見えなかった。
「…りぃちょくんなら、今俺が欲しい言葉をくれると思ったんだ。」
「案の定、君は俺が今一番欲しい言葉をくれた。」
『俺の自由にすればいい』
『 やりたいようにやろう。』
「きっと俺はそう言って欲しかったんだと思う。」
「でも、それはきっとりぃちょくんの言葉じゃなくて……えっと…なんていえばいいのかな」
キャメさんは困ったように頬をかいている。
「……俺は今、”りぃちょくんの言葉”を求めてる。」
「ねえ、”りぃちょくんは”どう思う?」
彼の、綺麗で真っ直ぐな瞳に見つめられる。
彼は今、”おれの言葉”を求めている。
おれの、呪いみたいな言葉を。
「おれ、は……………」
「きゃめさんと、一緒に活動したい」
上手く喉が開かない。
自分がちゃんと喋れているかも分からない。
「キャメさんと、ずっと一緒に居たい。」
何故か涙が溢れて止まらない。
どうして泣いているのかなんて分からない。
「辞めないで欲しい…」
息を吸うと、鼻水がズルズルと音を立てている。
視界は涙で滲んでいるし、目は擦りすぎて熱くになっている。
あぁもう最悪。
惨めったらしく引き止めて、女々しく泣き散らかして。
「でも、決めるのはキャメさんだから、」
自分の涙に言い訳をするようにそういった 。
「…決心着いた。ありがとう。」
キャメさんはおれの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「明日…いや、今日実家帰る。」
「…多分、俺の中でどうするかは決まってたんだと思う。」
「でも、それを実行する勇気がなかったんだ。」
「だから、背中を押してくれて、 ありがとう。」
「…うん。」
キャメさんは笑顔で、玄関の扉を閉めた。
おれの呪いが、キャメさんの勇気に変わって良かった。
…キャメさんが、女研を、この場所を選んでくれて、本当に良かった。
「…さ、編集しよ。」
おれは彼の声が流れるヘッドホンを付けて、和気藹々とした動画を編集する。
どうかこの時間が、永遠に続きますように。