テラーノベル
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取引まで残り3日の夜・・・>>
<ぺいんとside>
消灯時間が過ぎて、暗闇が広がる。
ぽかぽかのお風呂から上がった後の下水は、本当に気が滅入る。
行き止まりから戻ってきた俺は、下水から出て地面に転がった。
手元にあった本を適当に広げれば、今頭を悩ませている文が飛び込んでくる。
pn「情報か~、伝説の剣は売っちまったしな~」
小さく呟いた声に、監視カメラの動作音が微かに鳴った。
sn「……ぺいんとさんもっと寄って、映るから、! 」
仕切りの内側から声が聞こえて、すぐに本を仕舞う。
pn「あ、ごめんごめんw」
看守の巡回の音が遠のく。
「てか取引場所がまだ分かってないよね?生け簀ってどこにあんの?」
この暗闇の中で体を寄せ、作戦を練るなんてのも久しぶりで懐かしい。
流石に四度目なだけあって、はしゃいだりしないが。
ほんの数分前(にしにがみを高らかに天に向けて喜んだ)のは、凛々しい俺の顔に免じてノーカンにしておく。
結果が残酷だったし。
「まぁ~、適当に嘘で固めてm「ストップ。」
クロノアさんの制止の声が、妙に遠い。
pn「どうしました?」
kr「ちょっとこっち来て……」
下水を通って9番の牢屋に迷いなく進む。
集まってようやくクロノアさんが指した場所に、明らかな異物が付いていた。
sn「これって……」
俺たちは弾かれたように自分の牢へ戻り、植木鉢をひっくり返す勢いで探る。
机の下を覗いて、通気口の隙間へ指を突っ込み、薄いベッドを裏返し……。
──あった。違和感の無いよう、巧妙にペンキで塗られたソレを手に取る。
盗聴機だ。
<クロノアside>
kr「……どうする?」
手元にチクチクと刺さる感触に、粉々の盗聴機を投げ捨てた。
聞かれていた。最初から全部。
『伝説の剣は売っちまったからな~』
ずっと頭の隅にポツンとあった、何となくの直感。
今の脱獄成功率は0%に近い。
取引相手が道化師なら、今までと違って太刀打ちも脱獄にも逃げられない。
バレた=死。
この計算式を丸に出来るような力がある人物に成り代わる気だ。
pn「でも、まだ道化師だと決まった訳じゃ……」
sn「いや、黒でしょ。普通の清掃員なら盗聴機仕掛けることないし、そもそも取引の時点で……」
今まで通りの脱獄の進行度に合わせたトラップじゃない、死へのカウントが真後ろに立つ。
kr「偽装工作。」
きっと上手くいかないけど、自信があるように見据えた。
「俺に任せてくれない?」
何度も腕をさすっていた手を止めた。
◇
牢屋の周りが明るく光って、朝になったことを知らせる。
いつの間にか寝ていたらしい。
耳をすませば、誰かが身じろぎした音が小さく聞こえる。
ぼんやりしたまま、手を上にぐぐっと伸ばしてあくびを一つ落とす。
ショボショボした目を閉じて、 手探りの感覚で進んでいく。
そして、牢のそとを眺めれば、予想どおりの足音が近付いてきた。
<しにがみside>
僕の大事なアホ毛がバビョンッと、跳ねた気がした。
pn「どこをするんですか?やっぱり倉庫掃除ですか?」
ピシャーンと雷が鳴った、気がした。
(ぇ、それ、今言っていいの??)
sty「うん?リアム看守長に何か言われた?」
ほら~!!ポンコツでも流石に!!
