青春×3
心地の良い風が頬を撫でる。
先生には悪いが、つまらない授業をいつものように聞き流していた。
特に思うこともなく晴天が広がる窓の外を横目で見ていた。一番窓側の前から3番目の席に座る俺、山田奏は普通に夢を見ていたいし彼女も欲しいしこれぞ青春!!っていうくらいに青春らしい青春を求めるような普通の中学1年生だった。
清々しい青空の上、広がる宇宙を想像しながら6校時の終わりを告げるチャイムを待っていた。
そしておもむろに自分の学校指定の鞄の中を見ると愛読書である中原中也の詩集が入っていた。
俺はむしょうに読みたくなる心を落ち着かせ、ノートにらくがきをかく。だが、それでも読みたい気持ちはおさまらなかった。そして、思いきって手に取り、ページをめくる。
そこには、美しい言葉の数々。
ただただ、その世界に夢中になっていた。
先生からの評価は下がるだろうな。と思っていると、運良くバレずに授業の終わりを告げるチャイムがなった。
『ラッキー』
俺は心の中でそう思っていた。
6校時が終わると、掃除が始まる。
すると、皆口を揃えて「嫌だー。」「面倒臭い。」などと愚痴をこぼす。
俺はそんな掃除があまり苦ではなかった。掃除をすれば幾らか気が晴れるような気分になれるからだ。
掃除が終わり、クラスメイトたちが部活や帰宅していく。
しだいに教室の中には俺一人になった。
静寂に包まれた教室は、なんだか俺のために貸切になった教室のように思えて、なんだか可笑しくて笑いがこぼれた。
準備を終え、教室の鍵を閉めると隣から聞き馴染みのある声がした。
「よっ!!」
「ルイかよ」
横には、親友の田中ルイが笑みを浮かべていた。
「なんだよ。隣のクラスの貴華さんだと思ったのか?」
「ちげーよ!!ってかお前声全然違うだろ!!」
いきなり1年の中の美少女の名を呼ばれて少し焦った。
「神彦は弓道で忙しいから俺たち2人でスタベ行こうぜ」
学校の近くにスタベーースターベック太郎というカフェができたので行ってみようという話をよく、佐藤神彦、田中ルイ、山田奏の3人でしていた。
だが今回は神彦が来られなくなったので神彦に画像送りつけて自慢する事になったらしい。
「それじゃー!!!!出発だー!!」
元気よく廊下を走るルイの姿を追って、俺もまた、走っていた。
その時、少しだけ、俺なりの青春が見つかった気がした。
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