疑う……訝しむような仕草で、看守はバインダーに目を通す。
#ぺいんと愛され
瑠空
62
18,987
113
1,563
pn「いや、あそこ前に行ったけど、本当に汚くて、ペンキとか零れてたし!」
sty「えぇ、……でも今日の掃除場所は~、ポーションだよ?」
それに対して、「天職だ!」と喜ぶ8番に、危ない橋を軽々と渡るなと言いたくなる。
しかし、流石は『言い訳の天才』と評価しただけある。
(狙いがハマるか五分五分だけど……。)
これで後は……とバインダーに目を向けた。
……いつ書き換えるか。
そればかりが頭を覆った。
<スティーブside>
作業場所に向かう途中、いつもの賑やかさに声が足りないなと、ふと思った。
少し気にかけるように振り返りつつ、歩くスピードを緩める。
タイミング良く目が合った8番が、ちょうど良いやという感じに手を挙げた。
pn「あ、看守~。俺運動したいです!」
sty「んぇ、今日?予定には……書いてないけど?」
看守長の細かい文字から目を離して、困ったと頭をかく。
(勝手なことをして、後で怒られるのはヤダなぁ~)
pn「俺ずっと運動場行けてないんですけど!」
残念ですと顔で表現したような膨れっ面に、最近の8番の様子を思い出す。
(……運動不足になりそうだもんなぁ)
sty「じゃあ可哀想だし……今日だけ特別ってことで!」
頼られて調子に乗ったと自覚したところで、8番の目がキラキラした喜びに溢れた。
pn「やったぁ!仕事頑張ります!!」
リアム看守長の苦い顔と、報告書の山を思い浮かべる。
sty「現金だなぁ~……9番も行く?」
そういえばと、真後ろにいる9番に問えば、 「いや、。」と笑って返された。
「素直じゃないな~!まぁ、怒られた時に人数は少ない方がいいか!」
kr「怒られる前提なんですね?」
……………………
6番:畜産
8番:ポーション
9番:農場
──直近の生産数に基づき、本日の刑務作業を決定する。
<クロノアside>
スティーブ看守を通してぺいんとにアイコンタクトする。
相変わらずよく話す看守の後ろで、指で丸を作ってぺいんとがニッと笑った。
昨夜の会議は慎重に、確実に進んだ。
仕切りの奥で広げた本には、少々乱雑だけど的確な地図が描かれている。
あの先輩囚人に地面を通して会話し、書き起こしたらしい。
pn「それで、ジャリジャリいってたのか。砂食ってんのかと思った。」
sn「僕ってそんなヤバい奴?」
話を折るように、トンッと紙に人差し指を置く。
kr「……まず、明日。どうにかしてアレを取ってきてほしい 」
sn「看守の目を潜り抜けるか、交渉するか……」
kr「他のは多分あのバインダーで記録されてるから、狙いは運動場。」
ススッと滑らして、そして_と囁き声に切り替える。
kr「次の日の刑務作業場所を、何とか誤魔化して倉庫掃除とかに変えたい。この日がスティーブ看守だったら、手はある。」
pn「リアム看守なら……俺が出来る限り言いくるめるよ。」
sn「言い訳の天才だから、ぺいんとさんは」
kr「当日、生け簀はきっとアイツのことだから、俺たちが来れるよう仕向けると思う。」
ふと、しにがみ君が小さく手を挙げる。
sn「僕……心当たりがあるかも」
kr「じゃあ……偽装した剣はしにがみ君に託そう。万が一間違ってても、日数的に無茶できるの強いと思うし。」
pn「偽装工作って具体的にどうする?何かあったっけ?」
思い出すように目を閉じる。
kr「あったよ。俺もさっきアレを見て思い付いた。」
床に投げ出された粉々の機械だった破片に目を配る。
pn「……!分かった。俺がやる。でもボロが出そうなら臨機応変に……」
シーンと静まり返った牢屋に、カツカツと靴音が響く。
そして、またあのペンが走る音を立てる。
俺は思わずにやけてしまいそうだった。
仕切りで見えてない筈だけど、極力音を立てないように仲間を牢屋へ促す。
緊迫した状況の筈だけど、俺の勘が言ってる。
明日はスティーブ看守だ。
<スティーブside>
8番が何とも楽しそうに、木の剣を振り回してるのを眺める。
修学旅行とかに欲しくなるよね~、最後に荷物になるやつ。
予定どおりの表記に、そのままチェックの書き込みをする。
今頃他の囚人の看守にあたってるだろうし、バレないだろ!という算段だ。
sty「よし!そろそろ戻るよ~!」
看守長に見つかる前に、さっさと牢屋に戻って扉を閉める。
sn「スティーブン……スティーブブンブン、ブンブンブン蜂が飛ぶ」
──6番が七番の部屋にいた。
この一言で分かる通り、俺は 思わず頭を抱えた。
「ハイパーキネティックポジションリバーサーを使われました。被害者です。」
pn「ゑ??」
sty「ハイパー、?何、8番のせいなの?wとりあえず出てもらって……」
ガチャッと扉を開けた時だった。
kr「うわぁーーーーー!!!」
慌てて9番の牢を見るのと同時に、監視カメラが物凄い勢いでギュンッとそっちを向く。
sty「どうした!?え??」
kr「虫です!!何かすんごい!!」
9番の語彙力を奪う程の……虫……アレか?
sty「G!??」
探しても見つからないため、清掃の時に重点的にしてもらおうと、手元に意識を向ける。
……あれ?バインダー……ない。
失くしたりしたら、と俺の顔が青ざめたのを感じる。
やべ、どこで落としたんだ?……さっきまで持ってた筈……
(そういえば、9番の叫び声に驚いて駆け寄った時、すっぽぬけた感覚があった気が……多分そうだ!)
そう思うや否や、さっきの位置へ引き返そうと振り返った時だった。
sn「スティーブ看守~、落としましたよ!」
手渡されたバインダーは、紙の枚数も全く変わっていない。
(書いてあるのは今日の予定だけだったし、もう いいのか。)
sty「ありがと~!助かった……。」
<監視カメラ>
施錠終わりに震わせていた体を解放する。
少し大きめの笑い声が漏れて、慌てて口を押さえる。
シン……とした牢屋から耳を澄ます9番を、二人が注視する。
kr「……いいよ。小声で話そう」
笑いが引いて、 待ってましたとばかりに8番が早押しで床をぺちッと叩く。
pn「ハイ…!…何で朝の俺の作戦に乗らなかったんですか?クロノアさん」
近付くマイクを模した手を、9番が軽く押し戻す。
kr「運動場に行くやつ?」
覗き込むように首を傾げる9番に、8番が大きく頷く。
「スティーブ看守が止まった時に見えたんだけど、リアム看守が作業結果を確認しに来るって書いてあったんだよね」
真ん丸にした目が四つ並ぶ。
pn「え?マジ?危機一髪じゃん。」
kr「しにがみ君一人で切り抜けれるか分からなかったし、今回は来なかったけど万が一ね。」
寝転がっていた6番が、グルッと体を8番に這わせてニヤリと笑う。
sn「即興だったけど、何とか上手くいきましたね。」
ギャンブラーの血が騒いだ時のしにがみに、勝てる者はいない……。
kr「しにがみ君がバインダーをそのまま、抜き取った時は本当に焦った」
誤魔化されてくれたけど_と、9番が汗を拭う仕草をする。
sn「クロノアさんの珍しい騒ぎ方を見れて、僕は満足しましたけどね。」
その嬉しそうな横顔に、満場一致の空気が流れる。
pk「「うちの子……コワイ。」」
その日は胸いっぱいの達成感に溢れて眠った。
日数減少6番→14日8番→9日9番→9日
【取引まで残り2日】
ra「ふぅ……明日の作業は……」
コロコロと椅子を軽く転がしながら、背もたれに深く背を預ける。
スティーブが挙動不審に置いていった紙に、ざっと目を通す。
そこで、いつもより癖がない字が目に止まった。
明日の刑務作業は、同じやり方で決めようと思っていたが……。
……………………
本日、第一倉庫内にてペンキの漏れと深刻な劣化を確認。
「丁度いい、コイツら……誰か一人で十分だろ。」
▽
下水道への道は……まさかの行き止まり!
「てか、かなり軽く流してたよね?水だから?水だからか!?」
迫る期限で取引を成立させる為の偽装工作……。
「遂に日数も一桁って、早くない??気のせい?」
「明日こそ平和に進めれると良いけど……あ、これフラグ?」
今こそPKS団の力を見せつけろ!!
次回「未定」
~俺と手の平でshall we dance?~
NV:(自称)“噛ませ犬”のトラゾー
コメント
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うわっ、第13話読み終わった…!もうね、最初から最後までドキドキしっぱなしだったよ🥀 ぺいんとたちが盗聴機見つけたシーン、あの“バレてた”感がすごく怖かった…でもそこから逆に利用しようとする頭の回転、本当に痺れる。クロノアさんが「俺に任せてくれない?」って言ったところ、なんか頼もしすぎて鳥肌立ったよ。 そしてスティーブ看守、完全に騙されてて笑ったw しにがみ君の「ハイパーキネティックポジションリバーサー!」でバインダー抜き取るところ、天才すぎるでしょ…!重い展開の中のこういう軽いノリがたまらないね。 次回予告のフラグ発言も気になるし、ラストのリアム看守の不穏な動き…もう続きが待ちきれないよ!✨